■なお生み出されつづける学歴格差
(1)前ページでみた学歴格差の状態は、世代によってどのように変化しているのでしょうか。図8-7で93年調査と90年国勢調査による年齢階層別の15歳以上人口の学歴構成を比較しています。
(2)図8-7によれば、全体の学歴水準の上昇にともなって、部落の学歴水準も上昇しています。とりわけ戦後世代では、いわゆる「教育爆発」と呼ばれる一貫した中等教育・高等教育機会の拡大によって、部落内外にかかわらず学歴水準は高まっています。
(3)部落の学歴水準の上昇は、30〜50歳代の年齢層にかけて急激に進行したことがわかります。これは、全体の進学機会の拡大が進学水準の低かった集団ではより敏感にあらわれるためで、必ずしも部落に特有の何らかの変化があったことを意味していません。
(4)その証拠に、30歳代以下の層で教育機会の拡大に歯止めがかかった後、部落での学歴水準の上昇も止まり、全体との間にかなりの格差を残したまま推移しています。15〜19歳の層で、部落では全体と比較して初等教育終了者がかなり多くなっており、依然として教育水準が低いことを示しています。
(5)教育機会の拡大は、教育を受ける権利の保障という観点からみれば改善といえますが、同時に学歴インフレも進行するために、学歴水準の上昇が必ずしも職業的・経済的地位の上昇につながるわけではありません。今後も18歳人口の減少にともなう高等教育修了者の割合の増大が起こるでしょうが、戦後の激しい学歴水準の変化のなかで、部落の労働者の職業的地位や部落の産業的・経済的状況がどのように変化したのかを検討する必要があります。
図8-7 年齢階級別 学歴構成
[注]全国全体は1990年度国勢調査
(部落解放研究所編『図説・今日の部落差別(第3版) 各地の実態調査結果より』より)
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