トピックス

研究所通信、研究紀要などに掲載した提言、主張などを中心に掲載しています。

Home意見・主張バックナンバー>本文
2006.01.31
意見・主張
  
参議院議員 松岡とおる 国会議事録
人権を日本の政治の中にしっかりと根づかせたい。
松岡とおるは、そんな思いで国会内外をかけめぐっています。
2004年7月の参議院初登院から、「人権立国ニッポン」をめざす松岡議員の新たな闘いがはじまりました。
人が人として尊ばれ、人権が守られる社会をつくっていく「人間を大事にする政治」をめざして活動しています。
「刑法等の一部を改正する法律案」についての質疑

2004年11月30日 参議院法務委員会

○松岡徹君 民主党の松岡徹でございます。

 七月の参議院選挙で初当選させていただきました。初めての委員会での質問になりますが、ひとつよろしくお願いを申し上げたいと思います。

 私自身は全くの法律の専門家ではございませんので、我が会派の同僚委員はほとんどみんな専門家でございますから、視点が大分変わると思いますが、今回の刑法等の一部を改正する法律案につきまして今大臣からの答弁もありました。この法律が改正提案された理由として、治安の回復を図るということが大きな目的であると、しかしこれで治安回復がすべて図られるとは思っていないということをおっしゃられました。私も全くその思いでございます。したがって、この参議院の本会議での代表質問もさせてもらったときに拙速ではないかということを申し上げさせてもらいました。そういう視点で、今回の改正案について私なりにいろいろと質問をさせていただきたいというふうに思っているんです。

 今日の日本の犯罪状況について、私自身も憂えている一人でございます。治安回復は今までもそしてこれからも重要な課題であるということは、認識は一致していると思っております。ただ、その方法として、今回のように、刑罰を重くして、それだけで本当に果たして治安の回復が図られるのかどうか、先ほど大臣がおっしゃられました。私も全くそのとおりだと思っています。本当に回復するための課題、取り組むべき施策とは何なのかということを明らかにしなかったら、議論を尽くさなかったら、これは国民の体感治安の悪化を、悪化にこたえるといいますか、そういうことにはならないんではないかというように思っています。そういう視点で、今回提案された内容について幾つか御質問なりをしていきたいと思います。

 私自身は、前提は必ずしも刑罰を軽くすべきだということを言っているわけではありません。そういった議論が全く欠けているんではないかと、いや、不十分ではないかという意味で申し上げています。

 元々、罪を犯した人に対する刑罰を与えるということについては、全くそのとおりであります。しかし、その刑罰の年限が、例えば五年を七年にする、十年にするといったときに、その根拠は何なのかというのが全く分からないんですね。強盗を働いた場合、それに対して与えられる刑罰が何年になるのか、その根拠は一体何なのかというのが、全く国民意識からすればその根拠が分からないんですね。

 そういう分からない中で、いたずらに今の基準が低過ぎるといって重い罰を科すべきだという議論は、被害者の心情や治安の悪化に憂えている国民の感情からすれば分かるんですね。私もそうです、自分の身内や家族が被害に遭った場合、被害者の側に立った場合に、やっぱりそういうことを望むというのはそのとおりです。しかし、それだけで治安回復が図れるのかといえば、そうではないと思うんですね。正にこの国会は、そういった国民の感情にこたえると同時に、治安回復を図る施策を同時に明確に示すことが政治の責任だというふうに思っています。

 今回の提案理由も、治安水準、我が国の治安水準や国民の体感治安が悪化しているということと、凶悪犯罪その他の重大犯罪の増加傾向、先ほどのやり取りにもございました。あるいは、国民の正義観念に合致しているのかどうかということもあります。そして、国民の規範意識にこたえていくという立場で今回提案されています。それについて、先ほど言った観点から幾つか検証してみたいというふうに思います。

 それで、提案理由の一つになっています凶悪・重大犯罪、すなわち犯罪が増加しているということです。とりわけ、凶悪犯罪あるいは重大犯罪が増加傾向にあるとおっしゃっておりましたけれども、先ほど、参考人のそれぞれ学者の皆さん方の意見の中にも、幾つか分かれていると思うんですが、もう一度、本当に増えているのかどうかというのをどう考えているのかを聞かせていただきたいと思うんですね。特に、二〇〇〇年のデータのところで犯罪の件数がいきなり、一九九九年から見ればいきなり跳ね上がっているんですね、すべてにわたって。これはどうも、九六年に起きた桶川ストーカー事件がありましてですね、その事件の対応策として、捜査の仕方あるいは認知、原則すべての被害を受理するという方針に変わったというふうに聞いておるんですね。そういう意味で、そのときにいきなり一九九九年から見れば二〇〇〇年は飛び抜けて増えているんですね。

 そういうことからすると、受理した件数が増えたのであって、全体の犯罪件数としては今までとは変わらない、受理したからこそデータがぽっと上がって増えているというふうに言われているんではないかというふうに思うんですが、その辺についてもう一度、増加しているのかどうかということについてどう考えているのか、ちょっとお聞かせ願えますか。


○政府参考人(岡田薫君) 犯罪が増えているか増えていないかというのは相対的なものでありますが、それについては恐らくいろいろな、先ほどもちょっと申し上げましたけれども、罪種でありますとか手口によって増えた要因は違うのだろうと思います。今おっしゃった御質問にありましたように、二〇〇〇年に増えた中にいろいろ処理を、きちっと処理するようになったという要因があるんじゃないかというのは、それは私はあり得ることだと思います。

