●総則的規定
1. 法の目的(第1条)・・・適正・迅速な人権救済+人権侵害の実効的な予防+人権啓発(法務省所管;文部科学省の「人権教育」には言及せず)によって、人権擁護施策を総合的に推進し、人権が尊重される社会の実現に寄与する。
2. 「社会的身分」の定義(第2条1項)
3. 基本原則(第3条)「不当な差別、虐待その他の人権侵害をする行為」の禁止
⇒下記、第46条(差別的取扱いの禁止)も差別禁止規定
4. 国の責務(第4条)・・・人権擁護施策の総合的推進責務を明記。ただし、自治体と国民(市民)の責務を明記せず。
●人権委員会の組織
1. 設置形態・・・国家行政組織法第3条にもとづき、法務省の外局化
2. 構成(第8条)・・・委員長+常勤委員+非常勤委員(『読売新聞』2001.12.6によれば、5〜7名。)
3. 委員資格(第9条)・・・人権に関する高い見識を有する者、または学識経験者、男女同数(努力義務)
4. 任期(第10条)・・・○年、再任可(人権フォーラム21の意見は、再任は1期のみ可。70歳定年制が望ましいとの意見もあり。)
5. 任命(第9条)・・・両議院の同意を経て、内閣総理大臣が任命。
6. 罷免事由(第11条)・・・(1)禁固以上の刑、(2)心身の故障または義務違反・非行
7. 人権調整委員(第15条)
*人権委員会による調停・仲裁に参与させるため、人権調整委員を置く。
*人権調整委員は、(1)人権に関する高い見識を有する者、または学識経験者から任命、(2)任期3年、再任可、(3)非常勤。
8. 事務局(第16条)・・・法曹資格者を加えなければならない。
9. 地方事務局(第17条)・・・詳細は政令・法務省に委任(資格要件なし)。
10. 国会への報告(23条)・・・人権委員会の国会への報告と、概要の公表義務。
11. 内閣総理大臣・国会への意見提出(第24条)
●救済手続
1. 人権相談(第43条)
2. 救済の申出(第44条)・・・人権侵害の被害救済・予防を求めること(「申立」でない)。
3. 一般救済手続(第45条)
*人権侵害被害者、被害を受けるおそれのある者(被害者等)に対し、(1)必要な助言、(2)関係行政機関又は関係のある公私の団体の紹介、(3)法律扶助に関するあっせん、(4)その他の援助をする。
*人権侵害行為者、これを行なうおそれのある者、又はこれを助長・誘発する国内行為をするもの・その関係者(加害者等)に対し、(5)当該人権侵害に係る説示、(6)人権尊重の理念に関する啓発、(7)その他の指導をする。
*(8)被害者等と加害者等との関係調整。
*(9)関係行政機関への人権侵害事実の通告。
*(10)犯罪に該当すると思料される人権侵害事実の告発。
**上記措置は、人権委員会の委員、事務局職員又は人権擁護委員は上記措置を行える。
4. 特別救済手続
・差別的取扱いの禁止(第46条)
(1) 「人種、民族、信条、性別、社会的身分、門地、障害、疾病又は性的指向(以下「人種等」という。)」を理由とする
(2) 「不当な差別的取扱い」の禁止
*1項 国・地方公共団体職員等の公務従事者は、その職務遂行について
*2項 対価を得て物品、不動産、権利又は役務を提供することを業とする者等はその提供について
*3項 事業主は、労働者の採用又は労働条件について
*4項 学校等設置者は、その職務遂行について
・下記の差別助長行為等の禁止(第47条)
*1号(1)‡@人種等に係る共通の属性を有する不特定又は多数の者に対して、(2)当該属性を理由として、(3)46条にいう「差別的取扱い」を助長・誘発する目的で、(4)当該属性に関する情報を文書の頒布、掲示その他これに類する方法で公然と摘示する行為
*2号 (1)人種等に係る共通の属性を有する不特定又は多数の者に対して、(2)当該属性を理由として、(3)46条にいう「差別的取扱い」をする意思を、(4)広告、掲示その他これに類する方法で公然と表示する行為
5. 特別救済手続の対象となる差別・虐待・差別助長行為
6. 人権委員会のその他の機能
? そして、法案の主な問題点としては、(1)人権委員会の所管は、入管や検事警察による人権侵害の実態があることや、省庁にまたがることを考えると、法務省ではなく内閣府にすべきこと、(2)具体的・迅速に対応できるために、地方人権委員会を設置すべきこと、(3)人権審答申の人権侵害4類型に入っていたように「公権力による人権侵害」を独立した条文として整備すること、(4)自治体と国民(市民)の責務を明記すること、(5)労働分野における人権救済制度だけは厚生労働大臣が特別救済を行うということになっているが行政の長が強い権限を行使すべきではないこと、(6)独立した差別禁止法案も制定すべきこと、等が述べられた。
? 最後に、法案提出は3月頃と予想されるので、早急に世論を盛り上げ、実効性のある法律にしていくことが述べられた。
? 質疑では、(1)法務省の外局では独立性が難しいこと、(2)公権力の人権侵害の規定を充実すべきこと、(3)人権委員会の事務局が、法務省人権擁護局、地方法務局人権部の全ての横すべりでは全くダメなこと、(4)労働分野の人権救済制度は単なる厚生労働省や国土交通省の権益をうたっただけのものであり全て中身がないこと、(5)メディアの分野は意図的に何も明らかにしておらないこと、(6)人権擁護委員制度は、今の人権擁護委員法を一部改正してそっくり盛込むのではないか、(7)差別禁止法は、現在、個別に障害者禁止法や人種差別禁止法などが求められていることもありそれを先行させて行けばいいのではないか、等といった点について意見交換がされた。 (中村清二)