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2009.03.13
CSR報告書における人権情報のグッド・プラクティス 2008年度版
 

CSR報告書における人権情報のグッド・プラクティス 2008年度版

部落解放・人権研究報告書NO.11
A4版 80ページ 2009年1月31日
実費頒価 1,000円


第1章 調査の目的と概要

1.調査の目的

 当研究所では、2005年度版、2006年度版のCSR報告書について、可能な限り多くの報告書を収集し、人権記載の現状把握に努めてきたところである[1]。その中で、一定の項目に関しては、大半の報告書において記載されることが標準的となりつつある。しかしながら、その質的な水準は、企業によってまちまちであり、中には項目としては記載があるものの、取り組み内容が適切に表現されていない例も見うけられた。

 そこで、2008年度は、質的な点を重視し、CSR報告書における人権問題に関する記事のうち、質的に好事例と思われるものを抽出し、紹介することとした。

その目的として、以下の4点が指摘できる。第1に、企業における人権の取り組み(以下、人権CSR)は、人権啓発はもとより、取引先、従業員、商品、地域、NPO・NGOなど多くの分野で様々な取り組みが既に実施されており、その可能性はさらに広がっていることを共有できることである。第2に、自社での様々な人権CSRの取り組みの可能性を検討する際、参照したりヒントとしていけることである。第3に、こうした過程を通じ、日本の企業総体の人権CSR実践が高まり、CSR報告書における人権記載も充実していくことである。第4に、企業だけでなく、企業のステークホルダー(利害関係者)の人権CSRへの関心の高まりの一助となることである。

2.調査の概要

 本調査では、最新の報告書を見ることでより新しい状況を把握することができることから、原則として2008年度版の報告書を分析することとした。ただし2008年9月末時点で2008年度版が発行されていない企業については、2007年度版を用いることとした。

 報告書の収集基準としては、2006年度版の報告書の分析を基に、次の4点を挙げて、質的に充実した人権問題に関する取り組みの記載が期待しうるものを重点的に収集した。収集した企業の報告書数は323社で、巻末に全て記載させていただいた。

  1. 報告書のタイトルを「CSR」としているもの
  2. 2006年度版の報告書において、トップメッセージに人権に関する言及があったもの
  3. 2006年度版の報告書において、調達基準に人権に関する項目が含まれていたもの
  4. 2006年度版の報告書において、人権記載の検討項目の半数以上で記載があったもの

 なお、収集に当たっては、エコほっとライン[2]を通じて収集したほか、大阪同和・人権問題企業連絡会、東京人権啓発企業連絡会のご協力を得て、各連絡会の加盟企業よりCSR報告書の提供を受けた。この経路では入手できなかったものについては、ホームページを通じて、各企業に個別に送付を依頼した。

 これらの報告書を、巻末に記載している「CSR報告書における人権情報記載状況」研究会の各構成員が分担し、特に注目に値する記事をそれぞれ抽出した。これらのデータを、第2章において示した基準にしたがってさらに精査し、グッド・プラクティス一覧を作成した。この一覧を検討し、調査結果の概要において、特徴的な好事例をとくに紹介した。

[1] その結果については、「部落解放・人権研究報告書 No.6 2005年度版 CSR報告書における人権情報」(2007年)、「部落解放・人権研究報告書 No.9 2006年度版 CSR報告書における人権情報」(2008年)を参照。

[2] http://www.ecohotline.com/(2009年1月21日現在、掲載確認)