 ただ、やはりその辺、その場合に、罪種ごとで、例えば殺人の場合はどうかとか、殺人のような犯罪ですと恐らくそういった要因というのはまずないだろうと思います。しかし、暴行とか傷害などのケースですと、かつてはお互いの話合いで解決するならそれでいいのではないかという形で処理されたケースの比率の変化といったものはあるのかもしれません。ですから、そういった要因があり得ないということではないだろうと思います。


○松岡徹君 もうちょっと正確に言うてほしいんですよね、こっちも聞いておるんですからね。

 要するに、犯罪の全体の件数としては変わらないけれども、桶川ストーカー事件以降、受理、原則被害届が起きたやつは全部受理するという方法に、方向に変わったと。その途端に、二〇〇〇年の犯罪件数としては、ぽっとデータとして、数としては増えるんですね。すなわち、今まで認知してこなかった、要するに受理してこなかった件数がたくさんあって、それをこの年代に認知したから増えたと。

 そういう意味では、犯罪の総数としては余り変わっていないのではないか。ここで言うように急増しているとか、飛躍的に増えているというふうな認識は皆さん方の集約の仕方で変わっただけで、全体の犯罪件数としては変わらないんではないか。先ほどもあったように、殺人の件数、特に凶悪事件と言われている殺人の件数はそんなに飛躍的に伸びているわけではないんですね。伸びているのは強盗という、その犯罪のところで出ているんですね。そういう意味では、データの集約するときに、皆さん方は自分のちょっと都合のええように集約しているんではないですかというふうな気がするんですね。

 要するに、犯罪というのは、警察が認知、受理したものだけが犯罪ではなくて、国民の側からすれば、受理されたかされてないかは別にしてでも、要するにそれも犯罪なんですね。それで、当事者同士で和解したとしても、それは犯罪として体感しているんですよ、国民は。ですから、データとしてはそれは表れないんです。

 ですから、そこのところを、先ほどお答えになりましたけれども、そういう部分もあると言っているんですけれども、その捜査の方法というか、受理の方針が変わったから数字が上がったということで理解していいんですか。


○政府参考人(岡田薫君) 私が申し上げたのは、そういった面が全くないというわけではないということでございまして、刑法犯の認知件数は明らかに増加しているところでありますし、かなり急激に増加をいたしております。

 その要因につきましては、恐らく、一つには社会の犯罪抑止機能が低下してきていることですとか、あるいは来日外国人問題から日本の社会が比較的無防備であるということが分かってしまったこととか、あるいは景気、経済の低迷ですとか、被害者意識の変化とか、様々な要因が絡んで認知の増加といったことが起きてきているのだろうと思います。


○松岡徹君 ちょっと、質問していることに答えてくださいよ。私は、数字として、皆さん方の提案理由の中に、犯罪の急増と言っているんですから、その急増のデータの中に、皆さん方の事前にいただいた資料の中にグラフで示しているでしょうが、数字も件数も。それを事前に私たちもらっているんですから、ここ十年間の犯罪の推移を、件数、推移を皆さん方は資料として、私たちにいただいているでしょう、渡しているでしょう。私たち、それ見ていますよ。その中で、なぜこの二〇〇〇年だけぽんと飛び抜けて増えているんですかと。それは受理を、原則被害を受理するという方法、方針に変わったから増えたんでしょうと言っているんですよ。その数字のことだけで言っているんですよ。そのことだけ答えてくださいよ。


○政府参考人(岡田薫君) 二〇〇〇年につきましても、数字が増えた要因というのはいろいろあるのだろうと思いますけれども、先ほども申し上げたような幾つかの要因が複合して増加をしていると、このように思っております。


○松岡徹君 複合しているというか、複合してとか、そういう複合した原因というのは今までにもあったんでしょう。ここで言っているのは数字で、数字で言っているんですよ、数字を。何でこんな数字がぽんと伸びたんですかということを聞いているんですよ。すなわち、このときに皆さん方の原則受理をするという方針に変わったから突然これ、数字、データとしては増えたんでしょうと言っているんです。今までからも複合的なとらえ方してきたんでしょうが、このときだけじゃないでしょうが。どっちですか、もう一回、もう一回答えてください。


○政府参考人(岡田薫君) 同じような答弁で恐縮なんですけれども、恐らく刑法犯の認知件数が増える要因というのは様々なのだろうと思います。

○松岡徹君 そんなん聞いてないがな。原則認知という方針に変わったからでしょうと言っているんです。


○政府参考人(岡田薫君) 二〇〇〇年というのは平成十二年でしょうか、十一年から十二年にかけて二百十六万が二百四十三万になっていますから、そういう意味では三十万弱増えていますし……


○松岡徹君 いや、そんなん聞いていない。


○政府参考人(岡田薫君) 十二年から十三年も二百四十四万から二百七十三万余に増えているわけであります。


○松岡徹君 私は、この二〇〇〇年だけが飛び抜けてぴゅっと増え、数字として、件数として上がっていますから、その上がっている原因は何ですかということを私は聞いているんですよ。

 その原因の一つに、原則受理という方針に変わって、被害が届けられたものは原則受理するということになったから、だから件数として、認知件数としては上がったんでしょうと言っているんです、原因を言っているんです。それをイエスかノーかで答えないで、何を、質問していないことを答えるのやめてくださいよ、時間限られているんですから。


○政府参考人(岡田薫君) 繰り返しで恐縮ですけれども、そういう要因がないと申し上げているわけではないのであって、そういう要因もあるのだろう、あり得ると思います。しかし、それだけではないいろいろな要因が複合して認知の増加という結果になっているのだろうと思います。


