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2006.01.31
意見・主張
  
参議院議員 松岡とおる 国会議事録
人権を日本の政治の中にしっかりと根づかせたい。
松岡とおるは、そんな思いで国会内外をかけめぐっています。
2004年7月の参議院初登院から、「人権立国ニッポン」をめざす松岡議員の新たな闘いがはじまりました。
人が人として尊ばれ、人権が守られる社会をつくっていく「人間を大事にする政治」をめざして活動しています。
「人身取引」対策関連法案についての質疑

2005年4月14日 参議院法務委員会

○松岡徹君 民主党の松岡徹でございます。

 今議題になっていますこの刑法の一部を改正する法律案につきまして、人身取引を犯罪規定にしてその予防とその被害者の保護と罰則をしっかりと設定していこうという趣旨でございます。この人身取引というのは、決して新しい課題ではなくて非常に古い問題であります。我が国の中では、かつて人身売買、すなわち日本の我が国の女性が海外に売られていくということを防止するためにそういう法律整備はあるんですが、今回はそれだけではないんですね。人身取引というふうになっておりまして、改めて、前段でありますが、この法改正に至る経過ですね、なぜこのような法改正の提案がされたのかという経過について簡単に説明をしていただきたいのと、同時に、我が国の人身取引の現状というものが本当にこの改正案で改善できるのかという、その見通しについてその考え方を聞かせていただきたいというふうに思いますが、簡単にお願いします。


○国務大臣(南野知惠子君) 先生のお話しになられております人身の自由を侵害するための典型でありますいわゆる人身取引につきましては、国連におきまして、平成十二年十一月十五日、これは国際的な組織犯罪の防止に関する国際連合条約を補足する人、これは特に女性と児童というものが対象になっているかと思いますが、その取引を防止したり、抑止したり、及び罰則したりする議定書が採択されました。この議定書は平成十五年十二月二十五日に発効いたしておりますが、同議定書は、三条におきまして人身取引を定義した上、五条において人身取引を犯罪として処罰すると、これが大きなテーマになってくるかというふうに思いますが、そういうふうにいたしました上に、必要な立法その他の措置をとることを締約国に義務付けるということでございます。我が国は、平成十四年十二月九日に同議定書に署名いたしました。その背景といたしましては、近時、我が国においても人身取引やこれに関連する反社会的行為が少なからず発生しているということがうかがえることでございます。

 政府といたしましても、人身取引が基本的人権を侵害する人道的に深刻な問題であるということの認識の下におきまして、平成十五年十二月に犯罪対策閣僚会議において策定いたしました犯罪に強い社会の実現のための行動計画、これに人身取引に係る行為を処罰するための法整備に関する検討を進める旨を盛り込んだところであります。平成十六年四月には、内閣におきまして人身取引に関する関係省庁連絡会議、これを設置いたしました。同年十二月、同議定書の締結に必要な罰則を整備することを含めまして、人身取引対策として総合的、包括的な見地から早急に講ずるべき措置を盛り込んだ人身取引対策行動計画、これを取りまとめたところでございます。

 加えまして、長期間にわたります監禁事案や、それから悪質な幼児略取誘拐事案、あるいは国境を越えた略取誘拐事案が発生するなどいたしており、これを現行罰則では適正に処罰することが困難な事案と見られているところであります。これらの犯罪の実情に即した罰則の構成要件及び法定刑の見直しを行う必要があるというところが主なポイントであろうかと思います。

 それに付け加えますと、このような法改正の効果を具体的な数字で述べるということの御質問がありましたが、それは大変困難でございます。そういう意味におきましては、捜査機関といたしましても、今回の改正で新設され又は見直されます罰則を積極的に適用してその取締りの一層の強化を努めるものと承知いたしており、人身取引を含む人身の自由を侵害する犯罪の防止、撲滅に資するものと強く期待をしているところでございます。


○松岡徹君 その今回の法改正に至る経過というのが議定書の署名、それにこたえていこうということでございますし、当然、批准、締約、締結にまで持っていこうという動きがあるということは承知いたしております。問題は今までの人身売買という定義から、今回の議定書の署名に至って、議定書に示されている人身取引の定義というものがより具体的に定義されていたということが大きな意義なんですね。それからすると、今回の刑法改正で本当に原状回復できるのか、すなわち日本の人身取引の実態が改善されていくのかというその効果のほどを私たちは当然考えるわけであります。

 我々自身も、今回の法改正、すなわち人身取引の問題は以前からある課題ではあるけれども、同時に私たち自身も近年の大きな課題として理解をしていましたし、今回の法改正で一歩前進するという評価はしたいというように思うんですが、問題は効果がどう上がるかということです。そのためにはまず実態をどう、実態がどうであるのかということなんですね。先ほど大臣も、要するに数字としては表し切れないとおっしゃいました。先ほどの荒井委員からもありましたように、実態把握の重要性というものがございました。しかも、その人身取引のその複雑な犯罪性といいますか、間に介在するブローカーが我が国だけではなくて多国間にまたがるということもあります。しかも、その人身取引の被害者として認定するというのは非常に難しい複雑な事情があります。

