○松岡徹君 民主党の松岡でございます。
今ちょっと議論があって、定足数に足りるのかどうかという話がちょっとありまして、調べたら、確認を今しているところでありますけれども、オーケーだということでありますので、質問に入りたいと思います。
まず、一昨日、私も府中刑務所の方、そして府中警察の視察さしていただきまして、大変いろいろとお世話になりました。ありがとうございました。
本当に現場の実態というのをいろいろと見せていただきました。特に、府中刑務所の所長を中心に、いろいろと刑務所内の実態を見せていただきました。大変難しいところ、現場の苦労というものが分かってきたわけでありますが、今回の立法の趣旨でありますところによりますと、受刑者あるいは被収容者の処遇の改善というのがありますね。そういう意味では、刑務官や職員の皆さんの大変さというのは分かりますけれども、一方で、問題になっている被収容者の処遇の改善の課題というものが、あれを見ただけで十分かといえば、決して十分ではないというふうに思うんですね。すなわち、被収容者の方たちの生の声が伝わってこないという。したがって、その辺はちょっと不満が残りましたけれども、それはなかなか簡単には伝わらないというのもよく分かった上でございますけれども、大変な勉強をさしていただきました。
そこで、私の方から、今回の法改正、立法につきましては、先ほどからありますように、名古屋刑務所事件が一つの大きな発端になったこともありますけれども、行刑改革会議の提言の中でもあります。特に、現在の監獄法というのが百年近く放置されてきて、実質的な改正がされることなく今日に至っている、そのため、被収容者の権利義務関係や職員の権限が明確ではない、受刑者処遇の内容についても十分な規定が設けられていない、今日では極めて不十分なものになっているということであります。
それで、そこで職員の権利とか、あるいは権利義務の問題とかいうところがありますが、大きく分けて職員の側の権限といいますか権利といいますか、そういったところをまず最初に聞きたいんですが。
一つは、今回の立法でもありますが、今までも指摘されていた担当制の問題なんですね。職員の方の担当制の問題なんです。担当制自身非常に、規定自身が非常にあいまいであったということもありまして、その先端であります担当者の恣意的なものが働いて処遇に不具合があったりとかいうものが起きてきたということであります。ある意味では、名古屋刑務所事件の背景もこの担当制というものが大きな原因になっていたんではないかというふうに思うんですね。
今回も、担当制についてはその辺のことを指摘しながら残すということになっているんですけれども、先日の委員会の質疑の中にもありました、担当制の良いところは残して、悪いところといいますか、欠陥のところは直していこうということなんですが、改めてどういうふうな対応でしていこうとするのかというのをちょっとお聞かせいただけますか。
○政府参考人(横田尤孝君) お答え申し上げます。
先般、委員にも府中刑務所を御視察いただきましたので、ちょっとイメージお持ちいただくかと思いますけれども、担当制と申しますのは、各工場を担当する職員が、その受け持つ受刑者を個別指導しながら集団を管理する、そういう処遇体制でございます。
これにつきましては、受刑者の心情を把握し、個別的な相談を実施するなどして、職員と受刑者との人間関係を基礎とした処遇を可能とする一方、担当職員の裁量が大きく、恣意的に運用されるおそれがあるなどの問題がありまして、当局といたしましても、その弊害を防ぐための措置を講じる必要があると考えております。
その方策でございますが、受刑者の処遇を担当職員に任せきりにするのではなく、処遇が工場によって区々にわたらないよう所内指示を発出するなど、適切な範囲で組織的に処遇の統一を図ったり、また、担当職員の上司である主任矯正処遇官や統括矯正処遇官等が十分に監督し、あるいはバックアップする体制を整えるよう当局から指導しておりますほか、行刑施設の心理技官を増配置いたしまして、積極的に処遇に関与させることにより担当職員をサポートさせたり、受刑者の心情安定や所内の生活適応上の問題解決等を目的とした民間カウンセラーの導入を図っております。さらに、可能な場合には担当職員を複数配置するなどの対応を進めるなどしておりまして、こうしたサポート体制やチェック体制を構築することによって、担当職員を孤立させず、組織的対応を図り、恣意的な運営がなされないよう十分意を用いてまいりたいと考えております。
○松岡徹君 担当制のいいところというのは、血の通ったといいますか、そういう対応、処遇ができていくんではないかということなんですが、そういう意味では、それぞれの受刑者の状況を的確に把握するという意味でも大事なものだと思うんですけれども、それが恣意的なところで使われないようにしなくてはならないという反省なんですね。そのための体制として組織的対応をしていこうということが前にも述べられました。そのこと自身は私たちも評価をしたいと思うんですけれども、全職員の中で刑務官を担当し、それぞれの刑務官が受刑者の担当をしていくといったときなんですが。