○松岡徹君 質問だけに答えてくださいよ。その複合的なこと、何も私は聞いていませんよ。

 だから、確かに、明らかにあの桶川ストーカー事件があった後に皆さん方は方針変わったんですよ。すなわち、原則すべて受理するというふうに変わったんですよ。だから、件数が上がっていく、認知件数が上がっていくのは、これは当然なんですよ。そのことは別に私は悪いことだと言っているんじゃないんです。その結果、こういうふうに上がってくるというのは、認知件数が上がったというのは、それはそれで私は駄目だと言っているんじゃないんですよ、原因は、それがね。それでこの説明が付かぬのですよ。なぜ二〇〇〇年、一九九九年から二〇〇〇年のこのデータがいきなり、これ数が増えるのかというのが分からないんですよ。だから、それがあるからでしょうと言うているんですよ。複合的なことを聞いているんじゃないですよ。

 それが一つの大きな原因であるということは、そのとおりでしょう。もう一回これは、もう一回そこだけ答えてください、イエスかノーか。


○政府参考人(岡田薫君) だから、そういう要因もないとは言えないのではないかというふうに申し上げています。

○松岡徹君 先ほどのやり取りの中でも、要するに凶悪と言われている殺人事件はそんなに増えていない。すなわち、横ばい程度なんですね。増えている、件数が増えているということを証明するといいますか、それを根拠にするのは強盗とかそういう犯罪なんですよ。ところが、それが二〇〇〇年のところでいきなり伸びている。

 ですから、これは原則すべての事件を受理するという方針に変わったために認知件数が増えたというふうに私は思うんですよ。そのことは別に悪くはないんですよ。認知件数が増えて、犯罪の数としては別にごまかしているわけではないんですから。しかし、過去十年のところからさかのぼったら、一九九九年以前は認知、原則認知という方針ではなかったですから認知件数としては少ない数でカウントされていますけれども、しかし犯罪の数としては変わらないでしょうと。

 そうすると、急激に増えたという認識はいたずらに不安をあおるだけではないですかと。もっと正確に私は状況判断をすべきだと。そういう意味では、提案理由の一つになっている犯罪件数が急増しているということの、この提案理由は余りにも一方的な側面でしか言っていないんではないですかと。だから、そういうことを私は言っているんです。まあ先ほど言ったように、そういうこともあり得るということですから、それが大きな原因だと私は思っています。指摘したいのはそういうところです。

 ですから、犯罪が減ったとは言っていませんよ、減ったとは言っていない。皆さん方のデータの作り方というのが、まあ極端に言えば、まあ改ざんしているとはよう言いませんが、皆さん方得手勝手に都合のええような部分だけをデータにしているんではないですかというふうに映るんですね。ですから、しっかりとそういう変化も、データが、件数が上がっていった、認知件数が上がっていった一つの背景ですということをちゃんと示さないとあきませんし、そうすると、急激な増加ということにはならぬのではないかというふうに思うんです。

 そこで、凶悪・重大犯罪ということがありますが、もう一つ、犯罪件数が増えているということと同時に凶悪・重大犯罪というのがありますね。この凶悪・重大犯罪とは一体どんな犯罪のことを言うのかというのをちょっと私も聞かしていただきたいと思うんです。

 それは、例えば犯罪白書が出されていますね。そこでは、殺人と強盗いうのを凶悪犯罪と呼んでいると。警察白書では、それに放火と強姦を加えて凶悪犯罪というふうに言っていますね。凶悪犯罪とはどっちなんですか、ちょっと教えてください。


○政府参考人(大林宏君) お答え申し上げます。

 凶悪犯罪の言葉の使い方でございますけれども、今御指摘のとおり、犯罪白書では殺人と強盗を凶悪犯と呼んでおります。今回の改正に際して申し上げている凶悪・重大犯罪とは、凶悪犯罪を中心として、実際には重い処罰の対象にされている犯罪のことを意味するものでございます。

 御指摘のとおり、凶悪犯罪については必ずしも決まった定義があるわけではございませんけれども、今回の改正対象のとらえ方という観点から申し上げますと、人の身体に攻撃を加えて、生命や身体あるいはその他の重要な個人的法益に危害を加えることを内容とする犯罪のことを考えております。それは、この種の犯罪が現実に国民の生命、身体等に重大な危害を加えることにより治安を悪化させるとともに、国民に深刻な不安と恐怖を与えるものでございますので、政府としてまずこの種犯罪への対策を考える必要があるとの認識によるものでございます。


○松岡徹君 その凶悪犯罪の定義というのは、先ほど言ったように非常に難しいんです。ところが、国民の受け方というのは、要するに凶悪犯罪というのは殺人とか、先ほど言ったように著しく身体に危害を加えるとか、そういう表現ではないんですね、理解の仕方としては。強盗殺人とか、その殺人の仕方も、人の殺し方も非常に残忍な手口で、この間、奈良で起きた有山楓ちゃんの事件もそうですね、非常に残忍な殺され方している。そうすると、国民の意識としては凶悪なというふうに映るんですね。私もそれは全く同意ですけれども、その凶悪・重大犯罪の定義がないというのはやっぱりちょっと、国民との意識がちょっと離れているというふうに思うんで、そこで、私も凶悪犯罪についてはそういう認識でありますけれども、その凶悪犯罪が増えた、その中の例えば殺人です。ただ、殺人を見ますと、そんなに件数は増えていないんですね。大体ほぼ横ばいといいますか、大臣が答弁のところでも、一・一倍ぐらいなんですね。

