トピックス

研究所通信、研究紀要などに掲載した提言、主張などを中心に掲載しています。

Home意見・主張バックナンバー>本文
2006.01.31
意見・主張
  
参議院議員 松岡とおる 国会議事録
人権を日本の政治の中にしっかりと根づかせたい。
松岡とおるは、そんな思いで国会内外をかけめぐっています。
2004年7月の参議院初登院から、「人権立国ニッポン」をめざす松岡議員の新たな闘いがはじまりました。
人が人として尊ばれ、人権が守られる社会をつくっていく「人間を大事にする政治」をめざして活動しています。
差別・人権侵害の定義を問う

2005年10月24日 参議院行政監視委員会

○松岡徹君 民主党の松岡徹でございます。

 私は、最初に、本委員会に上がっています請願について若干触れたいというふうに思っています。今年の九月二十六日に、松江市における交通事故死の疑いのある事案の明確な説明を求めることに関する請願でございます。これに触れたいというふうに思っているわけです。

 実はこれ、この請願については、我が党からもいろいろと要請、我が党の方にも要請来まして、昨年の十一月に我が党の岩國衆議院議員がこの事件に関する質問主意書も出しております。非常にあっさりとした答弁書でありましたけれども。ここに来てもう一度私もその経過も含めて勉強させていただきました。やっぱりちょっと説明を聞きたいところもございますので、今日はそのことにちょっと触れたいというふうに思っています。

 この事件はもう今から十二年以上前の事件でございますので、そしてこの願意は、交通事故ではないかという亡くなられた方の遺族の方が、交通事故ではないというふうにされた警察の方に、遺族の方はこれは交通事故ではないのかということで、若干意見が違うんですね。それについて明確な説明をしてくれということが願意でございまして、私もその思いを受けまして、若干調べさせていただきました。

 そこで、もう一度、十二年前の事件でありますが、この事件の状況とかその後の経過ですね、聞かせていただきたいというふうに思います。


○政府参考人(矢代隆義君) お尋ねの事案でございますが、平成五年五月三十日の午前八時二十六分ころでございますが、島根県松江市内の歩道上におきまして、当時六十五歳の女性があおむけの状態で倒れているのが発見されまして、三日後に死亡されたものでございます。所轄警察署におきましては、直ちにひき逃げ事件等を視野に入れまして緊急配備その他所要の捜査を行ったものでございます。現場の見分、聞き込み、着衣等の鑑定、遺体の司法解剖等からは交通事故をうかがわせる要素は認められなかったが、一方で、本人が転倒するに至った原因について一定の推定はできるものの特定するには至らず継続捜査扱いとなったものでございまして、その後平成七年五月、本件はひき逃げ事件であるとの告訴がありまして、これを受けまして更に所要の捜査を行いましたが、結果はやはり交通事故と認定できないが交通事故ではないと証明する確実な証拠も得られないということで、同年十一月、捜査結果を検察庁に送付したわけでございます。

 検察庁においては、当該告訴に対し、平成七年十二月、不起訴処分との決定がなされ、その後、審査申立てを受けた検察審査会において平成八年三月、不起訴処分相当との議決がなされたものと承知いたしております。


○松岡徹君 大体の経過なんですが、そこで、平成五年の五月三十日、八時二十六分ごろに発見されたんですね。小西静江さん、当時六十五歳でありますが、彼女が、聞きましたら、夫の忘れ物を届けに行った帰りに遭ったということですが、このときに警察は直ちに緊急配備をしているんですね。
 この緊急配備をしたというのは、なぜしたんでしょうね。

○政府参考人(矢代隆義君) お答え申し上げます。

 緊急配備は、犯罪等一定の事案が発生した場合におきまして、犯人を捕捉するとともに、あるいは関連する参考情報を収集するため、緊急の必要がある場合に行う警察活動でございます。


○松岡徹君 緊急に配備するいうのは、まあ素人の私でも、事故あるいはその他の要因が考えられる場合されると思うんです。その後緊急配備を解かれているんですね、二時間後ぐらいでしたかね。
 解かれた理由は何でしたんですか。

○政府参考人(矢代隆義君) 警察活動は様々なことを想定いたしまして展開するわけでございますが、本件緊急配備の解除に至った判断ですが、現場の状況あるいは聞き込み捜査で得られた情報等に基づき総合的に勘案して決定されたわけでありまして、本件事案においては、ひき逃げあるいはひったくり事案を視野に入れて緊急配備を発令したわけですが、参考となる新たな情報が得られなかったことから、認知から約二時間後に緊急配備を解除しまして、隣接の警察署に対しては一般的な手配に移行したものと、このように聞いております。

○松岡徹君 そこで、私がちょっと疑問に思うのは、最初に交通事故かもしれないということも含めて緊急配備をした、そのときの判断は当然現場に入られた警察の方が判断していくわけですね、中心に、現場を見て、そういうことになると思うんですね。

 で、二時間後に緊急配備を解いたというのは、交通事故ではないという他の要因、すなわち最初に見たときに、現場を見たときに、これは交通事故かもしれないという可能性は十分あったからこそ緊急配備をしたわけですね。で、二時間後にこれを解いておるんですね。