 そういう意味で、実態をしっかりとつかまなくてはならないと思うんですが、先ほどの荒井委員のところでもありまして、私も、幾つかの点で聞きたいと思うんですが、昨年、二〇〇四年でこれは入管局、警察庁が実態把握している調査として聞いているんですが、検挙件数が七十九件、検挙人員が五十八人、その内訳が経営者が三十五人で、受入れブローカー、あっせんブローカー等が二十三人とか、これらの事件で確認された被害者はすべて女性だと、七か国、七十七人。その前の二〇〇三年では、検挙件数が五十一件というふうになっているんですね。

 そういう意味では、去年は検挙の数が最高の数だと思うんですね。そういう意味では、そういう実数はありますが、同時に全国の地方入管局の方でその実態の把握として二〇〇四年の二月に入管局の調査によって三千五百十七人の対象のうち五十三人が人身取引の被害者に該当する可能性が高いとしてその数値、結果が出ています。この実態の把握は非常に私は大事だと思いますが、改めて特にその三千五百十七人のうちの五十三人の現状をちょっと教えていただけませんか。


○国務大臣(南野知惠子君) 昨年、入管当局においての五十三名という件についての御質問であろうと思います。

 御質問の調査は昨年二月の一か月間にこれ、全国の地方入国管理官署におきまして入国警備官が外国人の違反調査を行いました際、併せて人身取引の被害と思われる事象の有無について聞き取りを行った結果の調査票を分析したものでございます。人身取引の被害と思われる事象といたしましては、例えば強制労働や又は売春等の強要、それから在留中の他人による金銭徴収あるいは入国時のブローカーの引率などの項目を挙げておりまして、その有無を記した調査票を全国から回収いたした後、人身取引議定書における人身取引の定義に該当する事案を抽出したものが、これが五十三人と、先生のお尋ねの数でございます。


○松岡徹君 まあ去年、そういうふうにその、私はその可能性が高いというふうなあいまいな表現の五十三人ですから、本当にその議定書で定義されている内容でどこまで調べられたのか。私は、中にはその調査に素直に応じる、あるいは応じられないというような事情を持って、わざとそういう調査には違う答えを述べる人たちもおったんではないかというのが、まあこれは憶測の範囲であります。しかし、そういう意味では丁寧な実態把握というのがなおさら必要だと思うんですね。

 大臣に確認したいのは、去年二月に調べただけでそれだけの数なんですね。この数字をどういうふうに見るかなんです。どういうふうに受け止めるかなんです。それは、この数が多いと見るのか少ないと見るのか、大臣、どう思われます、この数字は。


○国務大臣(南野知惠子君) それは調査の方法にもよろうかというふうに思いますが、このたびの五十三人という調査は、今申し上げましたような形で議定書に合わせてピックアップしたら五十三人ということでございますので、それが多いか少ないか、その中にどれだけ隠れているのかということも、これは想像の域を出ないものであろうかと思っております。


○松岡徹君 その想像の域を出ないということの話ではなくて、今申し上げているように、実態を把握しなかったらどんな効果を上げていくのかということは分からないんですね。ここにこそ人身取引を撲滅していく課題が埋まっているんですね。全容をつかみ切れていないというのは、正に先ほどからの議論の中にもあったとおりです。ですから、私はこれをやっぱり氷山の一角だというふうにとらえるべきだと思うんですね。だからこそ実態の把握に最大の力を注いでいかなくてはならない。先ほど荒井委員がおっしゃっていました。これからの施策にどうつなげていくのかということになると思うんですね。私はそういうふうに思う、そういうふうにとらえるべきだと思うんですけど。


○国務大臣(南野知惠子君) 本当に、正確な調査をしていくというところにも大きなポイントはあろうかと思いますが、昨年十二月に人身取引対策行動計画が策定されました。これを受けまして本年一月から人身取引の定義をその目的、手段、行為のそれぞれについて具体的に明らかにした上で、全国の地方入国管理官署における取扱いを徹底しまして、当該案件を発見した都度、報告させることにより実態把握を行っているということも申し添えたいと思っております。


○松岡徹君 是非、その実態把握の仕方はいろいろあると思うんです。我々が民主党がいろいろ情報を聞いて、NGOの意見では二万五千人ぐらいの人身取引の被害者がいるんではないかということが、NGOの付き合いとか、その活動の状況で、そういう予想を立てています。

 そういう意味では、五十三人というのは非常に実態から懸け離れているというふうに思うんで、実態の把握なんですが、問題は、その私は三千五百十七人を調査票で調べたと。そのときの可能性が高いというあいまいなことではなくて、その定義にしっかりと即してどういうふうにやっていくかということなんですが、その問題はその定義の解釈のところなんですが、どういうふうに、その人身取引の被害者としての定義のところですが、まあ議定書あるいは今回の法改正のときもそうですが、その目的、手段、行為というふうに議定書の中の書かれている定義を三つの要素としてされています。

 その目的の中の性的搾取、強制労働、臓器摘出等による目的によって手段、すなわち暴行とか脅迫、欺罔、対象者を支配する者などとか、そういうふうになっている。ここで、目的のところで、今回の犯罪の定義になります搾取目的の性的搾取、強制労働、そして臓器摘出なんですが、先ほどもありましたけれども、この臓器摘出というのは三千五百十七人の中には被害者はいなかったわけですね。いなかったわけですね、対象者としては。臓器摘出は先ほど、後のこれに対応する今回の刑法の改正のところで、生命・身体加害目的というふうに定義して広い、より広い定義でやろうということですが、私も、荒井委員おっしゃったように、私は臓器摘出としてはっきりとすべきだと思うんですね。例えば、臓器摘出という場合の事例なんですが、その今回の人身売買罪の新設のところで、売渡しと買受けというのがあります。これまでもそうですが、例えばフィリピンで腎臓を無理やりブローカーによって摘出されて、そして日本人がフィリピンへ行って腎臓移植をする。何百万のお金を払ってやると。これは、買った、要するに買って腎臓移植をした日本人は買受け罪に当たるんですか。どうですか。