 この殺人を凶悪犯罪、まあ殺人が減らないというのは私も大変重大だと思いますけれども、それを例えば凶悪だというふうに言える殺人事件、要するに殺人事件の中身ですね、内容です。例えば、殺人事件の中に非常につらい事件があります。例えば、介護疲れで子供が高齢の親を殺してしまうとか、障害を持つ子供、我が子を殺してしまうとか、これも殺人なんです。これも殺人の件数にカウントされるんです。これ、凶悪、凶悪犯罪、凶悪事件として認知するのかといったら、ちょっと違いますね。でしょう。しかし、殺人の件数にカウントされるんです。

 私ね、それで重罰化するというのは、これ、本当に我々自身、殺人事件というこういう重大事件を減らしていくような社会にしていかなあかぬということは全くそのとおりでありますけれども、全部重大だ、あるいは凶悪事件の定義というものが非常にあいまいで、しかもその重大・凶悪事件だというふうに定義されている殺人の中には、介護疲れでとかあるいは障害を持つ子供を殺してしまったりとか、こういう悲惨なというか、要するに、もっと違うところに原因があるような事件がありますね。この辺についてどういうふうに考えたらいいのか。

 また、大臣も、どういうふうに、こういった殺人事件の中には、件数の中にはそういった事件も含まれていますよと、それも含めて凶悪という、ここで言う定義の、まだ定義自身があいまいですけれども、いう言い方でそういった事件も入れるべきなのか、件数としては殺人事件ですから入れますけれども、それを凶悪と言えるのか、そのちょっと考え方、見解をちょっと聞かせていただきたいんですが。


○政府参考人(大林宏君) 今の凶悪・重大犯罪の定義といいますか、今委員が御指摘のとおり、殺人についても同情すべき事案というものはございます。

 一応、私どもの今回の法改正でのとらえ方は、構成要件といいますか、犯罪の中でも比較的といいますか、重い犯罪を割合と定型的にとらえております。ですから、今度の定義がすべてだというふうなものではなくて、例えば、先ほど定義の問題でありました、犯罪白書なんかで強盗罪と殺人罪とらえていますけれども、強盗罪の中には、例えば強盗強姦とか強盗殺人とか、要するに犯罪同士がまたがったようなものも当然入るわけでございます。ただ、今回の改正では、必要性、従来の刑が軽いんではないかという指摘されているものですから、そういう大きな枠の中には、全体からすれば一部ではないかと、こういう見方もあろうかと思います。

 もう一点は、今先生がおっしゃるように、その犯罪の中でも軽い形態があるじゃないかと、それを凶悪・重大犯罪と言うのかと、こういう御指摘だと思います。

 ただ、それは、先ほど言いましたように、一つの類型的に比較的重い犯罪で、身体、生命に直接攻撃を加えるようなものを主体と今度はしておりますので、一応それは殺人、同情すべき殺人でも凶悪・重大犯罪には入りますと。ただし、量刑の面で、例えば執行猶予は付けるような形の手当てをしていくという、そういう事案があることはもちろん私ども踏まえておりますので、ただ、呼び方としては一応その類型には入るということで御理解いただきたいと思います。


○松岡徹君 今回の提案の趣旨の中に、重大・凶悪犯罪が増加しているというふうに言っているんですね。その増加のデータとして出されるデータの数の中にはそういう事件も入っておるんです。ちょっと混同しているんですね。

 ですから、それもそういう形でカウントして、だから刑罰を重くするんだという理由でいくと、ちょっと余りにも荒っぽい言い方ではないかというふうに私は思うんですね。そのことだけは指摘しておきたい。だから、データ、この提案理由の中に言っている、一山何ぼ、一把一からげのような議論ではなくて、しっかりと一つ一つの事件の背景とか原因とかというものを吟味しなくてはならないと思うんですね。

 そこで、先ほどもありましたけれども、今回の提案理由では、治安の回復に努めていかなくてはならないと言っています。そして、なぜこう治安が悪化しているのかという原因の中に、犯罪の質の変化というのが先ほどもありましたですね。私も全くそのとおりだと思うんです。

 国民の、体感治安の悪化と感じる国民の意識は、一つはなぜそういうふうに思うのかというのは、非常に、先ほど言ったああいう事件ですね、奈良の有山楓ちゃんのようなああいう事件が、知るわけですね。一つは、そういう意味では、昔からもそういう残忍な事件はあったんですけれども、今はメディアというこの社会の中で、もう寸時にすべての全国の国民がそのことを知る、共有できるんですね、現状としては。まるで身近な問題として体感できますね。

 ですから、一つは、やっぱり体感治安の悪化の原因は、私は、そういった知ることができるようになった、国民が身近にということで、件数ではなくて、そういった事件の、しかもメディアで放送されるのは、そういうそれこそ重大な凶悪な事件をやられますから、ですから大変な関心を持ちますし、そういう事件が報道されると、今日もまたかというようになるんですね。件数としてはそんなには増えてもいないのに、そういうふうに感じてしまうというメディアのことがあると思います。

 それと、もう一つは、発生場所とかあるいは犯罪の質が変わってきます。すなわち、強盗とか、今までは都会で起きていた、集中的に起きてきたものが地方に起きるようになったとか、あるいは最近では、例えば青少年によるひったくりがありますね。体感治安が悪化したと感じているこのアンケートの中にも、六十代以上の人が治安が悪化しているということに感じているという人がたくさんおります。それは、青少年によるひったくりとか、あり得なかった、私ところの地域にはそんなことはなかった、昔はと。うちの村ではかぎも掛けなくてというような、こういう社会の中でもそういう事件が起きるようになったために体感治安が悪化したと感じるというのはあると思うんですね。

