【内容の紹介】(編集後記より)
本号の特集は、第六研究部門「部落差別の調査研究」の各研究会等の成果報告である。
第六研究部門による特集は、209号(2018年11月)に続き、各論では部落差別解消推進法の具体化に向けた可能性と課題について検討している。
北口論文では、この6月に結果が公表された「法務省実態調査報告書」の内容について、批判的に検討している。
内田・妻木・齋藤論文では、部落解放同盟各都府県連等を対象としてこの間実施してきた、差別事件聞き取り調査の概要をまとめている。
松村論文では、2019年9~12月にモニタリング団体を対象にして実施したアンケート調査の結果について分析している。
川口論文では、生活困窮者自立支援法や地域共生社会づくりといった施策に、隣保館をどのように位置づけることができるのかについて検討してきた「社会保障制度研究会」の成果についてまとめている。
各論の内容を参照にして、部落差別解消推進法の具体化に向けた取り組みをさらに推進していく必要がある。
個別論文のうち、岡本論文は、部落解放・人権研究所創立50周年を記念して、2018年に創設した「部落解放・人権研究奨励賞」の初受賞論文である。筆者自身が取り組んできた地域における実践の意義や課題について整理し、分析した意欲作である。
その他に、「朝鮮衡平社運動史研究会」関連の論文を含む3本の論文を掲載している。
目次
【特集 部落差別解消推進法の具体化に向けた課題と可能性】
・法務省実態調査報告書の不十分点と結果から見えてきた課題
―差別事例調査とインターネット調査結果を中心に―北口末広
・部落差別事象の現状把握と対応をめぐる諸課題 内田龍史・妻木進吾・齋藤直子
・「ネット上の差別書き込みのモニタリング削除依頼の実施状況についての
アンケート調査結果」を差別解消への政策につなげる 松村元樹
・差別解消の視点をもった地域共生社会実現に向けた隣保館の活用 川口寿弘
【論文】
・衡平社社則第四条をめぐって 渡辺俊雄
・中世におけるユダヤ人・「ジプシー」・河原者をめぐる「特権」言説 竹沢泰子
・第一次部落解放教育計画において提示された「反差別の論理」の必然性
―日本教職員組合教育制度検討委員会報告批判という文脈に着目して―板山勝樹
・コミュニティ・オーガナイジングによる社会変革の共創
―高槻富田地区子どもの居場所づくりの取り組み―岡本工介
【資料解説】
・「全国部落調査・復刻版」出版差し止め裁判に対する内田「意見書」 内田龍史
【資料】
・「全国部落調査・復刻版」出版差し止め裁判意見書