本書で紹介しきれていない差別事件もまだ多くあり、ここでは諸資料の中からおもなものだけ紹介していく。
福岡県では、部落解放同盟福岡県連の調べによると、差別落書き、差別発言、結婚差別、身元調べなどが報告されているほかに、インターネット掲示板上での差別書き込みについて、県内の特定地域を名指しして差別書き込みが行われたり、地域別の掲示板上でも差別意識を助長する書き込みが行われている。
熊本県では、2000年から2002年の間に21件の事件が報告されている。内訳は、学校現場での差別発言6件、地域社会では差別発言10件、差別落書き3件、差別投書・ビラ2件である。
また長崎県でも、学校現場における差別事件が報告されている。
大阪では、大阪府人権協会の集約になるが、2002年1月1日から同年12月31日の間に263件の差別事件が報告・確認されている。そのうち部落差別に関わっては174件であり、内訳は表1のとおりとなる。大阪ではさらに、事件の特徴についても触れており、要約すると<1>連続した事件が多くあった、<2>行政にそこが部落かどうかの聞き合わせが多くあった、<3>インターネット上の差別事件については、匿名性を利用したホームページの掲示板への悪質な書き込みが行われており、内容的には、実際の部落の地名が書かれていたり、被差別部落に対する偏見、さらには特定の国民に対する誹謗中傷が書かれていた、ということである。
さらに、事件内容の傾向としては、2001年と大きく変わりはないものの、「差別語や差別表現」を多用したり、「死ね」とか「殺したい」など人の命を否定する言葉の繰り返しなど暴力的な内容が多い、と指摘している。
表1 (財団法人大阪府人権協会調べ)
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落書き |
発言 |
電話 |
投書 |
貼り紙 |
インター
ネット |
その他 |
計 |
部落差別 |
103 |
15 |
12 |
27 |
7 |
10 |
- |
174 |
※確認体制
- 大阪府人権室、大阪府教育委員会、大阪市市民局人権啓発課、大阪市教育委員会、 (財)大阪府人権協会で確認したものです。
※集計方法
- 同一人によるなど連続した事件も1件づつ数えました。
- 部落差別と他の差別が複合して起こった事件の場合、それぞれ数え、集計している。
- 「落書き」の中には日誌、本のしおり等にかかれたものを含んでいる。
「投書」は、特定の個人・団体あてに郵送、投げ込まれたもの、「張り紙」は不特定の人に見られる可能性があるもの、というように分類した。…Cは種類ごとの延べ件数であり、差別が複合して起こっている場合は、それぞれ数えなおしています
…B差別事件のうち、「落書」の中には日誌等に書かれたものも含めました。「投書」は特定の個人・団体宛に郵送・投げ込まれたもの、「貼り紙・ビラ」は不特定の人に見られる可能性があるもの。「記述」は出版物等公共性の高いものを分類しました
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