 その違いが何なのかというのがよく分からないんですけれども、それは分かりますか。


○政府参考人(矢代隆義君) お答え申し上げます。

 緊急配備は、そのような容疑がある場合には、様々なことを想定いたしまして警察活動を展開するわけでございます。

 それで、現場における見分からひき逃げ事件等をうかがわせる痕跡が発見されず、あるいは緊急配備自体からも本件事案に関連すると思われる情報も得られないという状況がありまして、したがいまして、全体を総合的に判断いたしまして、緊急配備についてはこれ以上やる必要はないと、こういうことで解除したわけでございます。


○松岡徹君 この方はすぐに発見されて病院へ搬送されているんですね。松江市立病院だと思うんですが、そこでの診断結果といいますか、それはどうなったんですか。

○政府参考人(矢代隆義君) この女性は松江市立病院に緊急搬送されまして治療を受けているわけでございますが、医師の診断では、内因性クモ膜下出血という診断でございます。という状況でございました、病状は。

○松岡徹君 たしか松江市立病院の藤本先生だと思うんですが、内因性のクモ膜下出血だということの報告を受けたのは、要するに緊急配備を解いた原因の一つにもなっているわけですか。

○政府参考人(矢代隆義君) お答え申し上げます。

 事案の判断は全体の要素から判断いたしますので、そのことも一つの判断要素にはなっているかと思いますが、ただ緊急配備を続行するかどうかということにつきましては、先ほど申し上げましたように、現場における状況あるいは緊急配備自体から本件事案に関連すると思われる情報もどうも得られてこないということで、全体判断で解除しているわけでございます


○松岡徹君 その全体判断の中にその松江市立病院の先生の診断結果も入っているということですね。そういうふうに理解すればいいんですね。


○政府参考人(矢代隆義君) その判断要素の一つにはなろうかと思います。

○松岡徹君 同じことですがな、聞いているのは。何遍も質問させぬといてください。

 私は、総合的なというのがあるんですが、わずか二時間で緊急配備解いておるんですね。発見されてすぐに倒れている小西さんは病院へ搬送される。そしてすぐに、直ちに警察は緊急配備をしている。これは、そのときの状況判断としては私は正しかったと思うんですよ。事故かもしれないという可能性は十分あったわけですから緊急配備をした。しかし、わずか二時間後にそうではないと。聞き込みもしたけれども、総合的に判断して緊急配備を解いたと言っているんですね。

 当然私は、その中の一つの、要因の一つに、この松江市立病院の先生の診断結果、すなわち内因性のクモ膜下出血。内因性というのは、すなわち自分で勝手にそのときにその場所でこの小西さんは突然クモ膜下出血になって倒れたんだと、だから自分の、まあ事故ではないんだという判断だと思うんですね。そういう結果を、当然判断の一つの中に入っているということですから、二時間で緊急配備を解くというのは、普通、交通事故かもしれないといったときに、総合的に見れば、ちょっとその原因をつかむためには十分かどうかというような気がするんですね。

 それを私は裏付けるのに、例えばこの朝の八時、まあ朝の早い、早朝ですから、現場に急行した警察の方が現場を見て、交通事故かもしれない、ひき逃げかもしれないという可能性を十分秘めているということで緊急配備を指示したと、あるいはそういう判断でしたと。その一つに、それを見たときに警察の人は、お医者さんではないですから、内因性だとすれば分からない、なかなかね。クモ膜下出血かどうかの、素人が見ても分かりません。

 その中で、これは交通事故かもしれないということは、すなわちその他の要因、後で六月の三日付けで実況見分調書というのがあるんですが、その実況見分調書によると、その女性のスカート裏面のファスナーのほつれだとか、あるいは直径十四センチの血痕だとか、左の足の側面に六センチの泥が付いたりとか、そして二日、その前の二日に、検視調書というのがありまして、左右両足に六センチ、四センチ大の擦過傷があるとか、長さ四センチあるいは九センチ等の皮下出血等々があるんですね。そして、左頭部に卵大のこぶができていると。こういうようにその当時の検視調書あるいは実況見分調書でもそうなっているんです。

 これは当時、事件、その現場に急行した警察の方が見て、当然これは交通事故かもしれないというそういう、お医者さんではないですからクモ膜下出血かどうか分かりませんけれども、そういう意味では、その最初に、一番最初に行った警察の人が判断したのが私は正しかったと思うんですね。そういったことを見たからこそ、これは交通事故ではないかということで緊急配備をしたというんですね。ところが、二時間後にこれ緊急配備を解いていると。それはなぜなのか。

 こういった実況見分調書なりあるいは検視調書の結果は、これはどういうふうに説明するのかということなんですね。

 私は、それで、一番最初にこの女性を診察した松江市立病院の藤本先生が、この人は内因性のクモ膜下出血だと言ったんです。この人はお医者さんですから、当然、クモ膜下出血の症状というのは分かるでしょう。しかし、現場で判断した警察の方の、こういった擦り傷だとかたんこぶだとか服のファスナーのほつれとか、そういったことまで判断して、この人は内因性、すなわち突然そこでクモ膜下出血になって倒れてなったんだという、すなわち、この先生はそういう状況まで総合的に判断して、警察の言う事故かもしれないというこの疑問を払拭するまでの根拠を持った診察をされたのかどうかというのが、当然、私は素人目から見てもおかしいなというふうに思うんです。これはどう思われます。