そこで、第六十六条に「優遇措置」というのがあるんですね。新しくあれなんですけれども、受刑者の改善更生の意欲を喚起するために、次に掲げる処遇について、法務省令で定めるところにより、一定の期間ごとの受刑態度の評価に応じた優遇措置を講ずるというふうになっています。この「受刑態度の評価に応じた優遇措置」というのがあるんですね。この優遇措置の評価の基準といいますかは、例えば担当制、担当者が、刑務官が、この受刑者はここの六十六条に規定されている受刑態度がいい、悪いというような評価、これは評価基準というのがあるんですか。
○政府参考人(横田尤孝君) お答えいたします。
現在、評価基準というものは定めておりません。この法案ができまして、法務省令で定めるところによりとなっておりますので、これから法務省令また決めることになりますけれども、おっしゃいますように、優遇措置の評価が恣意的なものになりますと、これは受刑者に不公平感を抱かせたり受刑者を管理するための制度であると誤った認識を植え付けまして、これは改善更生の意欲を失わせることになりかねません。そして、ひいては職員に対する不信感を抱きかねません。
したがいまして、できる限り客観的な指標、例えば考えられますのは、作業成績であるとかあるいは懲罰を受けた回数だとか、そういった客観的な指標を用いるなどいたしまして、公正な評価基準を定めるという予定であると、予定でございます。失礼しました。
○松岡徹君 私も余り詳しいことは分かりませんが、以前は、行刑の累進処遇令というのがあってね、それで、三級から二級とか四級とか評価されていくんですね。それによって面会の回数だとか物品の差し入れ支給の回数だとかが変わってくるんですね。そういう意味では改善更生の意欲をそぐかそがないか、まあまあ大事だと思うんですね。しかし、そういう受刑者の評価をするときに、非常にあいまいな、四級から三級になる、それが評価が高まっていくことになるのかちょっと分かりませんが、それが担当制のところで恣意的に使われていくということが間々あったんではないかということが今までも指摘されてきたんですね。
今回、そういう意味では、担当制というもののいいところを残しながら、そういう悪いところをどう改善していくのか、克服するのかというところでありますから、特にその評価の仕方ですね、最先端の現場でありますから、個々の受刑者の評価を与えるときにまたぞろ恣意的に運用されることのないような客観的なそういう評価基準といいますか、というものをしっかりと作らなくてはならないと思っておりますので、それは是非ともお願いを申し上げたいと思うんですけれども。
ちなみに、今度、山口でやるあのPFIの方式ですね、民間へ委託するという部分で、この担当制、あるいは民間のPFIで移管する内容、民間にもそういう評価基準といいますか、処遇の判断とか、そういうようなところまで民間のところに移管するということになるんですか、ちなみに。
○政府参考人(横田尤孝君) ただいまの点でございますけれども、現在私ども考えておりますのは、こういう権力的なあるいは処分的行為というのはこれは全部国に留保されますので、そういった評価のようなものについて民間の者にさせるということは、これは全くございません。
○松岡徹君 ちょっと心配で聞かせていただきました。
それで、職員の資質といいますか教育の問題なんですが、それぞれ担当制と組織的対応をしていこうということでありますが、今回の法律の趣旨にもありますように、矯正処遇という、それぞれ細かなことはありますが、職員の教育というものが非常に大事になってくると思うんですね。矯正処遇の内容もそれぞれありますけれども、職員に対する教育のプログラムといいますかあるいは計画といいますか、それはどういうふうになっておりますか。
○国務大臣(南野知惠子君) 刑務官に対しましては従前から人権に関する研修を実施してきたところでございます。しかし、行刑改革会議の提言を踏まえまして、平成十四年度以降、中間監督者に対する人権教育のための研修を毎年実施いたしております。さらに、平成十六年度からは民間プログラムによります人権研修を導入いたしまして、実務に即した行動科学的な研修を行っているほか、刑務官が被収容者の立場に立って感じ、又は考える機会を与えるというそのためには、今も行っておりますロールプレーイングの研修教材を作成したり、また各施設で教材等を活用した自己研修、そういったものを実施しながら効果を上げていこうとしているところでございます。
今後とも、これらの研修を充実させていきたいということで、人権意識の改革にも努めてまいりたいと思っております。
○松岡徹君 特に矯正教育の中身ですね、矯正教育をだれがするのか。専門官、専門官を時によっては、内容によっては矯正教育の指導者として雇い入れるとか、あるいは指導に入っていただくというようなことも考えておられると思うんですね。当然それは、今までにない新たな更生改善、社会復帰への自立へ向けた教育でもあるわけですね。極めて専門的になります。先ほどもありましたように、性犯罪者に対して再犯をさせないためにどこまで矯正行政ができるのか、矯正教育ができるのか、刑務所の中で、ということもこれは極めて専門的なジャンルにもなってこようかと思うんです。そういったこと、今まで以上に、行刑施設あるいは責務の中に矯正処遇あるいは矯正教育という側面が今まで以上に強調されて、重要性を増しています。