 ですから、そういうところもしっかりと分析しなくてはならないと、その上で総合的な対策を打つべきだというふうに私は考えますけれども、どう思われますか、大臣。


○国務大臣(南野知惠子君) 本当、先生のおっしゃること十分理解できると思いますが、犯罪に関する分析といたしましては、例えば法務省の法務総合研究所において毎年作成しております犯罪白書では、平成十四年と平成十五年とにそれぞれ、暴力的色彩の強い犯罪の現在の動向と、現状と動向ということだとか、変貌する凶悪犯罪とその対策ということを特集として取り上げておりますが、そこでは、犯罪の質的特徴として、犯罪が凶悪化、集団化しており、その被害も深刻化していること、また犯罪の主体が一般の人に拡散するとともに、地域性が希薄になりつつあることなどが指摘されております。それは、今先生がおっしゃったように、都会だけじゃなく、地域、田舎にも、かぎも掛けずに寝ていたと、そういうような状態から、やっぱりかぎを掛けて寝なきゃ危ないねという状況まで地域性が希薄になりつつあるというところだと思います。

 また、政府は、昨年十二月、犯罪対策閣僚会議におきましても、各種の分析などを踏まえながら、総合的な犯罪対策として、犯罪に強い社会の実現のための行動計画、これを策定いたしましたが、その中で、基盤整備の一つといたしまして、凶悪犯罪等に関する罰則の整備が盛り込まれております。今回の法整備はこのような分析や検討を踏まえて作られたものというふうに考えております。


○松岡徹君 正に、治安の回復を図るために今回の刑法の重罰化を提案するというのは、私はやっぱりそういうところの議論をしっかりした上で、あわせて、刑罰は何年がいいかという議論にすべきだと思うんです。

 様々なアンケートとか国民の意識を調べたところ、犯罪が増えている原因に、刑罰が低いからだ、刑罰が軽過ぎるからだというのはまだわずか三割なんですね。ですから、治安が悪くなったという原因は、必ずしも刑罰を上げたからといって回復するとは思っていないんですね、国民は、必ずしもね。ですから、そういった、今言った、大臣言われた議論がしっかりと国民の前で明らかになるような手だてを示さなかったら、私は、治安回復を目的とする今回の改正はその目的の半分も達成できないだろうというふうに思います。

 そこで、具体的に今回の提案の大きな動機になったのは、先ほどもありましたけれども、早稲田大学のスーフリによる集団強姦事件とかが大きなきっかけになりました。

 南野大臣は、まだ法務大臣になられる前に、与党のプロジェクトの中で、強姦罪に対する刑が軽過ぎるというので積極的に提案されてということを聞いていますけれども、その強姦罪に対する今回の改正も含め、南野大臣のそのときの思い、ちょっと聞かしていただけますか。


○国務大臣(南野知惠子君) 先生がおっしゃるように、やはり強姦罪、特に話題としました。浜四津先生と与党のプロジェクトを作ってやったわけですけれども、集団的な問題ということも一つ大きなプレッシャーになることがございます。単独よりも重圧化が課せられるわけでございますので、そういうことについても新しく項を起こしてしていただきたいと、そういう要望もございました。


○松岡徹君 私は、大臣のその当時の思いといいますか、それで起こした行動については敬意を表したいと思うんですね。

 ただ、今回の法案でその強姦罪について刑罰を重くしています。今までなぜ軽かったのかということなんですよ。それ、どう思われます。


○国務大臣(南野知惠子君) 先生がおっしゃるように、その問題につきましては、明治四十年に現行法が制定されている過程では、帝国議会での修正により強盗罪の法定刑が引き上げられ、その結果、強姦罪の法定刑の方が強盗罪より低くなったものというふうに承知いたしております。

 これは、その当時の強盗をめぐる犯罪情勢の認識などによるものであろうかと思われますが、その後百年を、百年近くを経過して、御指摘のように刑法においては女性の人権が軽く取り扱われているのではないかと、その御指摘が次第に強くなってきたものと思っております。

 もとより、女性の人権が十分に保護されることが重要であること、当然でありますけれども、強姦罪以外でも暴力的性犯罪においては女性が被害者になることが多く、女性の人権を保護するという観点からも今回の改正は重要なものであるというふうに思っております。


○松岡徹君 今言われたように、その女性に対する人権というものが非常に軽んじられていたと、それが強姦罪の刑罰を低くしている大きな背景にもなっていたというふうに私も思います。ですから、今回強姦罪の刑罰を上げるということは、強姦罪というのは非常に悪質な犯罪ですよということをしっかりと世に意思表示するといいますか、そういう意味では私は大事だと思うんですね。

 ただ、問題は、低かった原因の一方で、女性の人権というものがこの強姦罪というものをどういうふうにとらえていくか。すなわち、強姦罪の刑罰を重くして、そしてこの強姦罪に対する罪を、犯罪を抑えていくといいますか、抑止していくということは当然ねらっていきますけれども、最近でこそ強姦罪の認知件数は増えていますけれども、全体としてはやっぱり低いんですね。すなわち、私は、認知件数自身は氷山の一角だと思うんです。氷山の一角だと思うんです。なぜ氷山の一角になるのか。これ、刑罰を重くしたからといってこの強姦罪、レイプ、これが認知件数として、しっかりと犯罪として抑止していけるような状態を作ることができるかどうか。刑罰だけを重くしたってこの強姦罪が減らない、犯罪が減らないということになっては、これは意味がないんですね。

 ですから、今言ったように、この強姦罪の低かった原因は、一つは女性に対する人権意識が非常に低かったということが一つの大きな背景であるということです。同時に、それが、被害を届けていくといいますか、被害として強姦罪として成立するような状況に行き着かない、正に多くの部分で隠れたままになっていると、そこをどういうふうに今回の改正で引き上げる、引き上げることができるのかどうか。どう考えられているのか、それは。ちょっと聞かしていただけますか。