○政府参考人(矢代隆義君) 病院の医師は、現場の状況などとは無関係に、診断した状況を見まして判断しているものと思います。

 なお、前段部分にございました御質問に関連いたしますが、警察が事案を扱ったときに、この事案がどうであるか、事件であるかそうでないか、あるいは事件だったらどういったものであるかということにつきましては早々には結論を出しません。捜査は、過去に起きたことを後からこれを再現する、そういう作業でございますので、何があったのかということを確定する必要があるわけでございます。したがいまして、いろいろな要素が出てまいりますけれども、すぐにこれがどういうものだったかという結論は出さないわけでございます。

 そこで、その緊急配備の問題ですが、これは正にケースケースによりまして対応が違ってくるわけでございまして、例えば、犯人が逃走しているということで、こういう犯人で、名前もあるいは顔も分かっているということになれば、これを追跡するための緊急配備は時間が長引くことになろうかと思います。しかし、同じ犯人の逃走であっても、被害届はありますが、どういう人か分からない、何かあったけれども、強盗があったけれども犯人の着衣その他が全く分からないという状況でどのくらいの緊急配備をやるかといいますと、その周辺におきまして関連の情報を得られる範囲でもってやるわけでございまして、したがいまして時間がおのずから限られます。

 ひき逃げにつきましても同様でございまして、仮に、ひき逃げの疑いも視野に入れて緊配をしているわけでございますけれども、その場合でありましても、仮にひき逃げした車両が特定されておって、ナンバーも一部分かっているというようなことの場合とそうでない場合ではおのずから違ってまいります。

 したがいまして、この場合には、そういう要素というものが当初の段階では、先ほど申し上げましたような状況でございましたから、その観点で全体から判断して緊急配備は二時間程度で打ち切っていると、こういうことでございます。


○松岡徹君 この松江市立病院のお医者さんが初めて、一番最初にこの女性の診察をしたんですね。そういう意味では、私は、緊急配備を解いた要因の一つにこういった診察結果もあるということは総合的な総合の中に入っていることは事実ですから。

 緊急配備というのは、元々、警察の方がこれは交通事故ではないか、そうではないということも含めて、現状を踏まえた上で緊急配備する。その解き方についてはいろいろあると思います、確かに。しかし、二時間というわずか短い時間で緊急配備を解いているということは、やっぱりこのお医者さんの診察が大きな要因ではないかというふうに思ってしまうんですね。

 その証拠に、この方はその後、二日後ですか三日後ですか、亡くなられているんですね。亡くなられた後に警察の方は検視に出されているんですね。その先が島根医科大学の死体の司法解剖といいますか検視なんですね。そうすると、この島根医科大学へ出した、検視に出した結果は、右頭部打撲による外傷性クモ膜下出血だと言っている。そういうふうに判断されると言っている。まあ平たく言えば、松江市立病院は内因性、すなわちふだんの生活の中で突然倒れた、すなわちクモ膜下出血でですね。ところが、この島根医科大学の方に検視に出せば、その先生は外傷性によるクモ膜下だといって判断できると。

 しかし、この島根医科大では、その外傷性の外傷というのは何なのか、交通事故なのか、あるいはこけてなったのか、そこは分からないと。その外傷の原因までは特定できないけれども、しかし外傷性のクモ膜下出血であるということは確かであると言っているんですね。すなわち、松江市立病院のお医者さんとこの検視に出した、司法解剖に出した島根医科大の結果が違うんですね。内因性と外傷性と違うんです。

 これは、その後のこともあるんですが、この請願を出されたこの小西さんの遺族の方々が、それぞれ現場も含めて様々自分たちの力で調べているんですね。それで、そういった、また、開示されたこういった検視結果でありますとか実況見分調書とか、そういった資料を基に、遺族の方は独自で元東京都の監察医務院長上野医学博士に依頼して、もう一回見てほしい、監察医の立場でと言ったら、その上野先生の結果は、本件は単純内因性クモ膜下出血ではなく、歩行中にスクーターなどの単車と接触して路上に転倒した外傷性クモ膜下出血と考えられる、精査が必要であるというふうに言われている。

 私は、内因性だというふうに決め付けたのは、実は松江市、一番最初に運び込まれた病院の先生が診ているんですね。しかも、その先生はお医者さんで、その状況、すなわち擦り傷があるとか衣類が、ファスナーがほつれたりとか、そういったことは考慮しないで、病状だけ見て内因性だというふうに判断したんですね。

 私は、警察が一番最初に現場へ行ったときに非常配備をしたのは、そういったことも見たからこそこれは事故ではないかというふうに緊急配備をやったはずなんです。ところが二時間後に解いている。その解いた要因の一つに、目撃者だとかその後の調べで交通事故の要因は見当たらないというふうに判断した。しかし、その判断の中に松江市立病院のお医者さんの診断結果も入っておるんですね。

 私は、ここで十分な対応が取られていないんではないかというふうに思うんですね。当然のように、遺族の方々がおかしいと、自分の身内がどんな死に方をしたのかということを知りたいというのは、これは当然のだれもが持つことですね。

 時間もありませんのでこの辺で終わりたいと思うんですが、私たちは、私自身、この請願を見ただけで、若干調べさせてもらった結果だけでもそういった疑問点が感じられますけれども。