○政府参考人(大林宏君) 技術的なことでございますので、私の方からお答えさせていただきます。

 今の委員の御指摘の事案については、やっぱり最終的には証拠の判断、当てはめの問題だと思いますが、臓器の摘出に関しましては、非常に問題は、治療といいますか、社会的相当の問題、医学の発展の問題も裏腹にあります。

 ですから、委員がおっしゃるのは恐らく悪質な事例をおっしゃっているんだろうと思いますので、多分、犯罪に当たるような事例が多いんじゃないかと思いますけれども、ただ、私どもの意識しているのは、そういう医療的な問題も国内でいろいろな議論があるところでございまして、そういうところを踏まえたやはり捜査処理が必要じゃないかなというふうに考えております。


○松岡徹君 医学的なこととかあるいは臓器移植ということについて、一般的に我々は否定しているのではないんですね。それが、要するに、今回の人身売買の臓器摘出という要件に当てはまるのかどうかということがはっきりしなかったら駄目なんですね。だから、生命とか、広い定義、非常に、生命・身体加害目的というところに今回組み入れるんだと、臓器摘出というのを入れるんだと、解釈を入れるんだと言っていますけれども、正にそういうあいまいなというか、要するに、すれすれのところで犯罪が行われているということもあるんですから、やっぱりはっきりと臓器摘出ということはしっかりと犯罪要件として、言葉として入るべきだと思うんですね。

 だから、今おっしゃったように、私は一般的にはその臓器移植の問題を否定しているんじゃないですよ。実際にそういう犯罪行為があるわけですから、そのことについて考えますと、非常にあいまいなんですね。ですから、そのことを今回も、臓器摘出がそういうふうに使われることが犯罪だということ、この臓器摘出という言葉と、今刑事局長おっしゃったように、普通の医学の発展による臓器移植とは全く違うことですから、概念ですから、やっぱり臓器摘出というのを生命及び身体というようなこの分かりにくい言葉ではなくて、しっかりと明記すべきだと思うんですけれども、大臣、どう思われます。


○国務大臣(南野知惠子君) この中身に入りまして、目的のところにはちゃんと臓器摘出等という文字が出ておりますので、それを最大限に解釈した人身に対するというような文言を使ったものと、その中には臓器という問題が含まれていると思います。

 今国会の法案に言います「生命若しくは身体に対する加害の目的」といいますのは、人身取引議定書に言う臓器の摘出の目的よりも広いと。だから、それより狭い問題であれば私も困ったなと思いますけれども、それを含む広い範囲であるということの御解釈がいただければよろしいのかなというふうに思っております。


○政府参考人(大林宏君) 補足してお答えさせていただきます。

 おっしゃられるその臓器の摘出というのは重大な犯罪行為でございますので、委員御指摘のように、それを明確にすべきだとおっしゃられる意味は私どもも分かりますが、それは今回の議定書を踏まえた国内法の担保でございまして、これが含まれるということは明らかであるというふうに私ども考えております。

 先ほども御説明いたしましたけれども、同時に、日本の場合には、いわゆるやくざがさらうといいますか、そういう先はリンチとか、いろいろな非合法な目的を持ってさらうという形ができていますし、いわゆる略取誘拐だけでは済まない問題が含まれています。

 ですから、そういう問題も含めてこのような表現にさせていただいたものでございまして、今回の主要な改正の目的として、委員が御指摘の臓器の摘出ということを私ども強く意識していることは間違いございません。


○松岡徹君 やっぱりそういう事例、もう一つ、例えば目的の、搾取目的の中で臓器摘出等というのがあります。この等というのをどう解釈するかということなんです。いろんなケースが考えられるんです。

 例えばフィリピンとか、あるいはそういう貧しい国の人のところの幼児を買い受けて、買い受けて、そして日本に連れてきて、それで、性的搾取とか強制労働ではなくて、ちゃんとした教育を受けて自分の子供のように育てていくということもありますね。これは対象になるんですか、この場合は。


○政府参考人(大林宏君) 今の教育目的という問題、先ほど申し上げましたように、これは買受けの罪の問題だと思いますけれども、それは対価性と、それから不法な、何といいますか、移転といいますか、支配というものでございます。ですから、今おっしゃるような、本当の教育の目的で、しかも認識の問題、また証拠の問題になるかと思いますけれども、例えばブローカーなりを正式な、正式なというのは合法的なものとして理解して、それなりの手続を取ってという形であれば、教育の目的、そうすると当然不法な支配の移転という定義には当たらないことになりますので、当然そういうものには成立しないという場合もあろうかというふうに思います。


○松岡徹君 広い意味でいったらそれも人身取引なんですね。

 ですから、やっぱりそれも処罰の対象に、やっぱり歯止めを掛けていくべきだと思うんですね。それがやっぱり今回の場合はあいまいなんです。先ほどの臓器摘出の問題もそうです。やっぱりそれがあいまいです。それをどこでどういうふうにカバーしていくかということは、しっかりと課題としてやってほしいと思うんですね。