○国務大臣(南野知惠子君) その問題は大変難しい課題であろうかと思いますが、この前、DV法を作らせていただきました。それによって、DV法がこういうものであるということが国民に認知されることによってその被害者が声を出してくるようになってくると、そういう女性がだんだんと変容していく、そのことも私は期待したいと思っております。


○松岡徹君 そのとおりです。被害を受けた女性がちゃんとその被害を届けていくといいますか、私は被害を受けたということをちゃんと受け止めるまた体制も要ると思うんですね。

 私は、今回のこの強姦罪、要するにあの事件が、スーフリの事件が大きな今回の改正理由の背景の一つ、原因になったということから考えますと、やっぱりその辺の議論をしっかりしてほしいと思うんです。そうでないと今回の改正は強姦罪には余り効かないんではないか、要するに抑止とか、あるいは救済するとかいうことにはならないんではないかと思うんです。

 強姦罪は精神の殺人だと言われているんですね。強姦の被害を受けた人が警察に行く、被害届を出しに行く、それを証明するのに、そこで二次的な人権侵害というのが起きる可能性があるということは昔から指摘されてきたんですね。ですから、このことを併せてしなかったら氷山の一角のままではないかというふうに思うんですね。

 そういう意味では、警察が、強姦罪について昔からそういうふうに言われていますから、例えば女性の警察官を増やしてその被害を聴くのに女性警察官で対応するとか、あるいは専門家のカウンセラーを置くだとか、そういうふうなことは当然されていると思うんですね。その辺の強姦被害について警察の対応としてどの程度考えられているのか、今の現状、簡単にちょっと。


○政府参考人(岡田薫君) 御指摘のとおり、犯罪の中でとりわけ強姦等の性犯罪というのは被害者に対して大きな精神的負担を与えるものだろうと思います。

 そうしたことの軽減を図るため、これまで警察としては、性犯罪一一〇番といった相談電話や相談室を設置したり、あるいは証拠採取に必要な用具の整備、性犯罪捜査証拠採取キットなどと言っておりますが、そういったものの整備も行っておりますし、それから、御指摘ありました女性警察官の性犯罪捜査員の指定のほか、性犯罪捜査指導員、あるいは性犯罪捜査指導係の設置などを行っております。ちなみに、女性捜査員の数につきましては、性犯罪のための女性捜査員の数につきましては、平成十二年三千百五十三名であったものが、平成十六年には四千五百七十二名になっております。

 そのほか、迅速かつ適切な診断、治療、証拠採取等を行うために産婦人科の先生方との連携を強化したり、あるいは、そのほか男性警察官に対しても様々な研修、教育といったものを施しているところでございます。


○松岡徹君 是非その対応を、要するに女性が、よくあるんですけれども、私たちも女性団体からもいろいろ意見聞きますけれども、被害を受けた女性が強姦の被害を受けたということを証明するためには死ぬ気で抵抗せいと言われるんです。すなわち、死ぬ気で抵抗しなかったら強姦罪は成立しない。要するに、ちょっとでも力を緩めたりすると、あなたも同意したんではないのかとか、こういうふうに言われるんです。

 せっかく刑罰を、強姦罪の刑罰を上げることによって強姦罪の罪の重さ、重大さというものを社会に認知さしていくということもありますけれども、しかし、実際にそれがそこに行き着くまでにいかないという現状をどう思うかということなんですね。やっぱり、今回の刑法でこういうふうな視点で強姦罪の刑罰を重くしましょうという意味は、やっぱりそこを救えるような状況をどう作るかということがなければ、何のためにこれ改正するのかということになる。

 それで、今、現状聞きましたけれども、しかしまだまだ、九六年のそういう、警察本部長による犯罪の被害者等に対する援助の実施に関する指針というのが一九九六年に出されていますね。それでずっとされていますけれども、しかし、まだまだ、現状を見ますと、男性警察官が対応するというのがまだたくさんあると思うんです。ましてや、そして精神の殺人と言われている事件でありますから、カウンセラー、とりわけ今問題になっているのがPTSDですね、心的障害といいますかね、それを一番、性犯罪を受けた人、被害者は被っていると。そのPTSDの危険性を重く持っている性犯罪被害者の人たちに、被害届を出して、そして起訴にまで行く、その捜査の段階というのは極めてデリケートな対応が必要だと思うんですね。そうでなかったら、今回のところには行き着かないだろうというふうに思うんです。

 やっぱり現状はまだまだ男性警察官の対応ですとか、そういうカウンセラーも、民間のカウンセラーにも委託をしていると言っていますけれども、必ずしも十分ではないと思うんですが、その辺を強化していくといいますか、そういう考え方はおありなのかどうか。


○政府参考人(岡田薫君) 御指摘のように、確かに警察官の中、まだまだ女性警察官少ないのだろうと思います。

 先ほど申し上げましたように、性犯罪捜査員につきましては、十二年の三千二百名に対して現在その一・四倍程度になっております。また、女性警察官そのものの数につきましては、平成元年が約四千百名で、全警察官に占める割合は一・九%でございました。それが現在は約一万八百名で四・四%となっておりますが、今後も女性の能力あるいは特性を発揮することの重要性というのはますます高まっているのだろうというふうに認識しておりますので、引き続き女性警察官の積極的な採用に努めてまいる所存でございます。


