○松岡徹君 民主党の松岡徹でございます。
参考人の皆さんには大変忙しい中、ありがとうございます。限られた時間でございますので、かいつまんで御質問をさせていただきたいと思います。
まず、川端参考人にお聞きしたいんですが、今回の刑法の改正によって人身取引が犯罪化として規定されて、大きな成果であるということは言われましたし、同時にそのことが保護にもつながっていくと、被害者の保護にもつながるという効果、それは我々も分かりますが、問題はそれがしっかりと摘発なりあるいは処罰につながっていくかということなんですね。しっかりと運用されるかということであります。
そこで、幾つか聞きたいところがあるんですが、特に私も幾つか質問した中で、今回の刑法で人身取引が犯罪として提起される、処罰されると。それを目的、手段、そして行為によってきちっと提起されている。その搾取の目的のところで、例えばこの刑法の中にも買受け罪なり売渡し罪というようなものがありますが、臓器摘出等というのがあるんですね。それは今の刑法には入らないから、生命及び身体のという新しい、広い、広義で定義していこうということなんですが、例えば、その買受け罪の場合、臓器摘出、過去にもありますが、今もあるかもしれませんが、日本の患者さんが、例えば透析患者さんがフィリピンへ行って、フィリピンでだまされて臓器を摘出された、それを移植すると。当然フィリピンに行って、日本人が行って何がしかの対価を出してそれを買うんですね、手術を受けるんです。これは人身取引罪に当たるのかどうかなんですね。買受け罪にはなるのかどうかということになります。日本のこの刑法改正で当たるのかどうか。
あるいは、非常に貧しい家庭の子供を買って、何も搾取の目的ではなくて自分の子供として養子として育てる。その場合、子供を買うという場合は、これも人身取引になるのかどうか。今回の刑法改正で当たるのかどうかのちょっと意見をお聞きしたいんですが。
○参考人(川端博君) お答えいたします。
まず、臓器に関してでございます。
刑法典に取り入れるに当たって、臓器という用語を避けまして、生命若しくは身体に対する加害目的ということで表現がなされております。これは、臓器という用語を刑法典に取り込むこと自体に法体制の観点から実は問題がございます。と申しますのは、これは臓器移植法とかそういった法規の中で既に臓器という用語を用いられておりますが、これ自体が特定の定義規定がなくて、省令に任されている部分がございます。そういったものを基本法典である刑法典に取り込むということにはやはり大きな問題が生ずるということがございますので、それを議定書では触れられておりますが、その議定書で含まれている内容を包含し得る刑法典における日本の法律用語としてそれで賄えれば十分であろうと、このように考えられるわけであります。そういったことで、この生命又は身体に対する加害目的の中にそれを包括できると、こういう面がございます。
それと同時に、先ほども申し上げましたが、当罰性を有する行為をもここで包含しておくのが立法政策上非常に妥当であると、こういう観点がございますので、例えば暴力団等のリンチ目的で略取誘拐したりするような場面も含むと、こういうようなことでこういう用語が用いられていると、このように思います。
それで、外国で有償で臓器移植のためにそれを買い受けるという場合には、これはこの新しい刑法でも処罰の対象となり得ると、このように思います。これは、既に臓器移植法でも禁止されている問題ございまして、これを更に刑法典に明確にその加害目的でもって対価を受けて取得するという部分が出てまいりますから、これは当然処罰の対象になり得ると、このように思います。
それから、養子縁組で金銭の授受がなされる場合ということでございます。これも、要するに実態が対価を受けて不法な支配を受けておるかどうかという点にございます。真摯な自由な観点、教育上の観点から養子縁組を行うというのは、これはある意味で非常にすばらしい行為でございまして、それ自体に伴う必要経費的なものは、これはここで言う売買の内容を成さないと、このように考えられます。
ただ、その場合であっても、表向きはそういう善意で固めておりますが、内実はやはり経済的に苦しいとか、そういったことで一種の親孝行的な観点から同意を示したと、こういうような事態が出て養子縁組となりますと、実態が正にそういった経済的な搾取という点にかかわりますから、こういったのはここで言う売買に当たり得ると、このように考えます。
○松岡徹君 ありがとうございます。
要するに、実態をどうつかむかというのが非常に大事な点なんですね。今回の法改正で幾つかありましたけれども、予防、処罰、そして保護、救済というのがありますが、とりわけ被害者の保護、救済、支援というのが非常に大事な観点だと思うんですね。今回の法改正で具体的にその辺がなかなかはっきりしないという気が一つはするんです。
吉田参考人に、武藤参考人にもお聞きしたいんですが、私自身もその処罰が人身取引を予防し、なくしていく効果を上げていくということは川端参考人がおっしゃったとおりだと思うんですが、ただ問題は、そこにどう持っていくかということ。実態が非常につかみにくい。そういう意味では、吉田参考人がおっしゃっていましたように、まず保護、被害者の保護あるいは救済というところから実態が見えてくるというふうに思うんですね。だからこそ、より丁寧な被害者の保護、救済、支援という取組に重点を置かなくてはならないということを言われておりました。
その中で、吉田参考人もあるいは武藤参考人もおっしゃっていましたけれども、この専門センターといいますか専門の支援センターといいますか、救済保護センターの必要性が問われましたけれども、特にその必要性をもう一度、大事なポイントとして私の問題意識と一致するのかどうかということなんですが、その辺をちょっともう一度お聞かせ願いたいのと、とりわけ、まず実態としては、被害者の方が自分が被害者だということをどこに訴えていったらいいのか、あるいはだれが信用、信頼できるのかということがあります。そういう意味では民間の役割というのは極めて重要な位置を占めていると思うんですね。その民間NGOとの連携の在り方の課題についてそれぞれお聞かせ願いたいと思うんです。
