■結婚差別事件
2000年版では「大阪府警部補・個人情報不正入手身元調査事件」として紹介された「大阪府警警部補の戸籍謄本不正入手による結婚差別事件」の経過についてもう少し詳しく説明すると、1999年、大阪市内で看護師として働いていたA子さんは同じ病院の医師として勤めている男性と結婚を約束する。それぞれの親に会うが男性の親から釣書を要求され、その後男性の親はA子さんの釣書の内容について興信所に身元調査を依頼する。依頼された興信所は知り合いの金融業者を通じて大阪府警の警部補からA子さんの親族でもあった男性2人の住民票ならびに戸籍謄本を横流ししてもらい「同和地区の関係者」という差別的調査・報告書を依頼者に渡したのである。
警部補はこの住民票ならびに戸籍謄本の入手にあたり、捜査照会書を偽造して不正入手しており、逮捕、懲戒免職されたが、事件の12年前からこうした便宜を図っていたという。
ところでA子さんは部落出身者ではなく、親族もまた部落出身者ではない。親族は大阪市内の同和地区の「近く」に住んでいただけなのである。また、A子さんは結婚の条件として「大卒」という学歴を要求され、そのため看護師を辞め、努力して大学に合格している。
この事件では、まず市民の権利を守るべき警察官(公権力)による人権侵害があり、結婚にかかわっての釣書の交換という出自による差別につながる慣習がある。さらに学歴差別があり、被差別部落出身者でない人が、親族の住んでいるところが同和地区に「近い」というだけで差別されるという部落差別の厳しい現実があることが明らかになった。
■教育現場における差別事件
教育現場における差別事件では、内容としては他の人を見下す場合の「差別呼称」発言や知識として学んだ「差別呼称」の落書きなどが多くみられた。
とくに長野、高知では昨年度版に続いて、生徒による差別事件が毎年報告されている。また、京都大学での連続した差別落書き事件はここ3年間つづいているだけではなく、一部の内容については同じく京都市内の何カ所かで発見された差別落書きと同一犯と思われるものもある。
「大阪歯科大学教授選考に関わる差別文書事件」は同大学内の教授選考に関わって部落差別、職業差別にからめた誹謗・中傷ファックスや手紙がばらまかれたもので、ファックス所有者のウソの証言により犯人が特定されず、真相究明は振り出しに戻っている。大学の非民主的な体質と部落問題・人権問題の取り組みの不十分さを窺うことができる。
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