○松岡徹君 もう、ちょっと時間がありませんのでこれ以上聞きませんが、是非、海外の事例、アメリカとかイギリスとかの事例は、結構それはそういう体制整えられているんですね。専門官がいて、しかも、取調べといいますか被害の状況を受けて聴く、事情聴取する部屋を整えたりとか、あるいは専門のそういう精神科医でありますとかいうものもきちっと整えています。ましてや、その被害を受けた女性が警察へ行くことすらなかなか行きにくいと、だから、だれかを付添いで、付いていくとかいうような様々な体制を整えているそうでございます。

 今までやっていることが決して駄目だと言うてるつもりはありませんが、この時期にそういう決意を持たれたんですから、大臣も与党のプロジェクトでこの強姦罪に対する提言もされてきたわけでありますから、そこにもっと力を入れてほしいというふうに思うんですけれども、大臣のちょっと決意を。


○国務大臣(南野知惠子君) 委員からもいろいろな御提案がございました。それらを踏まえながら今後しっかりと検討していき、そういう問題点が提出しやすいような環境を作っていくということが社会的に必要であろうかなと思っております。


○松岡徹君 是非ひとつよろしくお願いしたいと思うんです。

 そして、今申し上げてきたように、今回の法律提案の目的といいますか、犯罪抑止、治安の回復、そして犯罪を抑止していくということだと思うんですね。衆議院の参考人の方の中にもいろいろ言われていました。今回、刑法を重罰化することは一つのメッセージ効果があると言われていますね。抑止していく。本当に抑止できると、抑止効果があるというふうにお思いなのか、どうですか。


○国務大臣(南野知惠子君) 抑止効果については、これも大きな難しい課題であろうかというふうに思っておりますが、犯罪は社会における人の行動であります。そういった刑事法の改正については、自然科学の分野からもそのような効果が計量的に算出できないものでありますけれども、やはり抑制効果と、犯罪を抑止するという機能があるものと私は信じて、この法案の成立及びその後の実行を、行動あらしめたいというふうに思っております。


○松岡徹君 人間だれしもそうですけれども、私たちも子供のころから、人の物を取ったら警察に捕まるよと、刑務所へ入れられるよというてね、そして、社会規範として、犯罪というんですかね、そういう強盗とかそういうふうなことをしては駄目だというふうに習うんですね。しかし、それで必ずしもなくなるんではなくて、そういうメッセージ効果はあると思います、確かにね。しかし、それで犯罪が抑止されるかどうかというその抑止効果から考えると、これだけでは本当に抑止の効果は、まあ先ほど大臣おっしゃったように、それだけではないんだと、治安回復のためには、今もおっしゃられた。ですから、その辺の議論が、今回そういう提案が欠けているというふうに思うんです。重罰だけやって、そのもう一方のその視点、今言った視点ですね、その辺の取組といいますか、政策というものの提案が欠けているというふうに思うんですね。

 今回の法律の目的は正に犯罪の抑止でありますし、治安の回復が目的であります。しかも、国民の正義意識というのは、正義感というのは、必ずしも罪を犯した者にちゃんと罪を償えということだけではないです。正義感というのは、こういった犯罪が起きないようにどうするのかということも同時に国民の正義感としてはあるんです。二度とこんなことが起きないようにしていかなくてはならないというのが国民の正義感の中にはあると思うんですね。そして、その被害を受けた被害者たちを救済しなくてはならないという、これが国民の正義意識、正義感だと思うんです。これにこたえるためには刑罰を重くするだけではちょっと不十分だと思うんです。その辺が欠けているというふうに思うんですね。そういう意味で、抑止効果が本当におありと思っているのかというふうに今聞かしていただいたんです。

 私は、抑止の効果として大事な点は、正に特別予防、すなわち矯正教育とか、再犯率をどう、いかに下げていくかということです。今回の法改正の提案で一つ懸念されているのは、その矯正教育である矯正局、すなわち刑務所の過剰収容状態が問題になっています。そういう意味では、この矯正教育の重要性というものをどう考えているのか。再犯率は今何%か。全体としてはまあ大体五〇%ぐらいですかね、再犯率はね。すなわち、これはずっと横ばい状態ですね。再犯率が下がってない。ですから、罪を重くしても、そして刑務所へ長いこと入れても再犯率は下がらない。すなわち、特別予防という政策、考え方というものをしっかりと議論をしなかったら、罪を重くしただけではこれ再犯率下がらないと思うんです。

 私は、今回の法律の提案の目的である治安回復と犯罪抑止と言うならば、その特別予防、すなわち矯正、再犯率をどう下げていくかということについてしっかりと言わなかったら駄目だと思うんですね。それについて、考え方どうですか。


○政府参考人(横田尤孝君) お答えいたします。

 今委員が御指摘ございましたように、再犯率は横ばいであると。私どもは矯正の立場でございますので、厳密な意味での再犯率ということではございませんで、こういう行刑施設に、行刑施設、刑の執行を終えましていったん社会に戻った人が再び行刑施設に入ってくるかという意味での再入率ということで考えておりますけれども、おっしゃるように、最近の統計によりますと、出所してから五年以内に、全部もうおしなべて言いますと、四五、六%の者がまた刑務所に戻るという現実がございます。

 私どもとしては、何とか矯正の立場において、いったん社会に出た者が再び戻らないように、あらゆる教育訓練を含めて、ならないようにということで努力してまいりましたけれども、しかし、それらの数字が示しますことは、これで十分よしというふうに私どもも考えてございません。

 先般、委員も御存じかと思いますが、昨年、行刑改革会議というものがございまして、提言がございました。そこにおいても、やはり教育の充実ということが提言されております。

 私どもは、今後とも受刑者の特性とか問題性に応じたより効果的な教育プログラムの実施に努めますとともに、その社会資源の活用を推進するなどしての矯正教育の充実を一層図ってまいりたいと考えております。