 例えば、もう一つ、今度、被害者としての認定する場合のケースなんですが、要するに被害者というのは、今までは私たちは一方の犯罪者としての扱い、見方というのがスタートにありましたけれども、例えばこういう場合、どうなのか。

 例えば、タイとかフィリピンのブローカーがだましてそこの現地の女性たちを確保して、そして日本に連れてきて、普通でしたらそこに介在するブローカーがおるんですけれども、そして日本の買受人、受取人に売り渡すということになるんですが、そのことを抜いて、タイとかフィリピンのブローカーが直接日本で売春をやっていたと。そして、そこで働かされていた女性が保護された場合、この彼女は被害者として認定されるんですか。


○政府参考人(大林宏君) 今のおっしゃられるものについては当然、日本で、今のお話だと直接ということですので、例えば買受け罪とかいう問題ではないと思いますけれども、それは当然、日本で売春させている場合は、管理売春等、外国人でも当然適用がございますので、そういう罪が成立し、当然、女性はそちらの方での被害者ということは言えるかと思いますが。


○松岡徹君 そういうふうにいろんなケースというのが出てきます。どんな実態なのかまだつかみ切れていません。だからこそ実態をしっかりとつかまなかったら適切な対策が出てこない、効果が上がらないということになると思うんですね。

 先ほど大臣答えていただきましたように、やっぱり私は、実態把握をするということは非常にまず大事でありますから、それに最大の努力をして、傾注していただきたい。しかも、それが継続的にしっかりとやっていくべきだというように思うんですね。

 問題は、その実態把握をするときに、一番分かるのは、被害者の人から事情を聴くということがまずスタートといいますか、大事な点になります。それで、その被害者の、その被害者からの事情を聴くという視点をしっかりと持ってこの取組をしなくてはならないと思うんですが。

 そこで、こういう実態だということを踏まえて、もう一つ、内閣官房なりにもう一度聞きたいんですが、今回のこの議定書を署名をするに至った経過、その中に一つありましたアメリカの報告書の批判、あるいはその年の十一月のILOの批判もございます。昨年の六月にアメリカ国務省の人身売買年次報告書というのがありまして、日本が監視対象国というふうに言われまして、またその年の十一月に、ILO、国際労働機関が日本には人身取引被害者の保護が十分でないと、被害者が犯罪者扱いされているというような指摘がされていますね。

 そういう意味では、こういった状況というものをどう受け止めるか。私は非常に不名誉なことだというふうに思うんですね。今聞かしていただきました我が国の人身取引の実態というものも含めて、決して五十三人がすべてではなくて、氷山の一角だというふうにとらえていかなくてはならないし、そういう意味では、こういった国際的な批判はどういうふうに受け止めるのか。私は非常に不名誉なことだというふうに思うんですが、それを是非とも、受け止め方を聞かしていただきたいというふうに思っています。それと、この議定書の批准、締約の見通し、これちょっと聞かしていただけますか。


○政府参考人(神余隆博君) お答え申し上げます。

 人身問題、人身取引問題は、人身取引被害者の送り出し国、目的地国を含めた国際社会全体で取り組む必要のある問題でございます。様々な国際的な枠組みにおいて取り扱われ、議論がなされてきております。そのような議論の中で、人身取引被害者の目的地国としての我が国の状況につきまして、先ほど委員の御指摘のあったような指摘がなされてきたことは承知をしております。

 我が国としては、このような国際社会における議論に積極的に参加することを通じまして、各国の状況や取組についてお互いの理解を深めることは非常に有意義であると考えております。実際、我が国は、昨年十二月に策定しました人身取引対策行動計画を始めとする日本の取組については、主な送出国政府や国際機関、あるいはNGO等との協議の場を含む様々な機会をとらえまして国際社会の理解を得るべく努めてきておりますけれども、今後ともこのような取組を積極的に実施していきたいというふうに考えております。


○松岡徹君 それで、先ほどもありました、これからの課題もありますが、ちょっと先ほどの答弁の中にもありましたけれども、この刑法改正の意義は、先ほど言いました議定書の署名、批准へ向けた国内の法整備、対応なんですね。しかし、法改正の中には非常にまだまだ不十分な点があるということを先ほど指摘させていただきました。同時に、刑事局長も答弁の中に、必ずしも人身売買、人身取引の対応だけで法改正の部分がすべてではないと、ほかの国内的な事情も反映した対応の改正にもなっている。

 私は、この人身取引を本当に撲滅するという、戦うという姿勢を政府は示しているんですから、あの年次計画の中に。そういう意味では、私は、この人身取引の犯罪を撲滅していくための総合的な法律が必要ではないか。単なる刑法改正で、その趣旨が分からない。先ほど言ったように、臓器摘出だといっても、正にそれが一般的な医学の面からとか言われていますけれども、実際あいまいなんですね。日本政府は、やっぱりこの国際的な批判、そして議定書を批准し、それに対応していこうとする姿勢からすれば、しっかりと人身取引に対しては日本はこんな姿勢を持つんだということをメッセージするためにも、あるいはこの非常に複雑な人身取引の実態を改善していくためにも総合的な法整備が必要だというふうに思うんですね。

 これは別に法務大臣が答えるべきではないかもしれませんが、私は、取りまとめてきた内閣官房が答えるべきだと思うんですけれども、是非ちょっと、総合的、包括的な法律というものを作る必要があると思うんですが、いかがですか。