 ちょっともう一度聞かせてほしいんですが、この病院の違いですね。松江市立病院と島根医科大、警察の方が検視に出された場所ですね。その結果、なぜ、外傷性クモ膜下出血だというふうに判断できると言っているのに、なぜ内因性として事故ではないというふうに判断されているのか、それはどうですか。


○政府参考人(矢代隆義君) 警察の捜査は事実に基づいて進めてまいります。

 この死因につきましては、外傷性のクモ膜下出血であるということで鑑定されておりますので、それに基づいて捜査をしておるわけでございます。鑑定書自体は随分後に出てくるんですけれども、解剖所見は早い段階で出てまいりますので、その前提で捜査をしておるわけでございます。

 それで、ただ、全体の状況からいたしまして、まずその内因性であるか外因性であるかというそのクモ膜下出血の原因のほかにどういう傷が体にあるかということで見ていきます。そういたしますと、この傷自体が、鑑定におきましても各損傷部位を列挙して説明しておりますが、これらは車体先進部分との強烈な衝突によるいわゆる第一次損傷に相当する外傷等は確認されないと、車体との強い衝突や轢過はなかったものと推測される旨の記述が鑑定書にはあります。

 それから、警察側でも直後に、これは署員が現場の綿密な鑑識活動をやっております。様々な痕跡はないか、落下物はないか、あるいは道路の状況はどうなっているかということで現場の見分、それからこの方の着衣などにつきましても鑑定いたしまして、靴も含めて着衣、鑑定いたしまして、それで遺体の司法解剖をやっておるわけでございますので、それらの中からいずれも、先ほど申し上げましたように、交通事故をうかがわせる要素は認められないということで判断をし、ただその転倒した原因につきましては、一定の推定はできるけれども本当にそうだという特定には至らないと、こういうことになっておったわけでございます。

 以上でございます。


○松岡徹君 今のも全部おかしいんで、私、具体的に聞いているんですね。だが、そこの具体的なところはなかなか答えていただいていない。そのことが、遺族の方が十二年たっても腑に落ちない、おかしいと思ってやっているんですね。

 私は、一番最初に運び込まれた松江市立病院のお医者さんが内因性だと。しかし、その判断の結果は、現認、一番最初に現認した警察官、非常配備をしいた警察の判断、すなわち交通事故ではないかと思われるひざの傷とか着衣の汚れとか、それから見てもこれは交通事故ではないかと思ったのは、そんなのも含めて総合的に、その疑問をも吹き消すぐらいの判断で松江市立病院のお医者さんは判断したのかといえばそうではないと。すなわち、お医者さんとして診察したんですね。そのときはまだ存命でございましたからね。意識はなかったですけれども、生きておられました。その後、二日後に亡くなられて、島根医科大へ検視に出された。その検視結果が実は外傷性だと、右頭部からの打撲に、何らかの打撲によって外傷性の、外傷性のクモ膜下出血だと。全く違う結果が出てるんですね。

 問題は、なぜその外部の外傷をどうやって受けたかというのがまだ分からない、そこだけでこれは交通事故ではないと言い切っているんですね。私は、その後、遺族の方々が、検視の権威であります、当然皆様方も御存じの東京都の監察医務院長であった上野先生が、その人が、これは単純内因性クモ膜下ではないと、歩行中にスクーターなどの単車と接触して路上に転倒して外傷性クモ膜下出血と考えられると、精査する必要があるというふうに結論付けているんですね、これ。これ二〇〇三年の一月ですよ。要するに、ずっとしっかり見ればだんだん原因がはっきりしてきているんです。ですから、私は、これだけ見てもしっかりともう一度見ていく必要があるんではないかというふうに思います。

 犯罪被害者等基本法というのが制定されたのは御存じだと思うんですね。この小西さんは犯罪被害者とはまだ認定されていません。すなわち、交通事故でないと言っているんですから。私は、あの犯罪被害者等基本法ができた経過というのは、あの桶川のストーカー事件だったんです。あのときも、警察に再三、再三救済を求めに行ったのに、警察は対応してこなかった。そして、彼女は刺されて殺されてしまったんです。私は、警察の対応はやっぱりどっちの立場でまず最初にしていくのかということが大事だと思うんです。私は、全部警察の捜査が間違いやとは言っているんじゃないんですよ。しかし、どの立場でやるのかというのはしっかりとやるべきだと思うんです。

 十二年前のこの事件の当時は、この犯罪被害者等基本法はできていませんでした。そういった問題意識もまだまだ社会の中で醸成されていませんでした。しかし、今、こういった法律ができて、しかもその法律ができた経緯、背景となったのが、実は警察の対応も、初期の対応の問題とかいうのも問題になったことは事実、もう御存じやと思います。そういう意味では、この請願の願意にありますように、遺族にしっかりと納得のいくような公明正大な説明をすることが必要だというふうに私は思っていますので、これはするかせえへんかというのは当然答えられないと思いますから、今日は請願上がってきていますので、今局長おっしゃった回答については私の、質問者としては絶対全く納得できないと、私たちも同じ立場でこの解明について要請をしたいということを申し上げて、この件については取りあえず終わりたいと思っております。

 次に、是非ひとつよろしく対応をお願いを申し上げたいと思うんですが、次に、時間も過ぎてきましたが、せっかく大臣に来ていただいて、ありがとうございます。

 実は私は、さきの国会のこの委員会で南野大臣と幾つか具体的な事案にかかわって考え方をお尋ねしました。それは七月の二十五日のこの委員会でございました。実はそのとき、七月の一日にある事件の判決が出まして、そのことについて聞きました。