そういった意味で、その内容は、まだまだ矯正教育なり矯正行政の内容が精査していかなくてはならないし、あるいはより専門的なものをプログラムとして明らかにしていく課題はあろうかと思います。しかし、そういうことが責務として行刑行政の中であるとするならば、そこに勤める職員がその使命あるいは内容というものをしっかりと頭にインプットして、自らの責務として、職責として理解をしていかなくてはならないと思うんですね。同時に、人権という視点でもあります。
そういうときに、専門官だけに任すということではないと思うんですが、職員がその矯正行政の一部を担っていくということもあり得るわけですね、もちろん。それはどうですか。
○政府参考人(横田尤孝君) 正にこの処遇につきましては、職員が基本的にはその中心となって担っていくわけでございます。
○松岡徹君 だからこそ、職員の教育、自らの資質を高めていくと。単に管理という責務だけではなくて、より中身が専門的、あるいは時にはそういった勉強もしなくてはならないということであります。私は、職員の方にやっぱりそういう機会、研修なり自らのそういう技術を、技能を高めていくような機会をやっぱりきちっと保障していくべきだと思うんですね。したがって、それがなぜ法律の条文の中に書き込めていないのか、しっかりと。職員の資質、教育、研修のための規定というものをしっかりと入れるべきだと思うんですけれども、それが入っていないというように思います。是非、法律上に明記された研修義務といいますか、というものをしていかなくてならないというふうに考えています。
いずれにしましても、職員の資質、教育についてそういう問題意識を持っておりまして、これからの研修内容もそれに合わせた充実したものを作成していただける、是非とも作っていただくように、一つはこれ要望だけにしておきたいと思います。
次に、刑事施設の視察委員会というのが新しく今回設置されるということであります。その構成とか権限、改めてお聞かせいただきたいというふうに思います。
○政府参考人(横田尤孝君) お答え申し上げます。
刑事施設視察委員会につきましては法案の第七条以下に定めてございまして、構成といたしましては、この八条にございますけれども、「委員会は、委員十人以内で組織する。」とされております。
それから、その権限と申しますか、これは第七条の二項でございますが、「委員会は、その置かれた刑事施設を視察し、その運営に関し、刑事施設の長に対して意見を述べるものとする。」ということになっております。
以上でございます。
○松岡徹君 この監視委員会というのが、要するに開かれた刑務所といいますか、もっと公表していこうと、国民にですね、どんなことがされているのかということを、透明性のある運営をしていこうという意味だと思うんですね。
同時に、刑務所内における様々な問題についてもしっかりとその監視委員会に報告をしていくものだと思うんですけれども、例えば名古屋刑務所事件のように受刑者が死亡したとき、そういう事故が起きたとき、事件が起きたとき、その死因の究明とかいうのはこの委員会はできるわけですか、そういう場合は。
○政府参考人(横田尤孝君) お答えいたします。
まず、その被収容者の死亡につきましてですが、このような場合、その死因に疑念を生じさせないために、現在、行刑改革会議の提言にも沿って、まずは行刑施設の長において研修を行い、およそ変死の疑いが残るような場合には検察官及び警察署に通報し、検察官等において司法検視や司法解剖等を行って死因を明らかにする手続が行われているところでございます。個々の被収容者の死因は、まずはこのような手続によって明らかにすれば足り、またそれが適当であると考えております。
他方、刑事施設視察委員会は、刑事施設を視察し、その運営に関し刑事施設の長に対して意見を述べるものでございます。これは先ほど述べたとおりでございます。で、その事務は事項的に施設の運営全般に及んでおります。したがいまして、委員会は、被収容者の健康を保持するための行刑施設の運営の状況について意見を述べるために必要がある場合には、刑事施設の長に対し死因に関する必要な情報の提供を求めるなどして調査を行うことが可能であります。
○松岡徹君 そういう意味では、今までとは違うこういう委員会が設置されることについては評価をしていきたいと思いますけれども、この委員の十名ですね、どういう人たちが選ばれていくのかというふうに思うんですけれども、その辺はどんなことを考えておられますか。
○政府参考人(横田尤孝君) 委員につきましては、地域の市民だけではなくて弁護士等の法律関係者、それから医師、地方公共団体の職員などを含めるということを今考えております。
