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2005.08.04
意見・主張
スマトラ沖地震による津波被害者への復興支援のお願い

WE DO CARE  私たちは気にかけている から
WE HAVE NOT FORGOTTEN YOU 私たちはあなた方を忘れていない へ

 昨年12月26日に起きたスマトラ大地震による大津波から6ヶ月以上過ぎた7月中旬、IMADR理事長でありIMADRアジア委員会議長のニマルカ・フェルナンドさんが再び大阪を訪れました。今年1月、津波直後の来日の際には、緊迫した中、厳しい被害の実態が報告されました。それから6ヶ月経過しましたが、ニマルカさんの報告より、被災者への関心が日々薄れていく中、被災したマイノリティをとりまく現状は、復興にはまだほど遠いことを知りました。その一方で、IMADRアジア委員会をはじめ現地NGOの献身的な努力により、被差別マイノリティに焦点をあてた緊急支援が成果をあげてきていることが確認できました。ニマルカさんの報告を一部ここにご紹介します。
WE DO CARE

女性たちに提供された椰子殻繊維からロープを作る機械 津波直後は、「私たちは気にかけている」の言葉を掲げて被災地を回り、人々が必要としているものを尋ね、それに応える努力をしました。救援物資のTシャツを着ることができないモスレムの高齢女性たちに、彼女たちが着慣れた衣類を、心が傷ついた子どもたちにひと時の癒しのためにおもちゃを、被災キャンプで冷えた給食ばかり食べている人々に移動レストランの食事を提供しました。時が経つにつれ、多くの被災者は被災キャンプから仮設住宅に移りました。家で食事を作ることができるようになったため、たちまち必要となった鍋・釜・杓文字など、台所用品を提供しました。学校が再開されるに連れ、子どもたちは制服が必要となります。被災した子どもたち一人ひとりに制服を手渡しました。

このように救援活動をする中で、私たちが気づいた問題点がいくつかあります。

  1. 東部のアンパラとバティカロアにはまだ広い被災キャンプが存在する。

  2. 救援物資の食糧の配給は地域によってばらつきがある。

  3. スリランカ政府は2月以降、救援金(1世帯当り1ヶ月5,000ルピー 約6,000円、被災状況から脱却するまで)を2、3回支給しただけである。さらには、この額を減らそうとしている。

  4. 一部地域で、政府が海岸線から100メートルを緩衝地帯として立ち入り禁止したことにより、住民の間に不安が広がっている。

  5. 救援物資配給に関連して行政レベルで腐敗が広がっている。

  6. 再建計画立案において、被災者の参加が欠如している。

 

  これに対して、私たちはマスメディアを通して復興の問題点を広く市民に訴えてきました。資源の公正な配分を求めてロビー活動を続けると共に、被災した人々が政府に直訴するよう手紙書きのキャンペーンを行いました。また、UNIFEM(国連女性基金)主催の国際会議やイベントに参加して、被災とジェンダーの視点より復興のあり方を提言してきました。            


WE HAVE NOT FOGOTTEN YOU

 時が経つにつれ、津波の被害は社会の人々の記憶から薄れつつあります。しかし、現実には、仮設住宅に移ることはできたものの、今後の生活の立て直しを考えたとき、人々が安心できるような保証は何もありません。支移動レストランで久しぶりの暖かい食事を楽しむ人々(ゴールにて)援を続けてきた私たちにとって、これからがまさに正念場です。「あなた方を忘れていない」、この新しいスローガンを掲げ、私たちの支援活動は中長期の段階に入りました。その一つとして、現地のパートナー団体と協力しながら行っているのが生計立て直しの支援プロジェクトです。地場産業であり多くの女性たちが関わってきた椰子殻繊維からロープを作る機械、波に道具をさらわれてしまった漁民への漁具、レースの製品を作るミシン、売り物のパンやお菓子を作る道具の提供・・・こうした活動を人々が取り戻すことは、日常を取り戻すことであり、やがてはコミュニティを取り戻すことになります。

これら活動を含め、今後必要とされる活動領域として含まれるのが:

  1. 多くの子どもたちが親を失ったため、孤児の問題が出てきた。
  2. 夫を亡くした女性たちは、経済的困難だけではなく、精神的にも孤独や悲しい体験による傷を受けている。
  3. 妻を亡くした男性たちは、育児、家事など、突然大きな責任を負うようになった。

それを踏まえ、私たちはコミュニティと共にあり続ける活動を目指します:

  1. 女性の生計活動の基盤を築くため、非伝統的な技術の習得においても支援する。
  2. 子どもたちの教育支援。
  3. 差別、人種主義、ジェンダー不平等のない公正な配分に基づくコミュニティ再建の努力。
  4. 紛争と津波の二重被害にあった女性に対する住居の提供。

 このように、なすべきこと、未だなされていないことが多くあります。中長期の支援プロジェクトへの移行にあたり、皆様の継続的な支援をお願いいたします。

ニマルカ・フェルナンド
IMADR理事長


復 興 支 援 協 力 の お 願 い

 津波被災者への緊急支援として1月に始めた呼びかけに対し、部落解放・人権研究所の会員・関係者の方々(18団体、65個人)より、合計1,647,175円(3月31日締め切り時点)の支援協力金をいただきました。その内、160万円をIMADR国際事務局を通して、インドおよびスリランカで救援にあたる現地NGOに届けました。ご協力ありがとうございました。

 「私たちは忘れていない」のスローガンに賛同し、私たちはこれからも現地NGOを介した人々の復興への取り組みを支援していきます。緊急支援に引き続き、皆様のご理解とご協力を心よりお願い申しあげます。

支援金の送先:郵便振替<口座番号> 00900−7−149514
            <名義> 社団法人部落解放・人権研究所
             ※ 通信欄に「津波復興支援」と明記してください。

支援金送付の締め切り: 第一次 2005年 9月末
              第二次 2005年11月末
              第三次 2005年12月末

いただいたお金は、「スマトラ沖大地震・大津波で被災された被差別マイノリティの人たちに思いを馳せ、復興を支援する大阪委員会(「大阪委員会」)」を通して、反差別国際運動(IMADR)に送ります。

2005年8月

部落解放・人権研究所
〒556-0028大阪市浪速区久保吉1-6-12
TEL 06-6568-0125/Fax 06-6568-0714

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