 その事件というのが、今年の七月一日、判決が出たのは、実は昨年に、九月にこの犯人が逮捕されたんですが、その数年ほど前から実はこの人が差別的なはがきを全国に、あるいは東京を中心に匿名でまいていたんですね。四百枚を超える差別はがきを出していました。これは、当然マスコミにも取り上げられて、非常に悪質な差別投書だということがありました。その書いていた犯人が実は昨年捕まりまして、検挙されまして、そしてそれの裁判が行われてきたと。で、今年の七月一日に判決が出ました。その判決の結果は、懲役二年という実刑でございました。彼は初犯でありますし、前科もありませんでした。なのに、執行猶予も付かないで、二年間の実刑判決が出た。この事件についてどう思うのかということを南野大臣とやらせていただきました。

 この事件の中身は、ある特定の個人を始め、その差別対象となるところに属している人たち、そういったものに、いわゆる同和問題とか、あるいはハンセン病元患者の方々とか、そういった差別はがきを出していたんですね。部落問題については、部落の当事者五人の名前を名指しをしながら、その人のところはもちろんですが、その人が住んでいる周辺の自治会のところにもずっとまいて、こういうふうな人間を追い出せとか、そういったはがきがもう連日二年近く続いてきたんですね。

 もう一つはハンセン病元患者、すなわち社会の中でも問題になりましたが、あの熊本恵楓園のハンセン病療養所の方々が黒川温泉に宿泊に行ったときに拒否された、それが問題になった。そのハンセン病の人たちのところに、その東京の実在の、今度被害者になった人の名前をかたって、おまえたちハンセン病元患者はハンセン病になった時点で人間ではないんだと、ウジ虫とか虫けらとか単細胞なんだと、そんなところに泊まれるということ自身が問題だというようなはがきを連日出したりしておったんですね。あるいは部落問題も、おまえたちを綾瀬川に沈めてやるとか、えたどもは人間ではないんだとか、そういった差別はがきをずっと四百枚以上、約二年間にわたって送り続けてきた、その犯人が捕まったんですね。私は矯正局の方にも要請しました。矯正局ですから、二年間彼は刑務所に入るわけですが、どんな矯正をするのかということも期待しました。

 そこで、この事件について、もう一つ最後、引き続き、あのときに質疑できなかった点なんですが、この被害者の方をどう救済するのかという問題があります。先ほど言いました犯罪被害者等基本法ができています。当然、この犯罪被害者の方、今取りあえず裁判になって、特定した人は五人でした。この方々をどういうふうに救済をしていくのか、救済の方向についてどうお考えなのか、大臣の方からちょっと考えを聞かしていただきたいと思います。


○国務大臣(南野知惠子君) 本当に、先生が今るる御説明いただきましたが、そういうような悲しい出来事が起こったことは事実でございますし、またその方々の、刑事事件の被害者のみならず、先生が今お話しになられました多くの方々の人権というものについて大変御迷惑を掛けている、そのようなことを痛感いたしております。

 そういうようなことで、そういう方々の問題点が一日も早く解決できるようにということを願っているわけでございまして、そういう在り方ということ、刑に勤めていただいている間にでも、矯正という問題をどのように展開していったらそういうようなことをしないでいい人間に生まれ変わるのかというようなことも、我々の方としてはしっかり努力していかなければならないと思いますが、一日も早くそういうような人権問題がなくなるように、いろいろな範囲での教育問題、広報問題、そういうことは大変必要なことであろうかというふうに思っております。


○松岡徹君 教育とか啓発とかは非常に大事だと思っているんですが、その前に、この五人はこの犯罪による被害者なんです。その被害とは、この五人が被った被害とは何なのかなんですね。それはどうお考えですか。

○国務大臣(南野知惠子君) 被った被害というのは本当に精神的な被害、これはもう先ほどお言葉にもありましたように、人間に対する言葉でないようなことを浴びせられるというようなことについては、これはいかんともし難いことでございますので、そこら辺についても一般の方々の教育ということと同時に、その方たちが立ち直れるような形、またその環境も整備していかなきゃならないと思っております。

○松岡徹君 人間ではないような言葉を浴びせ掛けられたというのは、まああんまりこれはそんなに言わないんですけどね。

 この裁判で争点になったのがまずは脅迫なんですね。殺してやるとか綾瀬川に沈めてやるとかいう、まあこれ実名を書いてね。これ一つ脅迫罪なんですね。もう一つは、この犯人が捕まったときに、あるいは捕まる前からもそうですが、この被害者の方々が告訴していますからね。名誉毀損というのもあります。すなわち、この事件の被害とは何なのか。被害とは何なのかというものをしっかり見なくてはならないと思うんですね。脅迫だけではないと思う。どんな被害を受けたのか。どうですか、もう一度。


○国務大臣(南野知惠子君) 先生御指摘の件でございますけれども、刑事事件の被害者の方々の名誉を傷付けられたということだけではなく、不当な差別的表現を記載したはがきを送り付ける、こういうことによって、直接の被害者のみならず、やはり同和関係の方々、ハンセンの関連の方々、そういうような方々に多大な精神的苦痛を与えたということであります。これらの方々に対する偏見というものをあおりまして人間としての尊厳を傷付けたということで、もう一度繰り返させていただきましたけれども、私としましても、このような差別の問題が一日も早く解決できるように、積極的に人権擁護の問題について努めていかなければならないというふうに思っております。