○松岡徹君 大体そういうような答えが返ってくると思うんですけれども、この監視委員会、この法律の中にある処遇、受刑者の処遇の改善でありますとか、あるいは人権に配慮してということもあります。そういったことも頭に入れて委員の選任の枠をしっかりと検討していただきたいというふうにお願いを申し上げておきます。
それから次に、一方の被収容者の権利義務を明確にしていこうということでありまして、その点について幾つかお聞かせいただきたいと思いますが。
被収容者の権利義務、行刑改革の提言の中には、受刑者処遇の在り方の基本として、受刑者処遇の改革が最も重要な課題であると、そのためには職員全体の意識改革が不可欠、そして受刑者の人権が十分に尊重されるものでなければならないというふうに指摘がされています。そして、現行の監獄法は受刑者の権利義務について明確に意識されていなかった時代に制定されたものであることから、受刑者の権利義務及びこれに対する職員の権限を律する上で十分な規定を設けているとは言い難いということで現状を指摘をしています。それから、受刑者の権利義務を明確にすることによってその人権保障を十全なものとするとともに、職員の職務権限の内容及び限界を明確なものとすることが必要である、そのためには基本となる監獄法を抜本的に改正することが必要であると、こういうふうに言われています。こういった問題意識の中で、この被収容者の権利義務のところであります。
そこで一つ目ですが、先日も府中刑務所を視察さしていただきました。すなわち、過剰収容というのは、収容者の居住環境というものが適切に守られているのかということですね。そういう意味では、これも一つはしっかりと改善をしていかなくてはならない課題だと思います。
今、全国の収容率が一〇〇%を超えて約一一八%いうことで、そのうち、全国七十四か所ある施設のうち、一三〇%を超えるのが八か所あるというように聞いております。この過剰収容の改善は、この法律の中にあります受刑者の権利義務、とりわけ居住環境の整備ということにとっては非常に大事な喫緊の課題だというように思うんですが、この過剰収容の改善についてどういうふうに考えられておるのか、簡単に今の考え方をお教え願えますか。
○政府参考人(横田尤孝君) お答え申し上げます。
刑務所等の収容人員は、平成十年以降、急激な増加が継続しております。特に受刑者等の既決被収容者にありましては、平成十六年末現在、これ今委員御指摘のように約六万四千九百人おりまして、収容率にしますと約一一八%ということで、その収容状況、一段と厳しくなっております。
これまで過剰収容状態の解消のために刑務所等の収容棟の増築工事等による収容能力の拡大を図ってきておりまして、平成十六年度も約六千人分の収容能力増強のための工事を行ってまいりましたほか、平成十六年度の補正予算及び本年度、平成十七年度予算におきましても、PFI手法を活用した刑務所の整備を含め、刑務所等の収容能力を七千三百人以上増強することとしておりまして、これらが完成した暁には過剰収容状態の緩和に大きく役立つものと期待しているところでございます。
で、過剰収容状態が緩和された場合には、緊張感や圧迫感からくる受刑者のストレスが軽減される上、受刑者の特性に応じた分類処遇の適切な運用が図りやすくなるなど受刑者の処遇環境が改善されますことから、この法案の目的の一つである改善更生及び円滑な社会復帰のための受刑者処遇の充実が期待できるものと考えております。
しかしながら、最近の犯罪情勢等から見ますと、刑務所等の収容状態は依然として厳しい状態が続くものと予想されますことから、今後とも、収容能力の拡充を始めとして、必要な人的、物的体制の充実に努めてまいりたいと考えております。
○松岡徹君 過剰収容の状態が、こんな状態は良くないというのは分かっているんですね。分かっていながら、この状態をどういうふうに改善しようとしているのかという全体像いうか先行きがなかなか見えないんです。理念が見えない。どう考えておられるのかというのが見えないんです。ですから、山口で今度PFIで初めてやるけれども、それで本当に何年後にはこの過剰収容をこういうふうに改善しましょうということになるのかどうか、具体的な計画が示されていないんですね。一体この過剰収容状態は何年続くのかと。こんな状態で、ここで、この法律に書いてある処遇改善が果たせるのかどうか、まず入口の段階でもう大変難しいんですね。せめて、その先行きを、しっかりと展望を具体的な数字、根拠で明らかにすべきだと思うんですね。
一方で、情勢としては犯罪が増加傾向にあると言われています。犯罪が減少傾向にあって、そして当面、山口にああいうPFIの収容施設を新しく建てて解消していくということは分かるんですけれども、一方で犯罪が増加傾向にあって、再犯率もどんどんどんどん高くなって、今の一一八%の過剰収容の状態というものが果たしてこれで一体何年後に改善されるのかというふうに思うんですけれども、その少なくとも展望を具体的に明らかにすべきではないかと思うんですけれども、大臣どう思われます。
