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2009.03.18

写真でみる戦後60年
―部落解放運動の歩み

コラム I. 部落問題とは?

部落問題とは、日本の封建社会に存在していた身分制度のもとで、「えた」、「ひにん」などの被差別民として位置づけられた人びとに対する差別に起因する社会問題である。この差別は、明治維新以降の政策、とくに1871年の「解放令」によって法制度的には廃止されたが、実際には日本の急速な近代化のもとで再編強化されてきた。というのは、明治政府はすべての国民から協力と献身を引き出すために、一見「開明的」なスローガンをかかげるが、実は、それ以前の封建的な意識やシステムをひきずりながら、近代化へのあゆみを始めたからである。その過程で、北海道の先住民族であるアイヌ民族や沖縄への同化政策、隣国への植民地政策などの抑圧的な政策によって、マイノリティへの差別的なまなざしを強めていった。民法に代表される法律によって「家制度」を確立し社会の基本単位を「家」とすることによって、女性への抑圧も強めていった。このような政策の中で江戸時代の身分制度にもとづく被差別部落に対しても、差別を維持し続けてきた。そのため、部落の人びとは「新平民」、「特殊部落民」などと呼ばれ、結婚や就職、教育や社会生活のさまざまな面で差別されてきたのである。

1945年第2次世界大戦敗戦、アジア・太平洋戦争敗戦を迎え、日本社会は大きく転換した。国際社会が国連を中心に平和と人権を基調に歩み始めるのと共に日本もまた主権在民、戦争放棄、基本的人権尊重を謳った日本国憲法を制定する。しかし、戦後20年間政府として部落差別をなくすための本格的な政策がとられることはなかった。

1965年の内閣同和対策審議会答申では、「いわゆる同和問題とは、日本社会の歴史的発展の過程において形成された身分隋層構造に基づく差別により、日本国民の一部の集団が経済的・社会的・文化的に低位の状態におかれ、現代社会においても、なおいちじるしく基本的人権を侵害され、とくに、近代社会の原理として何人にも保障されている市民的権利と自由を完全に保障されていないという、もっとも深刻にして重大な社会問題である。」と規定されている。

1996年の地域改善対策協議会意見具申でも「ひるがえって、我が国固有の人権問題である同和問題は、憲法が保障する基本的人権の侵害に係る深刻かつ重大な問題である。戦後50年、本格的な対策が始まってからも四半世紀余、同和問題は多くの人々の努力によって、解決へむけて進んでいるものの・残念ながら依率として我が国における重要な課題と言わざるを得ない。」「また、国際社会における我が国の果たすべき役割からすれば、まず足元とも言うべき国内において、同和問題など様々な人権問題を一日も早く解決するよう努力することは、国際的な責務である。」と述べている。

経済的な不況の影響もあって部落差別は、なお日本社会騒根深く続いており、その総合的な解決が求められている基本的人権に関わる重大な社会問題である。

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