○松岡徹君 そうですね。今言ったように脅迫というのもありますけれども、同時にその原因になったのは差別というのがあるんですね。

 確かに、この判決文あるいはこの彼が起訴される検察側の論告求刑を見ても、被告人の本件一連の犯行は、被害者らを一方的に差別し、同人らを脅迫、名誉毀損等したものであるから、我が国の憲法が定める重要な原則の一つである法の下の平等を根底から否定するものであり、我が国憲法に対する挑戦ともいうべき悪行である、こういうふうに言うているんですね。こうした差別事件を発生させないよう、一般予防の見地からも厳罰をもって臨む必要がある等々、検察側の論告求刑の中には書いてあります。そして、判決文の中にも、他人の名前をかたるという匿名的な手法で、はがき等にいずれも不当極まりない差別表現を執拗に記載しておりと、こう書いてあるんですね。被告人のこのような犯行の被害に遭い、精神的苦痛を受け、身の不安を感じるなどしているというふうに、すなわち名誉毀損とか脅迫、そして差別というものを非常に問題視して、そして判決も差別であるというふうに規定しているんですね。

 だから、この被告の人たち、すなわち被害者の方々はどんな被害かといえば、今大臣がおっしゃったように、やっぱり差別の被害というのがあるんですね。

 あるいはハンセン病の元患者の人たちに対してもそうです。実はあした小鹿島の裁判の判決の日だと思っています。皆さん方もう御存じだと思いますが、日本が紛れもなく作ったらい予防法によって、ハンセン病にかかった元患者たちは隔離、強制隔離政策を余儀なくされるんですね。もう今からもう百年ほど前の話ですが。そして、九十年にわたる長い間、ハンセン病の元患者の人たちは、あるいはその間に亡くなった人もおられると思いますが、この政策によって、このらい予防法という法律の趣旨に沿って、九十年の長きにわたって隔離されていくんですね。そこには、わざと断種されたり様々な差別的な待遇を受けていくんですね。一つは、このらい病、すなわちハンセン病に対する見識のなさといいますかね、いうのもあったかもしれません。しかし、現実にそれがこの我が国の法律として成っていったんですね。

 そのことをやっと一九九六年の判決で国の誤りを裁判所は認めたんですね。そのときに、小泉総理は上告を断念して、九十年の長いこのハンセン病元患者の人たちの人権を、権利をどう回復するかという立場で今取組が始まっています。しかし、政府がそう決意をしても、私は、おっしゃったように差別というのは簡単にはなくならないです。それに対する手だてをどう打っていくかということが大事になってきます。

 私は、この事件で、被害者はこの五人と言っています。あるいはこれに類する人たち、すなわちハンセン病の元患者の方々は個別的にこの被害者になっていないんです。この被害というのは、差別もあるということからすれば、五人だけではないと思うんですけどね。それはどう考えておられますか。


○国務大臣(南野知惠子君) ハンセンの方々は、今先生がおっしゃったように五人ではない、これはもう当然でございまして、我が国における方々、また、あしたあります小鹿島の方々、そういうような方々も含めてどのような形で見守っていくのか、そのような広い範囲で我々は人権問題というものも考えていかなければならないのではないかなと思っております。
○松岡徹君 ちょっと分かりにくいんですけれども、犯罪の被害を受けた、裁判の結果、被害者というのはこの五人ですけれども、被害者五人ですけれども、しかし、この事件の内容、判決の内容は差別そのものもしっかりと弾劾しているんですね。脅迫とか名誉毀損だけではなくて、差別というものを規定しています。当然この五人は差別によって被害を受けています。この五人は同和地区の人たちですから、当然のように部落差別の被害を受けたというんですね。しかし、この被害を考える場合、この差別はがきの中にハンセン病元患者の人たちもおりました。この人たちの中には今回の事件の被害者には当たらないんですか、当たるんですか。あるいは、部落差別でもこの五人だけが被害者というふうに当たるんですか、当たらないんですか、いかがですか。

○国務大臣(南野知惠子君) 先生おっしゃっていますが、直接の被害者のみならずというのが私どもの考えでございまして、同和関係者やハンセン病の元患者様方々、多大な精神的な苦痛を与えるとともに、これらの方々に対するいわゆる被害的な偏見があったということについても、人間としての尊厳を傷付けないようにするというのが一番大きなポイントでありますので、ただ五人が対象となるというような問題ではないと思います。

○松岡徹君 前も、郵政民営化の法案のときに竹中大臣のお知り合いが政府の広報でIQ軸をやって、郵政民営化の支持を、国民支持を得ようと思えばこの人たちをターゲットにして、しなくてはならないというターゲット戦略を作って、大臣に聞きましたね、聞きました。IQの低い人、その層に郵政民営化のこの大量の啓発紙をまくんだと。その人たちはどうだといったら、IQの高い人はホワイトカラーといいますか、そういうので、低い層といったら主婦と書いてあるんですね。ほんならこれ女性に対する差別ではないのかと、人権侵害ではないのかと南野大臣に、南野大臣も女性ですから、女性としてどないに思いますかと言ったら、もう、いや不愉快やとおっしゃっていました。私もそのとおりだと思います。しかし、人権侵害には当たらないと言うんですね。人権侵害を助長する内容だと言うんです。