○政府参考人(鈴木基久君) 人身取引は重大な人権侵害、また国際的な組織犯罪でございまして、政府を挙げて対策を講じる必要があるということは御指摘のとおりでございます。

 そこで、政府といたしましては、昨年十二月に人身取引の防止、それから人身取引の撲滅、そして被害者の保護を含む総合的、包括的な対策として人身取引対策の行動計画を策定したところでございます。行動計画で位置付けられた各種の施策のうち、法整備が必要なものについては法整備をお願いし、現行の法体系で対応可能なものについては予算措置等により対応することといたしておりまして、その一環として、現在御審議いただいております刑法や入管法等の改正を御審議いただいておるわけでございますが、被害者保護のための必要な予算措置も講じておるというところでございます。

 包括的な法整備をという御質問でございますが、まずは今申し上げましたような対策というのを着実に実施していくということが重要でございまして、それにより人身取引対策にかなりの効果が上がるものというふうに考えております。


○松岡徹君 かなりな効果があるものと思うんやったら、この法律改正やったらどんだけの改善のめどがあるんですかということをなぜ答えられないんや。かなりの効果が期待されますと言うのやったら、どんな根拠で言うてるんですか。

 だから私、最初に冒頭聞いたでしょう。今回の法改正で本当に人身取引の現状をどういうふうに改善するめどは持っていますかと言ったら、数字では表せませんと言っているでしょう。一方で、官房の方でやね、内閣官房で、相当な効果が上げられると。どっちやねん、これ。それ、どういうふうに解釈したらええの。だから最初に聞いたんですがな。もう一回。


○政府参考人(鈴木基久君) 今回の人身取引の関係の対策でございますが、今回お願いいたしております刑法等の一部改正のみならず、人身取引の防止、それから人身取引の撲滅、それから被害者の保護、こういった三本柱から成る総合的な対策でございます。

 先ほど法務省御当局の方からも、明示的な数字での効果というのはなかなかお答えするには非常に困難が伴うというふうなことでございますが、今回、法律改正により人身取引の刑罰化が進むことにより、それにより対策が進むということではございますので、これにより相当の効果が進むというふうに考えておるということでございます。


○松岡徹君 全然分からぬね。相当効果が進むという根拠が全然分からぬ。それやったらね、臓器摘出の事案は、あれでどうやって解決されるんですかと。具体にこっちは聞いている。すなわち、我々、今は人身取引の実態がどんな実態なのかということの何%までつかんでいるんですか。だから、三千五百十七人の、去年、入管が調査して、そして被害者と認められる人が五十三人だったと。しかし、それ自身も氷山の一角ではないですか。しかし、それをやったということは大事ですよ。議定書の定義に書かれてあることによってずっと調べたから五十三人という数字が出てきたんですよ。そういう意味では、実態はまだ十分全部、すべての実態はつかみ切れてないんです。だからこそ、先ほども言ったように、実態をしっかりつかんで今後の施策に生かしていかなあかん。

 相当な効果が上げられるというのは、今まで何もやってこなかったからちょっとでも前へ進むんですよ。それが相当というのか、その認識違うんですよ。我々はまだまだこれからだと思うんです。だからこそ、今回の法改正でも、先ほど指摘しましたように、やっぱり幾つか不十分点がある、実態に即していないというところがあります。だからこそ総合的な法整備をしていくべきではないかと、こういうふうに言うんです。

 これ、昨年の十一月の百六十一国会で参議院の内閣委員会で、総合的な法整備がなぜできないのかという質問をしているときに、細田国務大臣、細田官房長官がこう答えているんですよ。あらゆる角度から検討しなければならないと思いますので、御提案のことも含めて検討してまいりたいと言うているんです。しかしその一方で、まず今の現状をちょっとでも前進、改善、前進させるために今回の法整備を提案しているんですと言っているんです。私、この細田官房長官の去年の答弁、国会答弁の趣旨分かりますよ。正直ですがな。あなたの答えはちょっと後退していますよ、細田官房長官の答弁から。議事録見てくださいよ。官房長官ですら検討しましょう、検討しますと言っているんです。あなたの言い方やったら必要ないというふうな言い方に聞こえるんです。どうです、もう一回答えてください。


○政府参考人(鈴木基久君) 昨年十一月の時点の御答弁でそのような御答弁をさせていただいて、官房長官からさせていただいたことは承知しておりまして、その後、昨年の十二月に人身取引対策の行動計画を策定して、総合的、包括的な対策を講ずるということにしておるものでございます。したがいまして、現時点では、あそこで掲げられました施策について、まず必要な法改正をお願いし、それから必要な予算を取りまして必要な施策を推進する、そういったことによってそういう対策をまず講じていくと、そういうことが重要であるということでございます。


○松岡徹君 だから、そのまず講じるいうことは別に否定しませんがな。だから一定評価していると言っているんですよ。しかし、含めてね、そういうことを引き続き検討していこうということにならなくてはならないと思うんです。

 これで議論やっていたら時間がないので次に行きますけれども、是非とも、官房長官のあの答弁を下回ることのないような姿勢で是非ともお願いを申し上げたいというふうに、これは要望しておきたいと思います。

