部落解放・人権研究所(当初は、大阪部落解放研究所)は、1968年8月14日に大阪で創立されました。以来、部落問題をはじめとする人権問題の研究活動に積極的に取り組み、それらの成果を研究紀要『部落解放研究』などに反映させてきました。また、優れた研究成果を単行本にして世に問い、『奥田家文書』全15巻、『河内国更池村文書』全3巻、最近では『悲田院長吏文書』などの史料集を刊行してまいりました。啓発情報誌として月刊誌『ヒューマンライツ』を発行し、部落解放・人権夏期講座、人権啓発研究集会、部落解放・人権大学講座などの啓発事業・人材育成事業にも取り組んできました。図書・資料室には、 10万点を超える関係図書・史料が収蔵され、市民の方々に利用されています。
2008年は、創立40周年を迎え、記念事業を展開してまいりました。7月31日・8月1日の2日間にわたり、大阪国際交流センターで「部落問題の今をめぐる若手研究者の国際ワークショップ」を行い、8月2日には記念シンポジウム・記念式典を催したところです。
その記念事業の一環として『部落史研究からの発信』全3巻を発行することになりました。企画の趣旨は、<1>部落史だけではなく、多様な被差別民の歴史における重要なテーマを取り上げ、それぞれについて研究史の整理を行い、現時点での成果と今後の課題を提示したい、<2>その作業を通じて他分野の歴史研究になんらかの発信をしたい、<3>これらの研究分野に関心をもつ人々が研究を行っていくうえでの手掛かりを提供したい、というものであります。そこで、それぞれの研究分野において第一線で活躍中の気鋭の研究者の協力を得て、前近代編・近代編・現代編の3巻本とすることにしました。幸い多くの方々の賛同を得て、刊行することができました。
ご執筆いただいた方々に改めて感謝申し上げますとともに、本書が多くの方々に読まれて所期の目的が達せられ、そのことを通じて差別からの解放に資することを心から念願するものであります。
なお最後になりましたが、40周年を記念する本出版企画にあたり、事業の趣旨にご賛同いただき浄財のご寄付を通じて経済的側面からご支援いただいた浄土宗、曹洞宗、立正佼成会、真言宗智山派、天理教啓発委員会、高野山真言宗、世界救世教いづのめ教団、浄土真宗本願寺派、真宗大谷派、日本基督教団、および高野山宿坊組合をはじめとする多くの団体および個人の方々に対し、この場をお借りして厚く御礼申し上げます。