○松岡徹君 私の申した指摘は大体別に否定できないと思うんですけれども、今申し上げたようにね。だからこそ、例えば今回の法改正で心配するのは、今の日本の刑務所の過剰収容の状態なんです。これで刑法を重罰化することによって過剰収容が今後も予測されるんではないかと。過剰収容の予測というのをどういうふうに考えられているのか、ちょっと。


○政府参考人(横田尤孝君) お答えいたします。

 今回の法改正によって過剰収容が生ずるのかどうか、そしてまたどの程度生ずるのかということにつきましては、率直に申し上げまして、犯罪というのは人の行動で大変予測し難いものであると。それから、何といいましても、この収容といいますのは、犯罪が発生しまして最終的には裁判、有罪判決の確定といいますか、実刑の判決を受けたもの、確定によって決まるものでございますので、そういった裁判も途中に入ることですので、なかなかはっきり言って予測し難いというのが結論でございます。


○松岡徹君 予測できないというのは、数字では言えないかもしれぬけれども、はっきりしているのは過剰収容、要するに収容者は増えるという、これは当たり前ですわ。どれぐらい増えるかというのは数字では今言えないかもしれないですけれども、今でも過剰収容なんです。今回、刑を重くしたら当然更に過剰収容になっていくだろうというのは、これはだれもが予測できます。それは間違いないですね。大臣もそう思われます。


○副大臣(滝実君) ただいま矯正局長から御答弁申し上げましたけれども、基本的には、やはりこの過剰収容というものが減るか減らないかというよりも、そういう現状維持あるいは少し上がってくるということも覚悟しながらやっぱりこの問題は対処していく、そういうような委員の御指摘だろうと思います。


○松岡徹君 時間がないので。

 やっぱり過剰収容になるんですよ。今回の重罰化すれば、過剰収容になるんです。しかし、法律の目的である治安回復とか犯罪抑止ということからすれば、特別予防という取組は非常に大事である。すなわち再犯率を、要するに再入所率ですか、皆さん方の言い方は、我々からすれば再犯率をどう下げるかとかいうことなんです。その役割としては、刑務所での矯正教育というのが非常に大事です。その刑務所が過剰収容になって、そのことが果たせるのかどうかということなんです。

 先ほど言ったように、犯罪の質、中身によって、同じ殺人でも全く違うものがあります。あるいは強盗でもそうです。すなわち、矯正教育というのは極めて大事なウエートを占めてくる取組だと思うんです。だからこそこの手だてをしっかり打たなかったら、そのことと併せて刑罰はどうあるべきかという議論をすべきなんです。私たち自身で、率直に言いますけれども、今まで五年の刑罰やったやつを十年にしたからといって、この十年にする根拠は一体何だ、五年とは何を根拠にしているのか、よく分からないです。刑務所の矯正教育からすれば、例えば十年間の刑が下りたとしたら、その間に刑務所の中で矯正教育するわけですから、正に刑罰の長さによって矯正教育プログラムが変わってくると思うんですね。でしょう。そういう意味では、矯正行政というもの、教育というのを是非重要視してほしいと思うんです。

 それで、本会議でも申し上げましたけれども、名古屋刑務所の豊橋支所で、あれは和姦だと言っていますけれども、そんな和姦なことあり得るはずがない。女性は収容者ですよ。妊娠させた男は看守部長ですよ。しかも、それが豊橋支所内で行われている。それは合意だと、合意の下に、そんなふざけた話じゃないと。私ね、そういうことを見るにつけて、矯正教育が大事であるにもかかわらず、実は今、既存の刑務所の矯正教育を担うべき職員たちのモラルといいますか状況は、大変な状況になっているんですよ。

 だから、刑罰をこれだけ上げる前に、是非そういうことにまず手だてを打って、そして刑罰はどうあるべきか、年数はどうあるべきかということになるべきではないかと。だから拙速だと私は思うんです。しかし、まあ今回出ていますから、しかしそれは是非、そのことについてどう思われるのか、矯正教育、大臣。


○国務大臣(南野知惠子君) 先生仰せのとおりでありますが、省を挙げましてこの行政改革に取り組んでいるこの時期に、行刑改革に取り組んでいるこの時期に御指摘の不祥事案があったということは本当に申し訳ないと思っております。遺憾でございます。

 法務省といたしましては、同事案に対して厳正に対処することは当然でございますが、同種事案の再発を防止すると、そのために必要な措置を講じたところでございますけれども、今後とも被収容者の人権を尊重し、改革の実現に全力を注いでまいりたいと思います。先生の御協力も是非必要であろうかと思います。よろしくお願いしたいと思います。


○松岡徹君 是非、私はそういう視点でこの刑法の重罰化については拙速過ぎるなという指摘をさせていただいたんです。

 私は、被害者の、犯罪被害者の人たちの感情とか国民的な正義感というのは、必ずしも罪を犯した人間に厳罰を求めるだけではなくて、大事なのは、その自ら罪を犯した重大さ、その責任というものを加害者といいますか犯人にしっかりと自覚してほしい、そして、その上で心から被害者に対して謝罪をしてほしいというのが一方の大事な感情なんですね。そして、被害者の方は、なぜこんなことが起きるのか、なぜ我々の子供、身内がこんな被害に遭ったのかというのは、こんな犯罪のない社会にしてほしいという願いなんですね。だからこそ、矯正教育、いうところの修復的司法というような議論がありますけれども、再犯率を下げるためにも極めて大事な課題になってくるのではないかと思います。

 是非ともそのことを、十分確立されることを期待をいたしまして、私の質問をこれで終わりたいと思います。

 ありがとうございました。

参議院議員 松岡とおる 国会議事録