○国務大臣(南野知惠子君) 我々も、そのような展望が開ければ一番いいんですけれども、大変難しい課題を抱えていると思います。
犯罪を抑止していきたいという観点があり、それをどのように抑止していけば少しは下降ぎみになってくれるのか、これも希望的観測でありますが、今の統計から見ていくと増える可能性があると。といって、片やお金がないですけれども、箱ばっかり造っていった場合に、それが減ったときにどうなるのか。そこら辺のバランスは、何年をめどにどうするのかというのは、本当に先生、何かアイデアがあったら教えていただきたいと思うぐらいでございます。
○松岡徹君 一生懸命考えてアイデア出すようにします。
○国務大臣(南野知惠子君) お願いいたします。
○松岡徹君 是非また、あれですが、確かに一番大事な喫緊の課題が過剰収容をどう改善するのかということだと思うんですね。それは、問題は、一方である矯正行政の課題でもあります処遇の改善の中で、今までもそうであったんですが、単独室という、原則単独室というものがあったと思うんですね。単に箱物を増やすという人数だけではなしに、もう一方の中身なんですね。この法律自身、監獄法自身が非常に百年近い昔の法律であるけれども、今ある七十四の行刑施設の中でも相当古いものもあります。
しかし、今日、行刑施設の中の基本としては、一九八〇年の法制審議会でもあります。そこで、監獄法改正の骨子となる要綱にも定められているんですね。単独室原則というものがあるんです。この単独室原則、元々その刑事施設法案の中には、受刑者の居室は、その者の矯正処遇の実施上共同室を適当とする場合その他の法令、省令で定める場合を省き単独室とするとされていたんですね。今回の法律にはそのことが書かれていないんですね。これ、なぜ削除されているのか。
○国務大臣(南野知惠子君) これは私の考えですけれども、これには歴史的な背景があるのではないかなと。昔だったら、悪いことをした人は閉じ込めておく、個室に置いておく、そしてその孤独感を味わわせて改悛するというようなことも一つの方法であった。みんな一人になるのは嫌だという観念が、これ明治時代にあったのかどうか分かりませんが、一人にさせられる寂しさというのがあっただろうと思いますが、最近は一人になりたいんですね。逆に、大勢と共同生活することが不得意である人たちが増えてきているということも背景にあるのかなと思います。これは私の考えでございますが、受刑者のプライバシーなどに対する配慮から、その居室は基本的に単独室とすることが望ましい、これは現代の考えであるというふうに思います。
しかし、現在の施設の状況の下においては、もう先生からもいろいろアイデアをいただきたいと思っているところでございますが、単独室収容を原則とするということは、これは今すぐせよといっても難しい状況にございます。しかし、単独室収容を原則とするということは、これは不可能であるということを心得た上でありますけれども、目標として掲げていくにしても、余りにも現実と乖離しているのかなというふうにも思います。そういう内容がございます。
刑事施設の長に義務付けることで、この施設を預かるあなたはちゃんと単独の個室に入れなきゃ駄目よということは私たちの方からは申し上げにくい、そういう事実、現状にありますので、これを義務付ける法規範として規定することは、これはちょっと今適当ではないのではないかなというふうに思っております。いいアイデアがあれば、また教えていただきたいと思います。
○松岡徹君 私も、今すぐすべての行刑施設を単独室にしなさいと言っているんではなくて、要するに、矯正処遇、矯正行政、教育をしていこうと、社会復帰なりをさせていくためにも、単独室というものは極めて受刑者の人権にも配慮することでもあるし、その多数の、閉じ込められて狭いところで多人数で生活をするというよりも、しっかりと分けた方がいいだろうというようなことは、その矯正行政なりの観点からも非常に効果的といいますか、大事な課題なんですね。
ですから、物理的に今どうの、可能か可能でないかということではなくて、こういう議論がされてきているんだからこそ単独室という環境をどう整えていくか。これは、イコール矯正行政、矯正教育の内容と私は連動していっているというように思うんですね。それが法規定の中になくなっていくというのは、ちょっと余りにもお金と、現状でいいアイデアが浮かばないから抜けたんじゃないかというふうに思うんですね。今すぐしろということではなくて、大臣、やっぱり単独室というのは望ましいというのは、日本はもとより、世界でもそういう議論がされてきているということはもう御存じだと思います。そういう環境をどう整えていくかということが同時に使命でもありますから、そのことを今回の法規定から省くということではなくて、せめてそういったことを展望しながら施設整備の方向を明らかにしていくということが私は大事ではないかというように思うんです。
