部落問題の解決に努力していないのに努力しているかのように装い,〈同和の人は、こわい〉という世間の差別意識を逆手に取って、利権をあさろうとしているニセの同和団体。*同和対策事業の入札への介入,企業などに対する同和問題研修会開催の強要,講師のあっせん,同和関係資料の押し売り,交通事故の示談の引き受けなど,あらゆる分野で暗躍している。その存在は〈部落問題の解決を遅らせる妨害団体〉として問題となっている。部落出身者が集まってつくっているものと,そうでない〈元総会屋〉〈暴力団員〉がつくっているものの二つに分けられるが,団体名に〈全国〉とか〈日本〉と名乗りながら,実態は数人のグループというものが多い。
部落問題の解決をめざすものでないため解放理論ももたず,部落の大衆にも根を下ろさず,主に利権の獲得を目的としているのが特徴。*同和対策事業特別措置法の期限切れ(1982年3月末)前後から全国的に増えはじめ,とくに1982年(昭和57)10月から施行の改正商法で企業の〈総会屋〉が締め出されたため,総会屋が〈同和〉の名を使って新しい利権への道を開こうと、エセ同和団体を結成する動きが目立ち,その数は急激に増えた。警察庁や*法務省が対策会議を開いたり、ニセ同和団体に対応する企業向けパンフレットを作成したが、ほとんど効果をあげていない。法務省人権擁護局が87年4月に発表したエセ同和団体数は〈640団体を上回る〉とあるが、実際にはもっと多いと見られている。しかも、この種の行為には、双方合意のものもあり、どこまでが〈エセ行為〉であるかという決め手がなく、その正確な実態はつかめていない。