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 大阪、高知、群馬などで悪質な差別発言事件が生起している。大阪と群馬の事件では確認会、糾弾会の中で「酒で酔っていたから」と当初は発言の重要性を認識していないという状況であった。とくに群馬の事件では差別発言した当事者が数年前に腎臓移植を受けており、かつ、うつ病の前歴もあることから当事者の兄の代理出席という方法で事実確認会が行われている。

 その事実確認会では「申し訳ない」「反省している」と言いながら、弟に対する具体的な指導について「酔った上のことであり、深い意味はなかった」という発言に加え、解放同盟の糾弾会に対する異論を口にするなど、代理出席のため差別事件の受け止め方や今後の決意などについて話がかみ合わなくなり、会は途中で打ち切りとなってしまった。

 さらに、第2回糾弾会については、本人は「うつ病」を理由に、兄は糾弾会のもち方に対する不満を理由にそれぞれ出席を拒否しており、日程が決まっていない。これらの事件からもやはり、より効果的な啓発の追究と人権侵害に対する被害者救済についての早急な検討が求められている。

 また、埼玉県児玉町の町議会議員や福岡県小郡市の某校区の区長会区長、三重県阿山町議会議員などがあいついで部落や部落の人々を排除する発言を行っており、このような部落を忌避し排斥しようとする深刻な実態がかいま見られる。もちろんこれらは氷山の一角である。

 ところで、部落に対する忌避的態度について、大阪府が実施した「同和問題解決のための実態等調査(2000年部落問題調査)」のうち府民意識調査の項で興味ある数値が出ていると近畿大学の奥田均教授は指摘している。

 表@は、「2000年部落問題調査」のデータをもとにした、同和地区を含む中学校区の一般地区に住む府民と、同和地区を含まない中学校区の一般地区に住む府民の「部落に対する忌避的態度」についての奥田教授の分析である。

 これを見ると、明らかに同和地区を含む中学校区の一般地区に住む府民の方が部落に対する忌避的態度の度合いが弱いことがわかる。実は、これまではこの結果とは逆に「部落周辺の一般地区住民の方が差別はきつい」といわれてきたのに、この数値は何を意味しているのだろうか。

 その解答のヒントとして奥田教授は、オルポートの『偏見の心理学』の中で述べられている「接触の論理」を指摘している。つまり、忌避的態度が薄れていくには「積極的な共通の目標・目的」が必要で、その協働の営みの過程が効果をもたらす、というのである。このことは教育や啓発のマンネリ化の克服や新しい方向を見出すヒントにもなるのではないかと思われる。

表 v>
  回答数 忌避的態度
同一校区府民 380 17.9% 28.4% 53.7%
校区外府民 3,569 24.6% 30.5% 44.9%