ですから、今すぐ変えろと、これは無理です。この間、府中刑務所へ行って、そのとおりです。六人のところを八人、ベッドを置いて、ベッドの下に三人が足、横に突っ込んで寝るという状態、あるいは元々個室であったはずが、そこに二人寝ている状態ということであります。そういう意味では、今の現状については、とてもやないけれども物理的に単独室を整備するいうことは今すぐは無理だというふうには思いますが、その望ましい単独室の考え方というものをどこかで表すべきだと思うんですけれども、どうです、大臣。
○国務大臣(南野知惠子君) このたび御審議いただき、この法案が通った暁には、それが百年間持続するとは考えられませんので、そういう、また見直すということもできるだろうと思いますが、今作る法案の中で、それを法規範として規定するということが少し難しいということでございます。
○松岡徹君 今、難しいのはよう分かっているんです。だけど、この法律立法するときにしっかりと高らかに被収容者の人権なりあるいは処遇改善を言っているわけでありますから、その人権の尊重と処遇の改善、それは施設の居住という環境からすれば単独室が望ましいという展望は持っておくべきだというふうに私は申し上げているんです。今、現状が無理だ、どうなのかということで私は大臣の答弁を求めているんではなくて、この立法の趣旨からすれば、それはどこかにあぶったら出てくるようなのではなくて、ちゃんと明記してほしいなというふうに思います。
ちょっと、こればかり言っていたらあれなんですけれども、その趣旨は理解していただいたというふうに思っておりますので、引き続きまた議論もしていきたいというふうに思っております。
それから、次の被収容者の処遇の改善の課題でありますが、一昨日も府中刑務所へ行きました。高齢者受刑者が非常に増加しているという状況であります。たまたま私どもの委員会の委員長は足を悪くされておられまして、一緒に行ったときに車いすで、バリアフリーになっているところとなっていないところとありますね。
この高齢受刑者の今の状況を簡単にちょっと教えていただきたいと思うんですが、この高齢受刑者の問題で、どんな課題、状況とどんな課題があるのかというのをちょっと簡単に聞かせていただけますか。
○政府参考人(横田尤孝君) お答えいたします。
高齢者の状況ですけれども、ちょっと今正確な数字持っていませんけれども、ざっとした数字で申し上げますと、六十歳以上の受刑者を便宜上高齢受刑者と呼んでおりますけれども、大体一割近くが、日本の受刑者の一割近くが今そういう年齢に達しているということでございます。
そういう受刑者につきましては、そういう年齢のこともございまして、健康上の問題がまずございます。それから、出所後の帰住調整の障害などがございます。もうそのくらいになりますとなかなか引受手がない、引取り手がない、家に帰るところもないといったような人たちも相当数ございます。そういったことで、なかなか改善更生、社会復帰に当たって様々な問題がございます。
そこで、行刑施設では、そうした高齢受刑者の特殊性に配慮した処遇を行っておりまして、特に再犯防止のための教育的処遇といたしましては、平成十六年の四月現在でございますが、十二の施設で類型別の指導として高齢受刑者指導というものを行っております。
その具体的な内容でございますけれども、施設によって異なりますけれども、おおむね三―六か月を一クール、月に一、二回程度の頻度で健康管理や出所後の生活設計、福祉制度等を指導のテーマとして実施しております。高齢受刑者が健康的な身体と精神的な充実感を維持しながら改善更生に向けて意欲的に取り組むよう、そういう配意をしているところでございます。
○松岡徹君 高齢受刑者が増えているということと、同時に、この高齢受刑者に対する対応も、一般の元気なというか、若い層の受刑者と当然違う対応というのも求められてくると思います。そういう意味ではまだまだこれからだと思いますけれども、しっかりとその辺の検討もお願いを申し上げたいと思いますが、併せてもう一つ、女性の受刑者の処遇のところを聞きたいんですね。
今回の法改正のところで女性に対する、じゃ、法律のところに、女性に対する処遇の特段の配慮といいますかね、いう項目が余りないんですね。身体検査とかそういうときは女性刑務官がやるとかいう程度は書いてありますけれども、ないんです。
今年の一月でしたか、以前もそうですけれども、名古屋の刑務所で、名古屋の豊橋支所ですね、豊橋刑務支所で、そこの看守部長が、そこに、被収容者である女性を妊娠させたという事件があったのは御存じだと思うんですね。その男性刑務官、部長でありますけれども、四十六歳ですね。看守部長ですね、看守部長、小戸森容疑者ですね、逮捕されました。この一月にその判決が出たというふうに聞いております。その判決結果というの分かりますか。
○政府参考人(横田尤孝君) お答えいたします。
本年の一月十三日に、この本人に対しまして懲役三年の実刑判決が言い渡されました。そして、この判決は一月の二十八日に確定しております。