 私は、問題なのは、人権侵害かどうかというのは、個人特定、個人に持った、人権というのは個人個人にあるものですから、その個人の持っている人権が侵害されている状況を人権侵害だと言うんだったら、すなわち差別というもの、今回の被害、判決で差別によって被害を被るというのがあります。ハンセン病の元患者の人たちも今なお偏見や、ハンセン病元患者の人たちに対する偏見とか差別がやっぱりありますね。そういったものが背景にあってこの事件が起きていますね。あるいは同和問題もそうですね。同和問題に対する認識がないために、それが背景になって部落差別としてのはがきや事件が起きていますね。

 この差別というものがいかに今後法的にも位置付けられていくかというのが大事なんです。憲法十四条には、私たちはどんな思想信条を含め、人種や男女の違いにかかわらず差別されないと書いてあります。その差別というものの規定というものが非常に大事になってくると思うんですけれども、大臣はどのようにお考えですか。


○国務大臣(南野知惠子君) 先生、今幾つかの項目をお話しになられましたけれども、主婦層はIQが低いというようなかつての御質問等もございましたが、これも直ちに人権侵害と言えるものではないというふうなことを、それで断定できる問題ではないというふうにしておりますが、このような表現というのは、国民が本来持っておられる多様性を無視し、又は一律にIQが高いとか低いとかといって分類したかのような表現、これを使っていることから問題があるものかなというふうに考えておりました。

 これは、仮にこれが行政の遂行に対して、伴って世間に公表されたような場合には偏見あるいは差別的な考え方が広められてしまうというおそれがあると、そういう可能性は否定できないというようなことから人権擁護問題上問題があるというふうに我々は考えたものであります。

 それで、先生、またもう一つのお尋ねで、差別ということについてでございますけれども、これは民事や刑事などの訴訟によりまして救済を図ることが困難な場合もあろうかなというふうには思います。行政による適切な対応が必要となってくる場合があることは先生がもう既にお話しになられたとおりでございます。

 法務省といたしましては、従前から不特定多数の一定の集団に属する方々に対する偏見又は差別、それを助長するような行為について、それがその集団に属する方々の人間としての尊厳を傷付けたり又は一定の集団に対する差別意識を殊更増幅させるというようなことなどから人権擁護の観点から看過し得ないと言われる場合には説示や勧告等を行い、併せて適切な啓発運動を行っていくと、そして適切に対応してまいりたいというふうに思っております。

 そういう意味では、今後とも同様の事案につきましては積極的に取り組んでいきたいと、そのように考えております。


○松岡徹君 説示とか訓示とか、そういうのは今やっている、法務省がやっている、法務局がやっている人権擁護行政の対応なんですね。

 問題は、方法はいろいろあると思うんですよ。あると思うんですが、私が言いたいのは、人権侵害とは何なのかと、あるいは差別とは何なのか、それについて法的にどういうふうに位置付けていくのか、これが極めて大事なこれからの課題だと思うんです。

 一般的に差別はしてはいけないというのはだれもが言います。しかし、こういう形で差別は起きて、それが不利益を被っているということを証明しなかったらそれに対する対応策がないというのは、やっぱりこれは不十分ではないかと思うんですね。

 だからこそ、差別に対して我が国はこうだということをしっかりと言わなあかん。憲法では差別されない、何人も差別されないとは書いていますが、差別してはならないとは書いていません。そして、差別とはこの憲法に保障された基本的人権を侵害する行為であるというような位置付けもありません。やっぱりそういうふうな定義といいますか考え方を定着させていくことが極めて大事な課題になってくると思うんですけれども、大臣、どうお考えですか。


○国務大臣(南野知惠子君) 先生、こういうお心を持っておられると思いますが、同和問題などの解決に向けて法務省は何やるんだというようなことがそのお言葉の根底にあろうかなというふうに思っております。

 そういう観点から申し上げますならば、部落差別等の解消ということにつきましては、憲法に保障された基本的人権にかかわるこれは重要な問題の一つでございます。当省といたしましては、人権啓発活動や人権侵害事件の調査、処理などを通じまして、部落差別の問題を含む各種の人権問題の解決、これに努めてきたところであります。

 部落問題に対するあらゆる差別をなくすためには、積極的にこれは国民に対する啓発活動を実施していくということでございまして、具体的にじゃ何しているんだということが先生のお心にあるというふうに解しましたので、具体的には、人権週間のこれは強調事項の一つとして部落差別をなくそうということを掲げながら、同週間の中心に、年間を通じて街頭啓発、講演会、ポスターの掲出、又はリーフレットなどの配布などを通しながら全国的な啓発活動を続けていくということを我々も行動計画といたしております。