とりわけ、武藤参考人もそうですが、今年の予算で一千万の支援予算が付いておるんですけれども、先ほど言いましたように、地方自治体との協力とかありますが、その辺の予算面も含めてどのような考え方を持っておられるのか。
それぞれ、吉田参考人、武藤参考人からお聞かせいただきたいと思います。
○参考人(吉田容子君) では、また私の方からお答えいたします。
支援センターの必要性についてということですけれども、繰り返しになりますけれども、現在の被害者保護というのは婦人相談所が一時保護をすることもありますけれども、数としては少ない。保護した場合も速やかに、今二か所しかございませんけれども、民間シェルターの方に移されている。なぜかといえば、婦人相談所では十分ケアできないということが相談所自体お分かりになっていらっしゃるということだと思います。
やはり、言葉の問題が非常に大きいということが一つ。それから、婦人相談所といいますのは、端的に言えば衣食住、食べて寝ることはできます、一時保護の間。しかしながら、それ以外のプログラムですね、医療も含めたプログラムというものは独自にはできないわけです。予算もございません。スタッフもございません。そこでただただじっと被害者の方が毎日食べて寝ているという状況、それでケアになるとは到底思えませんし、それから、例えば帰国等のための手続についても十分に対処できないというふうに思っております。
ですから、まずは本当に安心で安全な環境、その中には、要するに被害者が自分たちがここは安心してできるんだと、ケアがされるんだということが十分理解していただかなければいけない。その場合には、もちろん被害の背景とか被害者の心身の状況、文化的、社会的背景なども十分理解した方たちが当たらなければいけないわけです。ところが、今の婦人相談所では、もちろん相談員の方たちが努力されているということは私もDV等の関係ではもう存じ上げておりますけれども、DVの対応で一杯だということと、それから人身取引の被害の実態であるとか言語的な対応というのは到底無理でございます。先ほども言ったように、特別のプログラムもないという状態。
したがって、やはり専門的な施設が必要であろうと。その場合に、婦人相談所は全国都道府県にございます、四十数か所あるかと思いますけれども、そこにすべて専門スタッフを配置するというのもこれまた難しい問題になります。ですから、むしろ一か所ないし二か所程度専門のセンターをつくって、そこに集中的に人的あるいは財政的な資源を投入して、被害者の方たちの十分なケアを行うということが必要であろうというふうに思っております。
以上でございます。
○参考人(武藤かおり君) 被害者の方は今、先ほど私が申しましたように、大使館にSOSを出して、大使館の職員が手が空いたときに迎えに行ってもらう、若しくは交通費がない方もいらっしゃいますし、十分な電話代がない方もいらっしゃって、どこかでお金を借りて電車に乗ってやってくるとかタクシーに乗ってやってくるとか、そういうような状況なんですね。それが、婦人相談所に、本人が例えば地理が分からずに婦人相談所に行こうとした場合、タクシーに乗っていくしかないんですが、そういうようなタクシーに乗ってキイッと婦人相談所の前に横付けにしてタクシー代がありませんと言ったら婦人相談所がそれが払えるかといったらそうではないとか、入国管理局に、今回私たちのシェルターで四名ほど保護したタイ人の女性は、在留特別許可を出してもらうに当たって四回、東京入管、横浜入管に行っております。その同行というものも、地方にあってはそれが難しい。また、大使館もそれなりに調査をいたしますから、大使館職員と余りにも距離が離れていると何も帰国手続が進んでいかないということがあります。そのようなことをすべてできるような予算を持って、人員を持ってやっている婦人相談所かといえば、そういうことではないというふうに私は考えます。
ですから、不安で不安でしようがない被害者をただ黙って寝かせて、時間になったら御飯を与えて、時間になったらおふろに入らせて、まあ基本的なことは言うかもしれないけどそれ以上の会話が続かないというような状態で、通訳を探せば一日二日、ひどくなれば五日以上通訳が見付からないというような状態では、被害者の方、自分が救われているのか監禁されているのか、何だか分からないような状態になってしまうので、婦人相談所ではなく、センターが、どこからでも被害者が駆け付けられるような仕組みが必要で、駆け付けたらそこできちんとヒアリングを行って、それをシェルターにつなげるというようなことをしていただけるようなセンターが必要だというふうに思っています。
あと、私たちの去年の実績なんですが、DV防止法の一時保護、これは参考になるかどうか分かりませんが、二十七人の大人を保護して、平均十四日間一時保護をして、一泊六千五百円の一時保護を行って得た私たちの委託費は合計で一年間で二百四十五万円にすぎませんでした。ということは、二十七人、十四日保護して、そのような支援をしてやっと二百四十五万円、そして私たちの全体の支出は二千万ということで、かなりこれだけでやれと言われても無理というぐらい一時保護委託費というのは、ケースが入って幾らということでありますから、なかなかそれでやってくれと言われても困ってしまうというのが現実です。
○松岡徹君 もう最後でございます、もう時間なくなりましたので。
最後に中山参考人に聞きたかったんですが、ちょっともう聞けないんで、国際協調というところがありまして、また是非ともおいおい折を見てお知らせいただきたいんですが、それぞれの国間の協調というのは大事だと思います。条約とか覚書とかいう方法もあるでしょう。こういう法律が改正されたことによってどういうふうな内容が付されていくべきなのかというのは最後に聞きたかったんですけれども、ちょっと時間ありませんので聞けません。また折々教えていただきたいということをお願いして、ありがとうございました、私の質問を終わります。
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