○松岡徹君 この事件は、その名古屋刑務所豊橋刑務支所の中で起きたことなんですね。懲役三年の判決が出ました。女性受刑者が看守部長、当時の看守部長に暴行されたということで、妊娠までしたんですね。分かったのは、その女性が別の支所に移されたときに妊娠していたというのが発覚して、どこで妊娠したんやということになって、実は豊橋支所でそういうことを受けていたということなんですね。その当時、矯正局の方も、あるいはこの容疑者も、これは同意の上だと言っていたんです、同意。片や受刑者で、片や看守部長ですよ。これで同意だと言うんです。これはあり得ない。しかも、女性受刑者が収容されているところになぜ男の看守部長がこういう形で平気でやるのか。
すなわち、この事件に象徴されるように、女性受刑者に対する処遇の現状どうなっているのか。この事件は私は氷山の一角だと思うんです。それ以外でも、全国の施設の中でセクハラにかかわる事件というのは何件ぐらいありました。
○政府参考人(横田尤孝君) 全国で何件くらいかという統計的なものを、ちょっと今手元にございませんけれども、委員が御指摘の豊橋刑務支所の事件を始めとしまして、残念ながら何件か複数、そういったいわゆるセクシュアル・ハラスメントといいますか、そういう事案、事件があることは事実でございます。
○松岡徹君 何件かいうので具体的には数字分からないんですね。
○政府参考人(横田尤孝君) 申し上げます。
これは数字確認すれば取れますけれども、現時点、私、今手元に持っていないという趣旨でございます。
○松岡徹君 女性の受刑者に対して、あるいはそれにかかわる事件で先ほど申し上げたような事件が象徴的に現れました。これは当然、その刑務所の中では、刑務官あるいは職員の方と受刑者との関係というのは、これははっきりしているわけですね。その力関係を利用してこういった事件が起きた。
これは、一つは、その職員の資質の問題なんですね。女性に対するセクハラに対する認識というものが足らないんではないか。先ほど言いました、冒頭に、職員の研修とか資質をどう高めるかというのは非常に大事だと思いますね。同時に、もう一つは、今回の事件が示しているように、結局、その担当者といいますか、女性受刑者に対する処遇が非常にあいまいだからこういうことが起きたんではないかと思うんです。
この事件が起きて、判決、懲役三年出ました。これを起こした小戸森が一人が悪いのか、そうではなくて、矯正局としてはどう思っているのか、どう受け止めているのか。いかがですか。
○政府参考人(横田尤孝君) お答え申し上げます。
ただいま御指摘のような事実がありましたことにつきましては、矯正当局といたしましては、本当にこれ弁解の余地がない、誠に遺憾なことであるというふうに思っております。
それにつきましては、これは独り職員の、個々の職員の資質の問題といったことで片付けていいものでは決してございませんで、やはりそういった一種の研修といったものが必要でしょうし、もう一つはやっぱり、物理的な意味でそういう事件あるいは事案が発生しないような、そういう体制もやっぱりつくらなければいけないというふうに考えております。
私どもは、特に昨年のその豊橋刑務支所の事件につきましては、深刻に、重大に受け止めております。そこで、直ちに幾つかの改善措置といいますか、対策というものを講じましたので、それについてちょっと触れさせていただきたいんですが、よろしゅうございましょうか。
私たちは、その直後に局長通達などを発しまして、一つは、女区の居室の本錠かぎと私ども呼んでおりますけれども、これは居室の扉のかぎですけれども、それの管理方法が不十分であったということが、それゆえに、そのかぎを用いて女性が入っている舎房にこの男子職員が入ったということができますので、そういったかぎの管理方法についてまずきちんと見直すこと。
それから、男子職員による女子被収容者に対する面接の方法につきまして、これが、必ず複数にするとか、あるいは外から、外からというか、ほかの者から見えるような形にするとか、そういうこともいたします。それから、幹部職員が常に巡回をして回ると、特に女区については。そういったことについて詳細な勤務要領というものを指示いたしました。それからもう一つは、女区の廊下の勤務状況を録画するための機器の整備もいたしました。
そしてさらに、この豊橋のケースもそうなんですが、やっぱり女子の刑務官が足りないと、どうしても男性の職員がそういう女区に入っていくということがございましたので、やはりこれは女子刑務官の配置をきちっとしなければいけないということで、女子刑務官の配置の拡大、適正をいたしました。
それからさらに、元に戻りますけれども、やはり適正な処遇を維持していくためのやっぱり職員の研修、これはもう意識の問題ございますし、そういった点も含めて、そういった研修の充実などの対策を講じているところでございます。
○松岡徹君 この事件で対応したのが、管理業務を強化していくというんですか、その辺を取りあえずビデオカメラを設置する。だれに向けてビデオカメラ設置しているんや。職員に向けてですか。情けない話ですね、これ。そんなことで金使うよりも、そういう職員が出ないように職員の資質をどう高めていくかということにもっと重きを置かなあかんし、今、最後におっしゃったように、要するに人の配置の問題なんですね。