○松岡徹君 ちょっと大分具体性に欠けるんですが、私は差別とは何なのかということを聞いているんですね、具体的なこの事件で。犯罪被害者等基本法ができました。今その基本計画を策定中だというふうに聞いています。当然この五人はその犯罪被害者等基本法の救済対象になると思うんですね。しかし問題は、救済する場合、その犯罪被害の内容が何であるかということを的確につかまなかったら駄目なんですね。だから、この事件のこの五人の被害者という、今のところ五人ですけれども、被害の内容は何かと言えば差別でしょうと、差別も被害の一つでしょう。それがこの五人に限らずに、ハンセン病元患者の人たちや、あるいは部落の人たちや、そういったところもどういうふうにとらえるのかということからすると、差別という定義がないんです、考え方が。差別というものの考え方を、定義をしっかりしていかなくてはならないというふうに思います。

 今のところ、差別が起きればこういうふうに対応しましょうということはあります。しかし、何が差別で、その差別はあってはいいのか悪いのか、その法的な位置付けが不明確だと思うんですが、その辺を明確にしていく必要があると思うんですが、大臣はどう思われますか。


○国務大臣(南野知惠子君) 差別ということもあれなんですが、ついこの前廃案となりました人権擁護法案におきましては、またこれは、人権を害する行為とは、不当な差別や虐待と同等に評価される人権侵害を指すものでありとなっておりまして、民法や刑法等の法律に照らして違反とされる行為と位置付けられるものであるということが、一応定義といいましょうか、そういうものが差別であるというふうに解しております。

○松岡徹君 まだその人権擁護法案は提出されてないんでね、それを議論すると空中戦になってしまうと思いますので、私はずっと避けておったんですよ、それ。ただ、我が党の神本美恵子参議院議員が、参議院の本会議で総理に対する質問をしました。そのときに、総理は大変今までになく積極的な答弁をしていただきました。

 それは、人権救済制度であるが、自民党は今回の総選挙に際し、政権公約において、簡易、迅速、柔軟な救済を行う人権救済制度の確立を公約している、政府・与党内で更に検討を進めて、人権侵害の実効的な救済を図ることを目的とする人権擁護法案をできるだけ早期に提出できるよう努めていきたいというふうに小泉総理が答弁されました。今までにない積極的な答弁だったと思っております。

 当然、この法案は上がってくれば大臣の担当になるんですけどね、なりますから、次の大臣ですかね、しかし、いや、そうではないと思います、南野大臣、法務大臣が担当になりますので、この答弁を受けて担当大臣としてそのような救済法成立についてどう考えておられるのか、お考え聞かせていただきたい。


○国務大臣(南野知惠子君) 本当に小泉総理が力強くおっしゃられたということは、これを担当している省としても大変力強い問題だというふうに考えております。

 法務省といたしましては、簡易、迅速、柔軟な救済を行う人権救済制度を確立しまして、人権侵害被害者の実効的な救済を図るということを目的とする人権擁護法案は是非とも必要な法案であるというふうに考えております。先生も一緒だというふうに思っておりますので、今後も我々が目指す法案をできるだけ早く提出できるように努めてまいりたい、そのように思って法務省としては思っております。


○松岡徹君 その力強い決意をしていただきました南野大臣、これからも是非大臣としておってほしいなとは思うんですが、その部分だけでは。

 ただ、この間非常に懸念していることがございます。先ほど言いましたように、差別とは何なのか、人権侵害とは何なのかということをやっぱりしっかりと定義を明らかにしていく必要があると思います。

 先ほど大臣答えられたように、差別とは何かといえば、前に提出された人権擁護法案の中にある不当な差別、虐待。その不当な差別とは何なのか、その定義は何なのか。やっぱり憲法に書かれている基本的人権条項の中の人権というもののとらえ方。そしてもう一つ、国際条約に、我が国は国際人権条約に幾つか批准しています。女性差別撤廃条約を批准し、そして男女共同参画基本法を策定しました。子どもの権利条約、障害者のための様々な国際条約も批准しました。人種差別撤廃条約も日本は批准をしました。そこに定義付けられている国際的な人権侵害の定義あるいは不当な差別の定義というものが当然書かれています。

 私たちは当然のように、その批准し署名した国際人権諸条約に規定されている人権基準というものをどう実現していくかということが国内における責務だというふうに思います。今回の人権擁護救済法が早期に制定されていくときに、一方で人権の定義があいまいだという議論だけでこの法案の廃案を求めるような声は極めて私は無責任な声だというふうに思います。

 むしろ、積極的にその定義を明らかにしていく、そのときの基準が、国内の憲法に書かれている人権、そして国際的な人権基準に記されている人権の定義を国内化していくということが大事な課題だと思いますが、大臣にその辺の考え方をお聞かせいただきたいと思います。


○国務大臣(南野知惠子君) 先ほどもお話が出たかと思いますけれども、やはりその定義があいまいだというようなお話も出されたと思っておりますが、私は定義があいまいだったとは思っていないわけでございます。

 いずれにいたしましても、現に障害者や同和関係者等に対する差別又は児童や高齢者に対する虐待などの様々な人権侵害が繰り返されております。このような差別や虐待で苦しんでおられる人々に簡易、迅速、柔軟な手続で積極的に救済する制度を早期に整備する必要があると考えております。

 廃案となりました人権擁護法案はこのような新しい人権救済制度を創設するための法案でもあり、是非とも必要な法案であるというふうに思っております。これが提案されましたならば、どうぞ十分な御審議をいただきますようにお願いしたいと思います。


○松岡徹君 時間が参りました。是非とも、また今後ともよろしくお願い申し上げたいと思います。

 終わります。

参議院議員 松岡とおる 国会議事録