「大阪の部落史委員会収集史料」とは、大阪の部落史委員会(委員長 上田正昭京都大学名誉教授)が1995年4月から14年間にわたり、『大阪の部落史』全10巻(史料編9冊、本文編1冊)を編纂する目的で収集してきた膨大な史料群のことです。
「大阪の部落史委員会収集史料」の特徴は、地域的な偏りは少しばかりあるものの、なんといっても大阪府域の部落問題にかかわる多種多様な史料を網羅的に通覧することができる点にあります。とりわけ前近代史料は、これまであまり知られていないじ地かた方の家わけ文書を中心に収集しています。また近代以降の史料についても、府域の各地方自治体などが保管している行政文書を筆頭に、数多くの史料を収集しています。
さらに明治・大正期に発行された新聞のなかから部落問題に関係する記事を抽出しデータベース化もおこなっております。こちらは、すでに「戦前・部落問題新聞記事データベース」として社団法人部落解放・人権研究所のホームページから利用することができます(ただし、利用は研究所の会員に限定)。これほどまでに大阪府域全体を視野に入れ、部落問題関係史料に特化したコレクションは、ほかに類例をみません。そういった意味においても「大阪の部落史委員会収集史料」は非常に貴重な史料群であるということができるでしょう。
1999年から2008年まで刊行された『大阪の部落史』の史料編には、紙幅の都合もあって、編纂段階において重要であり、かつ貴重であると考えられた史料を優先して掲載しました。そのため掲載することができたのは、収集した史料のごくわずかにしかすぎませんでした。多くの史料は日の目をみないまま、これまで十分に利用されてきたとは言い難い状況にありました。こうした状況を念頭に置いた時、今後の部落史研究のさらなる進展のためにも、『大阪の部落史』に掲載しきれなかった史料をどのように活用していくかということが課題として残されました。
このような課題を克服するため、2009年3月、『大阪の部落史』編纂事業の終了にあたって、社団法人部落解放・人権研究所への収集史料の移管作業と並行して、史料の保存と公開を前提に、約1年間をかけて収集史料と目録の整理に努めてまいりました。その結果、短時日の作業で、はなはだ不充分ではありますが、整理を終えました。
同時に並行して、史料提供者の皆様からの格別なるご配慮によって、社団法人部落解放・人権研究所への収集史料の移管作業も無事に完了し、研究目的での史料利用の許可をいただくことができました。これもひとえに史料提供者の皆様のご理解とご協力のお蔭とありがたく、この場をお借りしてお礼を申し上げます。
「大阪の部落史委員会収集史料」と史料目録は、社団法人部落解放・人権研究所において所定の手続きを踏んでいただければ、利用できますので、関心がある方は是非一度足を運んでいただきたいと思います。
なお、史料の性格上、史料の利用については人権に配慮して慎重な取扱いが求められております。また一部、利用できない史料もございますので、その点ご留意・ご理解くださいますようよろしくお願い申し上げます。
「大阪の部落史委員会収集史料」を構成する主な史料群としては以下のものがあります(下記の文書名をクリックすると『大阪の部落史』の史料編に掲載された史料解題がご覧になれます。五十音順)。ここで取り上げた1から16までの史料群は、近世史料が中心ではありますが、近代以降の史料も多く含んでいます。