 そこで次に、要するに予防のところなんですが、特にブローカー対策とかありますが、幾つかあるんですが、今回の法改正でブローカーの摘発についてどこまで行くのか。時間の関係ありますから申し上げますけれども、去年、おととし、おととしの十一月に日本、日本人の男性のブローカーが逮捕されて、起訴されて、懲役一年十か月という判決が出ているんですね。これ、いわゆるソニー事件と言うてるやつですけれども。これは、この男はコロンビア女性の人身取引のかかわったブローカーなんですね。ところが、この事件にかかわったブローカーというのはこの男だけではなくてほかにもおったんですね。で、摘発された人間がたくさんおるんです。ところが、逮捕されて実刑判決出たブローカーは一人だけでね、罰金を払って出てきたブローカー、ほかのね、これにかかわって出てきた人間は翌日からまたブローカーとして復帰しているという実態があるんですね。

 そういう意味では、予防あるいは撲滅ということから考えると、このブローカーの実態をどういうふうにつかんでいるのかということもありますが、なかなかつかみにくいということがあろうかと思いますが、少なくとも今回のこの予防のところで、例えば風営法の改正案が同時に出されておりまして、この接客従業員の在留資格等を確認するとか、あるいは確認記録の保存義務を課して、これに違反した場合は百万円の罰金というふうに検討されているんですが、これ自身が非常に軽過ぎると。先ほど言ったように、罰金さえ払ったらすぐ出てくるんです。で、その翌日からまたブローカーとしてやっている。軽過ぎるんではないかという批判があるんですけれども、そういう意味では、そのことについて、これは国家公安委員長、警察。


○政府参考人(伊藤哲朗君) 今国会で御審議いただくこととなっております風営法の改正案では、接待飲食等営業、店舗型性風俗特殊営業、その他の性的搾取につながる危険性の高い営業を営む者に対しまして、その営業に関し客に接する業務に従事させようとする者の生年月日、国籍及び外国人である場合には在留資格、在留期間等を確認するよう義務付けているところでございます。

 今回の風営法の改正におきましては、ブローカーからというよりも、むしろその人身取引事犯の被害者がこうした営業に就労していることが多いということから、その不法就労していることの弱みとか経済的困窮に付け込んで売春などを強要するような事例が見られますので、そうした営業者に対する規制という形になっておりますので、こうした営業者に対して罰則を加えるという形にしております。

 具体的には、罰則を加えられますと営業としても成り立たなくなってくるといいましょうか、場合によっては営業停止、取消しという形になりますので、そうした意味で、そうした場を排除していくということが目的でございます。


○松岡徹君 ちょっと時間の関係であれなんですが、要するにブローカー摘発というのは、同時に、国内の問題もありますが、国際的な協調という面が当然必要になってくるんですね。日本が送り出し国あるいは受入れ国、他の受入れ国と連携をしながら予防していく、あるいは摘発していく、そして裁判、起訴にまで持っていくというようなこれが必要だと思うんです。

 こういう国際、国際協調といいますか協力というのは、人身取引対策行動計画においても国際捜査共助の充実化と条約締結の検討というのがあるんです。これについてどういうふうに考えて今進めようとしているのか、聞かしていただけます。


○国務大臣(南野知惠子君) その件に関連いたしましては、人身取引の取締りのために諸外国との間で捜査協力を推進していくことは重要なことであるというふうに思っております。国際組織犯罪防止条約及び人身取引議定書は、条約の対象となる犯罪の捜査におきまして締約国がお互いに最大限の法律上の援助を与えるということを規定いたしております。これによりまして一層の捜査協力が期待できるのではないかなと思っております。また、二国間の刑事共助条約が人身取引に関する協力に資する場合もあると考えております。

 条約の締結は外務省の所管ではありますけれども、法務省といたしましては、相手国との共助や実績、相手国の法制等を踏まえながら関係省庁と協議しつつ、諸外国との間での条約締結に積極的に取り組んでいきたいというふうに思っております。


○松岡徹君 そのときに、法務省はもう既にもう韓国と実務レベルで打合せをしているとかいうことを聞いております。そういう意味では、国際的な協力、二国間あるいは多国間の協力が大事だと思うんです。

 それは、すなわちブローカーの摘発とか予防とかということが重きですが、是非ともその中に被害者の保護という観点を是非とも入れてほしい。日本で保護された被害者が自分の本国へ帰るときに、また向こうのブローカーや、危害加えられるということがあるということの実態はもうもちろん聞かれていると思うんです。その二国間あるいは多国間との協議のところで、しっかりとその被害者保護という観点を同時に入れた条約なり覚書なり、そういう協力関係を是非ともやっていただきたいと思いますけれども、どうですか。大臣、いかがですか。


○政府参考人(大林宏君) 条約等におきましては、司法共助的なかなり広範的な内容になろうかと思います。ですから、具体的な犯罪被害者のことが盛り込まれるかどうかというのは技術的な問題があろうかと思います。ただ、委員がおっしゃるように、被害者保護というものを国際的なレベルで救済していかなきゃならないということは、それはもう確かにそのとおりでございます。

 私どもも警察等の捜査当局と協力して、できるだけ、あるいは入管局も関係ある話なんですが、そのようないわゆる更に後発的な被害を起こすような形が避けられる方策については更に検討していきたいと、このように考えております。


