○松岡徹君 民主党の松岡徹でございます。
御承知のとおり、日本国憲法第十三条で個人の尊重、幸福の追求権と、第十四条で法の下の平等がうたわれています。この二つの憲法規定は、二十一世紀の日本社会に人権を確立する視点を持った人権の包括的規定として、また社会権保障の前提、さらには環境権やプライバシー権などの新しい人権の根拠としても重要な位置にあります。この二つの条文を受けて少なからぬ法律が制定されていますけれども、なお多くの不十分さが指摘されています。憲法の具体化、法の整備が問題となっています。
そこで、私はこの点に関して三点ほど提言をしたいというふうに思っています。
まず第一点は、社会権や新しい人権を実現していくための国としての体制の整備にかかわった提言であります。
日本国憲法は、何よりも人権実現に向けた政治の責任、責務を明らかにしています。特に憲法十三条では、「すべて国民は、個人として尊重される。生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利については、公共の福祉に反しない限り、立法その他の国政の上で、最大の尊重を必要とする。」と定められています。人権と反差別の運動は、これに励まされて国会に人権立法を求め、政府や自治体に人権行政を求めてきました。その中でも最も重要な課題の一つは、この規定を実施するための国の体制が整備されていないという点であります。そこで、組織体制として内閣に新たに人権省を置き、その組織法として人権省設置法を定めるということが必要だと考えています。
第二点は、社会権や新たな人権の実現に向けた法整備にかかわった提言であります。
日本国憲法が保障したのは人権であります。そこでは、人権を侵害され、差別されている者が自己の人権の回復を求めて立ち上がり、闘うことが求められています。日本の社会運動はこうした憲法の要請によくこたえて、社会権の実現に努力してきたと思います。朝日訴訟以来の人権裁判、部落解放運動が推進してきた同和人権行政、そして障害者、女性、外国人住民、アイヌ民族の運動など、被差別の当事者が行ってきた運動こそ憲法の社会権を現実の社会で生き生きと実現する闘いでありました。この延長線上で、日本を真に人権文化国家として確立していくために求められている極めて重要な課題として、人権尊重・平等確立社会基本法、仮称でありますが、こういったような人権基本法の制定が必要であるというふうに考えます。
既に数多くの府県、市町村では、国に先行して人権尊重の町づくり条例が制定されています。これに基づいて当該自治体において人権行政の基本方針や基本計画が策定され、人権審議会や人権室などの組織機構の整備が図られています。こうした地方の人権条例の実績を踏まえ、国レベルの中核的人権立法制度が求められているというふうに考えます。
第三点は、安心して生きていくことができるための人権侵害救済制度の整備に関する提言であります。
人権、反差別の運動はしばしば、一人の人間に対する人権侵害、一人の人間に向けられた差別を問題にしてきました。人権保障の本領は、社会で差別され、無視されがちな少数者の保護にあります。一人の個人を守ることが決定的に大事なのであります。ですから、運動は、いつの時期にも個人の人権の救済を求め、被害者が安心して頼ることのできる救済制度の実現を要求してきました。この点に関して言えば、日本にはいまだに独立性と実効性を兼ね備えた人権侵害救済機関が整備されていないという問題があります。早急に人権侵害救済法が制定される必要があるというふうに考えます。
以上、提起しました人権省の設置、人権尊重・平等確立社会基本法及び人権侵害救済法の制定が、日本国憲法の基本精神である基本的人権の尊重、とりわけ社会権、新しい人権を実現していく上で特に重要であるということを強調して、提言を終わりたいと思います。
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