Home部落問題入門最近の差別事件2002年おわりに
 
 約33年間続いた「特別措置法」が失効して1年半余りが経過した。

 本書でこれまでに紹介してきたように、部落差別の実態は依然として厳しいものがあり、いくつかの事件の確認・糾弾会等からは、差別を受けた者の人権侵害に対する実効ある救済措置が焦眉の急として求められている。さらにまた、差別した加害者自身に対しても単に部落差別への理解を求めるだけでなく、人権の視点からの加害者自身に対する何らかの取り組みが必要であるという方向性が確認・糾弾会の中から見えてきており、今日の部落解放運動は具体的な実践を通じてまたひとつ進化してきている。

 また、人権侵害について、大阪府人権協会では2002年度より大阪府の補助事業として、「人権相談推進事業」がスタートしている。この事業は、<1>専門相談員による「人権相談事業」、<2>大阪弁護士会の協力のもとに人権に関する法律相談を行う「相談業務強化活動」、<3>府・および市町村等で取り組まれている相談事例の集約と分析を行う「人権相談事例集約・分析事業」、の3つからなっている。さらに、大阪府内の隣保館(人権文化センター)でも2002年度から「総合生活相談事業」が実施されており、6800件ほどの相談が集約されている。具体的な人権侵害・差別の実態を把握していくことはこれからの部落解放運動、これからの人権行政のために必要不可欠な重要な課題であるといえる。そのためには、相談(事業)をさまざまな取り組み・施策の柱として展開していく必要がある。あわせて「人権相談機関ネットワーク」のような、より多くの機関が緊密に連携しあった仕組みづくりも重要である。

 これまでに紹介してきた差別事件の実態、人権侵害の実態に学び、「差別を許さない社会」づくりを始めなければならないのである。