○松岡徹君 非常に歯切れの悪い、今日はちょっと歯切れ悪いですな、局長さん。

 非常に大事な点だと思うんですよ、課題でしょう。で、私は全体的にこの今回の法改正、趣旨はよく分かります。しかし、被害者保護という観点はちょっと弱いと思うんですね。そこが法改正のところでは弱い、だからこそ総合的な法律を作るべきだというふうに思うんです。私は、連絡会議設置されて検討しているということでありますけれども、そうではなくて、しっかりと担当部局をつくるべきだというふうに思うんですね。そのことについて聞かせていただきたいというふうに思います。

 今年のこの人身取引にかかわる予算としても約六千六百万の予算が法務省に組まれていますね。それはすなわちブローカー等と被害者のデータベース化のための六千六百万です。しかし、一方で、厚労省の方は一千万の予算です。何かといえば、被害者保護のための婦人センターのかかわる経費なんです。その数字だけでこう言う気は毛頭ないですが、ちょっとやっぱり保護の視点が弱いんではないかというように思うんです。そういう意味では、それぞれが受け持っているところが勝手に手上げて、自分の問題意識だけで議論するんではなくて、しっかりとそれらを調整する組織といいますか、人権取引対策局というような機関をつくるべきだというふうに考えます。

 それと、あわせて、人身取引対策連絡会議というのがあります。この行動計画の中にもありますように、人身取引は重大な人権侵害だというふうに言われています。私も全くそのとおりだと思います。そこの構成メンバーの中に、構成メンバーの中に法務省の人権擁護局、内閣府の男女共同参画局が入っていないんです。なぜですか。

 先ほど聞いた専門の局といいますか、をつくるべきだということと、なぜ連絡会議にその二局が入っていないのか。


○国務大臣(南野知惠子君) 先生の御指摘でございますが、人身取引が重大な人権侵害であるということは、これはもう御指摘のとおりでございます。

 法務省といたしましては、人身取引対策関係省庁連絡協議会、これを含めまして、会議に直接出席者を出していない部局でありましても常に所管業務の遂行に関する情報は省内でこれ共有しておりますので、そういう意味では人権擁護局におきましても会議の動向を常に掌握してもらっているというふうに思っております。


○松岡徹君 ちょっと済みません、質問時間の関係で。

 その人権擁護局も、実は人権擁護局がそれぞれの地方の局で外国人の人権相談を受けたと。その中で人身取引被害者と思われる人が六人ほどおったというふうに報告は聞いておるんです。それはどうしたんだ、どういう対応をしたんだと。分からないんです。私は、いろいろこの人身取引のやつで取組をしようとしています、警察の方もこんなリーフレットというか、パンフレットを作って。そういう意味では、人権擁護局が一体何を考えているんだと。外国人の相談、年間あったんですよ。例えば、聞いた、どこへやったかな、ちょっと今数字あるんで、時間がありますから。

 是非、そういう意味では人権擁護局も入るべきだ、それと男女共同参画局も入るべきだというふうに思うんですけれども、男女共同参画局、答えてください。


○政府参考人(名取はにわ君) お答えいたします。

 昨年四月に人身取引対策に関する関係省庁連絡会議が設置されました際には、関係する法令や政策手段を有する省庁で構成されるという考え方の下、内閣府男女共同参画局は構成員には加わっておりません。しかしながら、人身取引対策行動計画の中で、内閣府は女性に対する暴力をなくす観点から人身取引根絶に向けた広報活動を行うことが記載されておりまして、男女共同参画局におきましては、行動計画に基づき、女性に対する暴力をなくすため広報啓発を推進しているところでございます。内閣府男女共同参画局といたしましては、今後とも男女共同参画の視点を適切に反映するために、関係省庁連絡会議と密接な連携を図ってまいりたいと思っております。


○松岡徹君 連携を取るということではなしに、男女共同参画局がなぜできたのか、男女共同参画基本法がなぜ作られたのか。この人身取引の被害者のほとんどは女性ですよ。しかも人権、重大な人権侵害だというふうに位置付けているんですよ。そこから聞いたことをやるだけのこれ姿勢というのは大きな問題がある。積極的に入って、女性の問題として、しっかりと女性の人権としてとらえて男女共同参画局の課題としてやっぱり取り組んでいくべきだというふうに思います。そのことを私はしっかりと問題提起だけしておきたいというふうに思います。

 時間の関係がありますので、聞きますが、そういう意味では我が国のところではそれぞれの課題はそれぞれのテーマになっているんです、それぞれの局で。しかし、共通する人権というところではみんなあるんですね。すなわち、人権に関する総合的な法律というものがまだ整備されてない。

 そういう意味では、今問題になっています人権侵害救済法、擁護法案ですね。これは大臣も幾つかの国会でも述べられましたが、百六十二通常国会で、この国会でしっかりと成立図るように、ただまだ上がっていないということでありますが、大臣、その人権擁護法案の救済法の制定の必要性についてどう思われます。伺いたいと思います。


○国務大臣(南野知惠子君) 先生が先ほどおっしゃっておられました地域において、まだそういうリーフレットを作ったりいたしてはおりますけれども、意思が徹底されていないということについては、これ今後もしっかり考えていき、徹底させていくという方向にも持っていきたいと思っております。

 今お問い合わせのその問題点につきましては、法務省といたしまして人権擁護、人権問題等に関する懇話会、これの方針決定を踏まえまして、本当に人権擁護法案を早期に提出していきたい、その方針は変わっておりません。そのような下に、引き続き精力的に問題を解決していきたいということを願っているところでございます。