その前に前提としては、女性受刑者に対する待遇あるいは処遇の仕方はどうあるべきかというマニュアルがやっぱり見えてこないんですよ、見えてこない。そんな、そういうマニュアルはあるんですか。
○政府参考人(横田尤孝君) 一般的には、女子の被収容者に対する処遇についてのマニュアル、例えば複数対応とか、そういったものについてはございます。
○松岡徹君 それと、女性の受刑者も最近増加の傾向にあるということでありますけれども、その女性受刑者の対応について女性職員を増やしていかなあかんということですけれども、全体の女性の受刑者が何人ぐらいで、そして、女性の職員というのは一体何人ぐらいおるんですか。
○政府参考人(横田尤孝君) 申し訳ございません。遅くなりました。
これちょっと古い数字なんで申し訳ありませんけれども、平成十五年末の行刑施設の年末収容人員というのがございまして、これですと三千人くらい、現在もそれより少し多いくらいかと思いますけれども、三千人台ということで。
それから、女子の刑務官でございますが、行刑施設の職員は約一万七千人おります。そのうち女性の刑務官が約九百五十人おりまして、主として女子の施設、女子の収容施設に配置しております。
○松岡徹君 今聞かせていただきましたように、今回の処遇の問題で、女性に対する処遇の在り方というものがやっぱりちょっと極めて見えにくいし、こういった事件を考えますと、そういったマニュアルなりそういう処遇の内容をはっきりさせていく必要があるんではないかというふうに思いますね。単に女性刑務官を増やせばいいということではなくて、全体の問題として、しっかりと女性に対する処遇の在り方ということを是非ともこれからの検討課題で、是非とも指示してそういったマニュアルなり強化してほしいというふうに思います。
大臣、ちょっと最後に、ちょっとそういう女性の受刑者に対する具体的な処遇内容がちょっと弱いというふうに思います。そういう意味では、補強するという意味で、是非その課題について大臣どう思われるか。
○国務大臣(南野知惠子君) 先生御指摘のとおり、本当にこういう事件が起こるということは大変ゆゆしきことだなというふうに思っております。そういう環境がちゃんと防御できるような形にも整えたい。その第一点はやっぱり職員の教育にあろうかと思いますし、また、職員についても十分と手当てをしていかなければ、一人の職員がどんなに優秀であっても数がいなければこれはどうしようもない課題だろうというふうに思っております。
鋭意検討をしながら、その方向について努力したいと思っております。
○松岡徹君 是非それが見えるような形で取り組んでいただきたいというふうに思っています。
時間の関係で、ちょっと最後に一つだけ聞きたいと思いますが、もう一つの受刑者の中で、外国人の受刑者が増えているということは言われています。その中で一点だけちょっとお聞きしたいんですが、この今回の法案で、外国語による面会、信書の発受、あるいはその会話内容を聴取したり、信書を翻訳したりする必要がある、そういう場合があると。そのような費用を受刑者に負担させるというふうになっていますけれども、この面会、信書の発受、あるいは会話内容の聴取、信書を翻訳したりする必要がある場合、その費用を受刑者に負担させるというふうになっていますけれども、これは私自身は、立会いあるいは検査を必要として実施する場合、国がそういう費用は負担すべきではないかと思うんですけれども、これについていかがですか。
○政府参考人(横田尤孝君) 確かに、現行の扱いから申し上げますと、そういった必要がある場合には、翻訳が必要とする場合がある場合にはその費用を本人に負担させることができるというふうになっております。もっとも、そのような場合にも、できる限り外国語を解する職員が間に入って翻訳をしたり、あるいは必要に応じて、府中刑務所とか大阪刑務所には国際対策室というものが置かれておりまして、そこに専門の職員あるいは外部委託の人もおりますけれども、そういった人たちおりますので、そこで同時的にほとんど短時間のうちに通訳をしてもらったりとか、あるいは時間があればそれを大使館に依頼すると、そういったことで極力翻訳の費用負担というものがないようにしておりまして、現実にも翻訳の費用負担の事例はまれであるというふうに承知しております。
○松岡徹君 もう時間がありませんからこの辺で終わりたいと思いますが、また次の機会に是非ともこれは細かく聞きたいと思うんです。
現実的には負担のところは最小限だと言っているんなら、できるなら法文のところに、その負担は受刑者といいますか、それがするということではなくて、法文の表現を費用を負担させることができるとか、その内容によってはね、というような表現にしてはどうかというふうに思ったりしています。そのことを是非ともまた改めて追及をしたいというふうに考えておりますので、今日のところは私はこれで終わりたいと思います。
ありがとうございました。
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