○松岡徹君 今、その人権擁護法案がなぜ上がってこないのかということがマスコミ、テレビで出ています。自民党さんの内部の中で人権擁護法案の人権の定義があいまいだと、そして人権擁護委員の選出については国籍条項を設けるべきだというような議論があって、それのいろんな調整をされているということであります。

 人権には国籍はないんですね。先ほど言ったように、どんな国の人たちが人身取引として人権侵害を受けているかということがあります。人権の定義は国籍というレベルで計るべきではないというふうに思うんです。是非、その国籍の問題ですね、今もう大臣御存じだと思いますが、この人権侵害救済にかかわる法律、すなわち人権擁護法案に国籍要件を設けるべきだというふうに思いますか。大臣のお考え方は。


○国務大臣(南野知惠子君) 人権擁護推進委員会の追加答申におきまして、我が国に定住する外国人が増加している、そういったことなどを踏まえておりますが、外国人の中からも適任者を人権擁護委員に選出することを可能にする方策を検討すべきであると指摘されております。法務省といたしましてもこの方針は変わっておりませず、追加答申の指摘を踏まえまして、人権擁護法案を再提出するために検討を行っているところでございます。


○松岡徹君 もっとはっきり答えてほしいんですけれどもね。答申の中にはそう書いてあります。私らもそうだと思います。ですから、やっぱり人権に国境はないです。ましてや、それを政争の具に使うようなことがあってはならないと思うんです。

 だから、やっぱりこの人権侵害にかかわる、人権侵害を救済するための法律というのは、やっぱり、まず、なぜどういう経過でやられてきた、議論されてきたのかということは、正に私たちの日本の国内にある人権侵害の状況、すなわち特に差別の問題ですね。部落問題、同和問題を始めずっと議論をしてきて、そして一九九六年の地域改善対策協議会の意見具申が出て、同和問題といえども人権の基本からとらえ直し、改めて解決に取り組んでいこうということがありました。

 そういう意味では、私たちもそれはそのとおりだと思います。そのときに、一つ部落問題だけではなくて、他の国内が抱えている様々な差別や人権侵害状況も同時に解決していこうということになります。そういうことからすると、是非とも一日も早く、この人権侵害を救済するための法律の制定は必要だと思うんですね。決して、この人権侵害を、差別という形で人権侵害を受けている国内のまず問題をどう解決するかということも同時にあります。

 私は、一番身近な例で申し上げますけれども、一九九九年に大阪で起きたことですけれども、大阪の市内の生野警察の警部補が逮捕されたんですね。これは私もかかわっていたことでありますけれども、その被害に遭った女性がおります。彼女は、私は初めての面接、面会でした。彼女は身元調査をされて、大阪市内の病院の看護婦さんでした。そして、相手はお医者さんでした、結婚する相手。彼女は身元調査されていたんですね。ずっとその身元調査をやったのはだれかといったら、その警部補だったんです、生野警察の。これは逮捕されて有罪になりました。彼女は自分の戸籍が取られて、身元調べられた、なぜかというのをずっとひもといていったら、その刑事に依頼したのが興信所の人間なんですね、友人で。その興信所はだれから依頼されたのかということをずっとさかのぼっていけば、実はそのフィアンセのお医者さんだったんです。

 我々は直接事情を聞きました。なぜ彼はその秋に結婚する予定の彼女の身元を調べたんだといえば、春にそのための釣書交換をしたと。その中に、彼女のお兄さんの連れ合いさんが結婚する前にどこに住んでいたかというところに被差別部落の地名があった。そうすると、彼の親たちは、彼女の身内に被差別部落の出身者がおるかもしれないということで調べたんです。彼女は、自分の身元を調べた人間が結婚する相手家族だったということにショックを受けて、そしてその病院を辞めていった。その人権侵害に手をかし、それを実行していったのは警察、生野警察署の書類、捜査のためと書かれた書類なんです。

 逮捕されたこの警部補は、人権侵害に加担していたにもかかわらず、何かといえば、有印公文書偽造同行使で逮捕された。人権侵害については裁かれないんです。

 こういった事情が、部落問題は今でもあります。あるいはアイヌの人たちやハンセン病回復者の人たちや様々あります。この救済法はそれらにこたえるべき私は法律だというふうに思っているんですね。だからこそ、人権をそういうふうにしてはならないし、ましてや人権に国境はないというふうに思うんです。

 最後にもう一度、もう時間もありませんけれども、最後になりますけれども、大臣に、私はそういう思いで、一日も早く救済法の制定を成し遂げたいというふうに思っています。だからこそ、国籍を付けるべきではないし、しっかりとした、それらに対応できるような立派な法律を作るべきである。その結果がしっかりとパリ原則にも合致していく、そういうものに私はなっていくと思うんですね。

 大臣の感想と今後の決意をちょっと一遍、最後に聞かせていただいて。


○国務大臣(南野知惠子君) 人権問題ということは、本当に我々、しっかりと検討していかなければならない問題だと思っております。人権擁護法案が今与党の中で論議されております。その行く末も見守っていかなければならないとは思いますが、私の気持ち、法務省の考えというのは先ほど御説明したとおりでございますので、我々としては、いい形でその法案が通っていくように、テーブルに乗っけていただけるように、そういったことを念願しているところでございます。そして、法律ができれば、もちろんどのような人であろうと、日本にいる場合のこの法が満遍なく適用されることということを願っております。

参議院議員 松岡とおる 国会議事録